インテリヤクザは子守りができない

タタミ

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エピローグ1

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 帰ったらいくらでもしてやる。
 それは皆木を諫めるための方便だと思っていた。

「皆木、なんか欲しいものあるか」
「あー……いや、大丈夫ッス」

 しかし初瀬は帰り際にコンビニに寄ると、適当な飲食物の他にコンドームと潤滑剤を堂々とかごに入れており、皆木は柄にもなく照れてしまって本当は飲みたかったサイダーを買ってもらえなかった。
 購入品について特に茶化すことも真面目に聞くこともできないまま部屋に着き、オートロックが閉まる音と同時に皆木は初瀬に抱き締められていた。
 少し汗の匂いがして、全身が熱くなる。

(やば、うわヤバい)

 全く語彙力のない感想で頭がいっぱいで、身体が動かない。自分の心拍音が大きすぎて耳鳴りを感じながら、皆木はどうにか声を出した。

「ハ、ハセさん……」
「……なんだよ」
「あ、あの。もしかして、今からやる……?」

 期待を隠せない声で恐る恐る聞くと、耳元で少し笑う気配がした。

「じゃあ、今から飯にでもしたいのか」

 そのまま耳元で囁かれ、皆木は興奮を抑えられずに初瀬を抱き締め返した。背中は広く、拾われてから随分体格がマシになった皆木でも初瀬には全然敵わない。その実感がさらに皆木を昂らせた。

「っ、はやく──」

 答えかけた口は塞がれて、息つく暇もなく抱き上げられる。寝室に行くわずかな間も初瀬の唇は皆木の肌をなぞり、それだけで全身が粟立った。
 展開に浮かれるばかりでろくな動きもできないうちに、真っ白なシーツに背をついて初瀬を見上げる形になっている。覆いかぶさる初瀬の足元にゴムとローションが置かれているのを見て、皆木は自分の得意分野が何だったのかやっと思い出した。

「ハセさん、オレにやらせて」

 初瀬の下から起き上がり、ベルトのバックルに触れる。人生で唯一経験を積んだ仕事の成果を、人生で初めて好きな人に披露できると皆木は意気込んだが、ベルトを抜こうとするのを初瀬の手が阻んだ。

「いい。しなくて」
「えっ、でもオレ上手いですよ。お世辞抜きにほめられてたから、ホントに」

 奉仕を断られるとは思わず、焦って「満足してもらえると思う。女より自信あるし」と付け足すと、初瀬は皆木に顔を近づけてベッドに戻すようにキスをした。口内で舌が触れ合うともっとしてほしくて、皆木は結局素直にシーツに背をつける。

「……嫌なんだよ。お前が『上手い』ってわかるのが」

 唇を離した初瀬が面白くなさそうに言って、皆木は目を瞬いた。フェラが上手くて何が嫌なんだと思った直後、その感情が何なのか思い至る。

「……もしかして、嫉妬してくれてます……?」

 まさかと思いつつ聞くと、初瀬はわかりやすく鼻に皺を寄せた。

「当たり前だろ。過去の男がチラついて嬉しがると思うか?お前のこと好きだって言ったのもう忘れたのかよ」
「え、あ、いや。覚えてます、けど……」
「なら、わかるよな。俺の言いたいこと」

 誰とセックスしようが誰にも気にされたことなどなかった皆木は、初瀬の独占欲にひどく照れてしまって口ごもるしかなかった。もっと雰囲気のある上手い返しがないかと考えたかったが、初瀬の手がシャツの下に入って腹を撫でたのですぐに何も考えられなくなってしまう。

「っ、あ……」
「お前は大人しく愛されてればいい」

 もう返事はいらないとばかりに、初瀬は皆木の唇を割って深く口づけた。
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