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海
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食事を終えて一息つく暇もなく皆木に急かされた初瀬は、ヴィラの眼下に広がる海岸へと出てきていた。海水浴のシーズンではないためあまり人はいない。皆木が「海だ~!ホントに青い!」と大騒ぎをしても、迷惑を被る他人はいなかった。
「泳いじゃダメなんだっけ?」
「今海開きの時期じゃねえからな。足入れるくらいにしとけ」
初瀬の許可を得た皆木は、すぐに裸足になって海に走っていった。水を蹴ったり掬ったりして楽しむ様は大型犬のようだ。
一方の初瀬は海ではしゃぐ気分ではない。キッチンカーで買った炭酸水を片手にパラソルの下に座っていた。砂はじわりと暑い。
浅瀬で遊ぶ皆木と海を視界に入れながら、タバコに火をつけて深く吸う。落ち着くまで十分に吸ってからズボンの後ろにしまっていた封筒を取り出した。中には三つ折りの紙が2枚とメッセージカードが入っていた。内容次第で、初瀬はまた殺しを始めざるを得ないかもしれない。しかしそうなったとして、今の自分がどうするのかわからなかった。わからないまま、勢いに任せてカードを見る。
『いつでも戻ってきてね』
それだけの文章と知らない電話番号の記載があった。名前などないが、これは会沢に他ならない。転々と居場所を変え、沖縄に着いたのは今日だというのに、泊まる部屋まで暴けるのは会沢以外にあり得ない。初瀬は舌打ちをすると、咥えていたタバコをカードに押し付けて燃やした。
(もっと日陰で生活しねえとダメだな)
半年接触がなかったことで初瀬に気の緩みがあったのは事実だった。汚い宿泊施設とネットカフェを行ったり来たりしてろくな飯も食えない生活に、いい加減皆木を付き合わせる罪悪感が大きくなっていた。たまには息抜きをさせてやりたかったのだが、結果として会沢に入る隙を与えてしまっている。
カードの文からすれば会沢はいまだに好意的なようだが、会沢が生かしたいのは初瀬だけだ。皆木とまとめて匿ってくれるわけではない。それに初瀬は、もう反社として生きるには邪魔な感情を抱えすぎてしまっていた。
「ハセさん!ここカニいる!食えるかな?」
初瀬の心情と正反対の明るい声がして、皆木が小さいカニを掲げているのが見えた。自然と緊張が和らぎ、「食うなよ」と笑って返す。
(……皆木だけは、まともに生かしてやりたい)
こんな他愛のないやり取りは、もう最後かもしれなかった。しばし太陽の反射を受けてきらめく皆木を眺めてから、初瀬は三つ折りの紙を開いた。
「泳いじゃダメなんだっけ?」
「今海開きの時期じゃねえからな。足入れるくらいにしとけ」
初瀬の許可を得た皆木は、すぐに裸足になって海に走っていった。水を蹴ったり掬ったりして楽しむ様は大型犬のようだ。
一方の初瀬は海ではしゃぐ気分ではない。キッチンカーで買った炭酸水を片手にパラソルの下に座っていた。砂はじわりと暑い。
浅瀬で遊ぶ皆木と海を視界に入れながら、タバコに火をつけて深く吸う。落ち着くまで十分に吸ってからズボンの後ろにしまっていた封筒を取り出した。中には三つ折りの紙が2枚とメッセージカードが入っていた。内容次第で、初瀬はまた殺しを始めざるを得ないかもしれない。しかしそうなったとして、今の自分がどうするのかわからなかった。わからないまま、勢いに任せてカードを見る。
『いつでも戻ってきてね』
それだけの文章と知らない電話番号の記載があった。名前などないが、これは会沢に他ならない。転々と居場所を変え、沖縄に着いたのは今日だというのに、泊まる部屋まで暴けるのは会沢以外にあり得ない。初瀬は舌打ちをすると、咥えていたタバコをカードに押し付けて燃やした。
(もっと日陰で生活しねえとダメだな)
半年接触がなかったことで初瀬に気の緩みがあったのは事実だった。汚い宿泊施設とネットカフェを行ったり来たりしてろくな飯も食えない生活に、いい加減皆木を付き合わせる罪悪感が大きくなっていた。たまには息抜きをさせてやりたかったのだが、結果として会沢に入る隙を与えてしまっている。
カードの文からすれば会沢はいまだに好意的なようだが、会沢が生かしたいのは初瀬だけだ。皆木とまとめて匿ってくれるわけではない。それに初瀬は、もう反社として生きるには邪魔な感情を抱えすぎてしまっていた。
「ハセさん!ここカニいる!食えるかな?」
初瀬の心情と正反対の明るい声がして、皆木が小さいカニを掲げているのが見えた。自然と緊張が和らぎ、「食うなよ」と笑って返す。
(……皆木だけは、まともに生かしてやりたい)
こんな他愛のないやり取りは、もう最後かもしれなかった。しばし太陽の反射を受けてきらめく皆木を眺めてから、初瀬は三つ折りの紙を開いた。
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