34 / 51
ラブコール
しおりを挟む
電話口から初瀬の声が聞こえて、皆木は身体から力が抜けるのを感じた。自分で思っていた以上にこの空間が恐ろしかったらしい。
会沢が近づいてくるかと思ったが、ケータイを奪うこともなくベッドで胡坐をかいて伸びをしている。腹は減っていないが暇を持て余しているライオンの前にいるような感覚になりながら、一度唾を飲み込んだ。
「今は、その。アイザワさんのとこにいます」
『なんでだよ』
「ええっと~……ハセさんいないし、ヒマだったんで。そしたら3Pしようって誘われてたとこです」
まさか初瀬の怪我の原因、ひいては沈鬱な過去を教えてもらってましたとは言えない。それをカットして現状だけ告げたら、会沢が「それは正直に言うんだ」と笑って初瀬は黙った。その沈黙に、今の報告では『初瀬に告白したくせに性欲を我慢できなくて危ない男とセックスしようとしてるバカ』になってるのではと焦り、皆木は大きい声を出した。
「あっ、違いますよ!?まだなんにもしてない!オレはやりに来てるわけじゃなくて!」
『……急にデケエ声出すな。なんでもいいが、晩飯は作ったのか』
「まだです。アイザワさんちから帰ったら作ろうと──」
『もう戻るから俺が家着くまでに用意しておけ。命令だ、いいな』
「え、ホントに!?用事終わったんですか!そしたらすぐ作ります!一緒に食いましょ!」
『ああ。それから会沢さんに電話代われ。ケータイ渡したらお前はそのまま部屋出てうちに帰れ。ケータイはあとで新しいの買ってやる。そこに長居するな』
会沢と薬中の不幸な男の3人で不本意な3Pをするより、初瀬のために夕飯を作って初瀬の帰りを待つ方が何百倍も有意義だ。比べるまでもない。ケータイなど会沢にいくらでもくれてやっていい。
皆木は思わぬ幸運に、嬉々としてケータイを会沢に手渡した。
「アイザワさん、すんません。オレ、ハセさんに飯作らないとで。あとはお偉い2人でどうぞ」
「ええ~帰っちゃうの。あ、もしもし?ハセくんが僕と話したいなんて珍しいねえ。暇だから何時間でもお喋りできるよ」
会沢はケータイを耳に当てると、肩をすくめてニヤける。本命からのコールに、もうすっかり皆木への興味は失われたようだ。
「ペット置いてお出かけなんて可哀想じゃない?ああ、僕はヘマした売り子くんと仕事してたんだよ。あ、そうそう。新薬の。そこにトーマくんが来たわけ。まったく過保護だね、初瀬くんは。3Pくらいイイじゃん。別にトーマくんを取って食おうってわけじゃなし。え?なに。もしかして怒って──」
皆木は初瀬との会話を楽しむ会沢を見つつ、刺激しないようにドアに向かう。会沢と初瀬の会話が気になったが、いつまた襲われるかわからないライオンの檻にこれ以上いられない。
(……でも、また2人で会わないと。アイザワさん本気なのかわかんねーけど)
会沢に聞かされた話については、また会沢と2人きりで話し合わなければならない。それまでにきちんと危機管理をできるようにならなければと思いながら、皆木は小さく会釈をして初瀬の帰りを待つために部屋を後にした。
会沢が近づいてくるかと思ったが、ケータイを奪うこともなくベッドで胡坐をかいて伸びをしている。腹は減っていないが暇を持て余しているライオンの前にいるような感覚になりながら、一度唾を飲み込んだ。
「今は、その。アイザワさんのとこにいます」
『なんでだよ』
「ええっと~……ハセさんいないし、ヒマだったんで。そしたら3Pしようって誘われてたとこです」
まさか初瀬の怪我の原因、ひいては沈鬱な過去を教えてもらってましたとは言えない。それをカットして現状だけ告げたら、会沢が「それは正直に言うんだ」と笑って初瀬は黙った。その沈黙に、今の報告では『初瀬に告白したくせに性欲を我慢できなくて危ない男とセックスしようとしてるバカ』になってるのではと焦り、皆木は大きい声を出した。
「あっ、違いますよ!?まだなんにもしてない!オレはやりに来てるわけじゃなくて!」
『……急にデケエ声出すな。なんでもいいが、晩飯は作ったのか』
「まだです。アイザワさんちから帰ったら作ろうと──」
『もう戻るから俺が家着くまでに用意しておけ。命令だ、いいな』
「え、ホントに!?用事終わったんですか!そしたらすぐ作ります!一緒に食いましょ!」
『ああ。それから会沢さんに電話代われ。ケータイ渡したらお前はそのまま部屋出てうちに帰れ。ケータイはあとで新しいの買ってやる。そこに長居するな』
会沢と薬中の不幸な男の3人で不本意な3Pをするより、初瀬のために夕飯を作って初瀬の帰りを待つ方が何百倍も有意義だ。比べるまでもない。ケータイなど会沢にいくらでもくれてやっていい。
皆木は思わぬ幸運に、嬉々としてケータイを会沢に手渡した。
「アイザワさん、すんません。オレ、ハセさんに飯作らないとで。あとはお偉い2人でどうぞ」
「ええ~帰っちゃうの。あ、もしもし?ハセくんが僕と話したいなんて珍しいねえ。暇だから何時間でもお喋りできるよ」
会沢はケータイを耳に当てると、肩をすくめてニヤける。本命からのコールに、もうすっかり皆木への興味は失われたようだ。
「ペット置いてお出かけなんて可哀想じゃない?ああ、僕はヘマした売り子くんと仕事してたんだよ。あ、そうそう。新薬の。そこにトーマくんが来たわけ。まったく過保護だね、初瀬くんは。3Pくらいイイじゃん。別にトーマくんを取って食おうってわけじゃなし。え?なに。もしかして怒って──」
皆木は初瀬との会話を楽しむ会沢を見つつ、刺激しないようにドアに向かう。会沢と初瀬の会話が気になったが、いつまた襲われるかわからないライオンの檻にこれ以上いられない。
(……でも、また2人で会わないと。アイザワさん本気なのかわかんねーけど)
会沢に聞かされた話については、また会沢と2人きりで話し合わなければならない。それまでにきちんと危機管理をできるようにならなければと思いながら、皆木は小さく会釈をして初瀬の帰りを待つために部屋を後にした。
51
あなたにおすすめの小説
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
観念しようね、レモンくん
天埜鳩愛
BL
短編・22話で完結です バスケ部に所属するDKトリオ、溺愛双子兄弟×年下の従弟のキュンドキBLです
🍋あらすじ🍋
バスケ部員の麗紋(れもん)は高校一年生。
美形双子の碧(あお)と翠(みどり)に従兄として過剰なお世話をやかれ続けてきた。
共に通う高校の球技大会で従兄たちのクラスと激突!
自立と引き換えに従兄たちから提示されたちょっと困っちゃう
「とあること」を賭けて彼らと勝負を行いことに。
麗紋「絶対無理、絶対あの約束だけはむりむりむり!!!!」
賭けに負けたら大変なことに!!!
奮闘する麗紋に余裕の笑みを浮かべた双子は揺さぶりをかけてくる。
「れーちゃん、観念しようね?」
『双子の愛 溺愛双子攻アンソロジー』寄稿作品(2022年2月~2023年3月)です。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜
小門内田
BL
ドケチで貧乏な大学生の瀧本 純也は、冷徹御曹司の諏訪 冬悟に交際0日、いや、初対面で結婚を迫られる!?
契約から始まった奇妙な結婚生活は、次第に互いの心を少しずつ変えていく。
“契約から本物へ―”
愛を知らない御曹司×愛されたがりの大学生の、立場も性格も正反対な二人が、不器用に心を通わせていく、ドタバタあり、じんわり甘い、ゆるやかな日常BL。
※最初は少し殺伐としていますが、ゆっくりと変化していく物語です。
※男同士の結婚が、一般的な世界線となります。
※関係性をわかりやすくするため、「嫁」や「妻」といった表現を使用しております。
※同タイトルのpixiv版とは、加筆・修正しておりますので、若干内容が変わっております。
予めご了承ください。
※更新日時等はXにてお知らせいたします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる