インテリヤクザは子守りができない

タタミ

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救出

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 初瀬が車を飛ばして奈古組に到着した時には、皆木の位置は事務所付近から事務所内へと移動していた。もうGPSの誤作動とは思えない。二階に電気がついているのを見て、考える暇もなくビルの縦樋たてどいを支えに窓に近づいていく。
 すべては初瀬の勘違いで、幸いにも皆木が中にいないならそれでいい。そうであってくれと祈りながら窓に到達した初瀬の目は、事務所の入り口で今まさに銃を取り出した皆木を捉えた。

 ──ガシャン!!

 衝動的に窓を割り、計画性などまるでない襲撃を実行した初瀬は脚を止めることなく皆木のそばにいる山崎に襲いかかった。身をかがめていた山崎の背中をナイフで刺し、躊躇なく両脚も切りつけると満井の方へ蹴り飛ばす。

「なんなんだテメエら!!」

 山崎を避けた満井が激高しながら銃を初瀬に向けた。初瀬を見るばかりだった皆木は弾かれたように満井を撃とうと銃を掲げたが、初瀬は銃口を掴んで下げさせそのまま強く引いた。

「来い!!」

 背後で喚く満井の声と銃声が響く中、初瀬は皆木の腕を引いたまま階段をほとんど飛び降りるようにしてビルを出た。エンジンをかけたままの車の後部座席に皆木を押し込み、階段を駆け下りてくる満井を横目に運転席へなだれ込んだ。アクセルを踏み満井が見えなくなるのと同時に初瀬は感情の暴れを押さえきれなくなる。

「お前いったい何してんだ!?死にてえのか!俺が行かなきゃ今頃殺されてんだぞ!」

 初瀬の激高に皆木は身体を硬直させたが、すぐに前のめりになり運転席へ近づいた。

「勝手なことしてすみませんでした……!ただ、オレはハセさんのためにと思って……!」
「は……!?何言ってやがる、これ以上ふざけたこと──」
「ハセさんはあいつらに家族全員殺されたって聞きました、だから、オレ……っ」

 信号も速度制限も無視してアクセルを踏み切っていた初瀬は、皆木の震えた声にブレーキを踏んだ。冷水を浴びせられたように急激に頭が冷えて、強い耳鳴りがした。

「……オレにハセさんの復讐を止める権利はないです。でもハセさんがクソ野郎のせいで死んじゃったらどうしようって、オレずっと不安で。怪我して帰って来た時、ホントに怖かったんです。……ハセさんが死んだら、またオレはひとりになる。ハセさんが死ぬくらいなら、オレが、オレが全部代わりにやろうって」

 皆木は黙り込んだ初瀬の様子を窺いながら、言いにくそうに続けた。

「サツに捕まってもオレなら少年法ですぐ出てこれるって聞いたから……さっきも撃ったら逃げる気でした。ヤバくなれば警察呼ぼうと思ってて。勝手なことしたのは、本当にすみませんでした。……ハセさんのこと助けられるなら何でもしたくて……」

 初瀬は相槌も打てなかった。知られたくない身の上と復讐に手を染めていることがいつから完全に露呈していたのか、遡ってもわからなかった。皆木にこんな決断をさせてしまう前に、自分の口からしっかり説明しておくべきだったと自己嫌悪が津波のように押し寄せる。

「これから先、復讐続けるならオレのこと使ってほしいです」

 皆木は本気で言っていた。純粋な好意と善意で人殺しに堕ちようとしている。それだけは初瀬が全てをかけても阻止しなくてはならなかった。
 初瀬は自己嫌悪を振りほどき、ようやく口を開いた。

「……お前、誰に入れ知恵されたんだ」

 初瀬の頭にはほとんど答えが浮かんでいたが、それでも皆木の口から説明させた。
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