22 / 51
可哀想
しおりを挟む
「アイザワさん、オレがいれたコーヒーじゃ気に入らねえのかな」
初瀬との話が済んだ会沢は意外にもあっさりと帰り、清々した気持ちでリビングのソファに座ったところで、皆木が呟いた。聞こえてしまった初瀬はペットボトルの水を飲みながら皆木を見た。
「なんの話だよ」
「ハセさんの助け求めた時も『トーマくんはコーヒーでもいれといて。ドリップで』って言われてメーカー指定されたから買いに行ってまでいれたんすけど、やっぱいいやって飲まなくて。で、今も飲まずに帰っちゃったから」
皆木はわざわざソーサーに乗せたコーヒーカップを持ったまま立っている。確かに会沢が寝室から出た時、皆木はコーヒーを勧めたが会沢は忙しいと断って帰って行った。その時の皆木は絵に描いたようにしゅんとして、会沢を送る際にもカップを持って出ていた。
「お前、からかわれてんだよ」
「え?どういうことっすか」
「会沢さんは健気で可哀想なやつ見るのが好きなんだ。お前がコーヒー飲んでもらえねえだけで飼い主が死んだ犬みたいな顔するせいだろ」
「ええ~してないっすよ、なんすかそれ。じゃあもったいないからハセさん飲んでください。オレ、コーヒー飲めねえし」
「いらねえよ。砂糖死ぬほど入ってんだろそれ」
初瀬が提案を無下にすると、皆木はまた飼い主が死んだ犬のような顔をした。コーヒーが無駄になることと、自分のやったことが飼い主の役に立たなかったという事実がそういう顔をさせるのだろうか。
初瀬は会沢のように可哀想な犬を見て「可哀想だねえ」と言うだけ言って愉しむ趣味はなく、普通に心が痛むタイプなので舌打ちをして手招いた。
「ちょっとは飲んでやる。貸せ」
「マジすか、よかった!ドリップ?ってやつでいれてます。うまいらしいんで」
皆木にカップを渡されて、初瀬は仕方なく口をつけた。コーヒーの香りはいいものの、口に入った瞬間大量の糖分が流れ込んでくる。
(あっま……茶色いガムシロか?これ)
甘いものが嫌いな初瀬は一口で十分だったが、隣に座った皆木がにこやかに見てくるのでもう一口飲んでから、皆木が見ていないところで残りを捨てようとテーブルに置いた。
「起きたら腹減ったな。出前でも取るか」
「待った。ハセさん普通にしてっからスルーしちゃってたけど、まだベッドで寝てた方がいいっすよ」
「別に平気だよ。座ってるだけだろ」
「いやダメだって!死にかけたんすよ?そうだ、1回ガーゼと包帯変えましょう。オレ医者に色々教わったんで任せてください。ほら、部屋戻って!」
皆木は本気のようで怪我をしていない方の腕を引っ張られ、初瀬は渋々立ち上がる。そのまま再び寝室に戻ると、ベッドに腰かけさせられた。
「よし。じゃシャツ脱がせますね」
闇医者が置いていったという医療道具を床に並べて、皆木は初瀬のシャツのボタンに指をかけた。慣れた手つきでボタンが外され、初瀬は皆木の動きに合わせて腕を抜いた。続いて包帯を取るのかと思ったら、皆木は立ったままじっと初瀬の身体を見つめている。刺青でも凝視してるのかと怪訝な目を向けると、皆木の視線が身体から初瀬の顔に移った。
「あ、すんません。改めていい身体だなと思って。記憶してオカズに──イタッ!痛い!」
「バカ言ってねえで早くしろ。テメエ俺で抜いたらウチ追い出すぞ」
「え!?いや、抜いてないっすよ!?一度もない!ホントに!会った時からいい男だと思ってるけどさすがにね!?だから追い出さないで……!」
初瀬との話が済んだ会沢は意外にもあっさりと帰り、清々した気持ちでリビングのソファに座ったところで、皆木が呟いた。聞こえてしまった初瀬はペットボトルの水を飲みながら皆木を見た。
「なんの話だよ」
「ハセさんの助け求めた時も『トーマくんはコーヒーでもいれといて。ドリップで』って言われてメーカー指定されたから買いに行ってまでいれたんすけど、やっぱいいやって飲まなくて。で、今も飲まずに帰っちゃったから」
皆木はわざわざソーサーに乗せたコーヒーカップを持ったまま立っている。確かに会沢が寝室から出た時、皆木はコーヒーを勧めたが会沢は忙しいと断って帰って行った。その時の皆木は絵に描いたようにしゅんとして、会沢を送る際にもカップを持って出ていた。
「お前、からかわれてんだよ」
「え?どういうことっすか」
「会沢さんは健気で可哀想なやつ見るのが好きなんだ。お前がコーヒー飲んでもらえねえだけで飼い主が死んだ犬みたいな顔するせいだろ」
「ええ~してないっすよ、なんすかそれ。じゃあもったいないからハセさん飲んでください。オレ、コーヒー飲めねえし」
「いらねえよ。砂糖死ぬほど入ってんだろそれ」
初瀬が提案を無下にすると、皆木はまた飼い主が死んだ犬のような顔をした。コーヒーが無駄になることと、自分のやったことが飼い主の役に立たなかったという事実がそういう顔をさせるのだろうか。
初瀬は会沢のように可哀想な犬を見て「可哀想だねえ」と言うだけ言って愉しむ趣味はなく、普通に心が痛むタイプなので舌打ちをして手招いた。
「ちょっとは飲んでやる。貸せ」
「マジすか、よかった!ドリップ?ってやつでいれてます。うまいらしいんで」
皆木にカップを渡されて、初瀬は仕方なく口をつけた。コーヒーの香りはいいものの、口に入った瞬間大量の糖分が流れ込んでくる。
(あっま……茶色いガムシロか?これ)
甘いものが嫌いな初瀬は一口で十分だったが、隣に座った皆木がにこやかに見てくるのでもう一口飲んでから、皆木が見ていないところで残りを捨てようとテーブルに置いた。
「起きたら腹減ったな。出前でも取るか」
「待った。ハセさん普通にしてっからスルーしちゃってたけど、まだベッドで寝てた方がいいっすよ」
「別に平気だよ。座ってるだけだろ」
「いやダメだって!死にかけたんすよ?そうだ、1回ガーゼと包帯変えましょう。オレ医者に色々教わったんで任せてください。ほら、部屋戻って!」
皆木は本気のようで怪我をしていない方の腕を引っ張られ、初瀬は渋々立ち上がる。そのまま再び寝室に戻ると、ベッドに腰かけさせられた。
「よし。じゃシャツ脱がせますね」
闇医者が置いていったという医療道具を床に並べて、皆木は初瀬のシャツのボタンに指をかけた。慣れた手つきでボタンが外され、初瀬は皆木の動きに合わせて腕を抜いた。続いて包帯を取るのかと思ったら、皆木は立ったままじっと初瀬の身体を見つめている。刺青でも凝視してるのかと怪訝な目を向けると、皆木の視線が身体から初瀬の顔に移った。
「あ、すんません。改めていい身体だなと思って。記憶してオカズに──イタッ!痛い!」
「バカ言ってねえで早くしろ。テメエ俺で抜いたらウチ追い出すぞ」
「え!?いや、抜いてないっすよ!?一度もない!ホントに!会った時からいい男だと思ってるけどさすがにね!?だから追い出さないで……!」
76
あなたにおすすめの小説
いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。
うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】
まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。
交わることのない二人
透明
BL
憧れの大阪の大学に通うため、東京から単身やって来た白井菖蒲は、推している芸人が下積み時代によく訪れていた喫茶・トミーで働く事に。
念願だったトミーで働け、とても充実感で満たされていた。働き始めてから三日目までは。
朝の10時、振り子時計と共に、革靴を鳴らし店内に入って来たのはガタイの良く、真っ黒な髪を真ん中でかき上げ、目つきが悪い黒いスーツに身を包んだヤクザだった。
普通の大学生と、ヤクザのお客さん。決して交わるはずの無い二人。
な筈なのだが何故か、二人の仲はスイーツを通して深まっていくのだった。
※一応BLですが、ブロマンス寄りです
※カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しております。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる