悪役令嬢はなにもしたくない

1話

私、侯爵令嬢であるスカーレット・リースは現在とても困惑しています。

王家主催であるパーティーでエスコートをしてくださっている婚約者の第1王子ノエル・クロスに大勢の貴族たちがいる中で突き飛ばされ婚約破棄の宣言をされているからです。

「スカーレット！！お前との婚約は破棄させてもらう！」

「ミリアを殺そうとした罪は重いぞ！」

私はなにを言われているのかさっぱり理解することができなかった。

放棄していたと言っても過言ではない。そのせいか、淑女としてのマナーを忘れて声を荒げてしまった。


「わ、私が！ミリア様を殺そうとした！？そんなことあり得ません！」

「なぜ私がそんなことをしなければならないのですか？」

ノエルは呆れたように肩を落とし話し始めた。

「先日、ミリアのもとへ暗殺者が送り込まれたという報告を受けた、暗殺者は捕縛し拷問にかけたところ依頼主はスカーレット•リースだと判明した。
容姿についても綺麗な赤髪で美人だったと証言がある。
赤髪はリース家のみに現れる髪の毛の色で、すでにお前の母は死んでいる。
だからお前しかあり得ないんだよ。」

「そんな！私は…」

「言い訳をするな！自分のした行いを認めろ！」

この言葉に同調するようにノエルの隣にいたミリアが発言する。

「そ、そうですよ。本当の事を言ったらどうですか？暗殺者についてはもう気にしていないので今なら間に合いますよ？」

「ミリアは優しいなぁ～そんな優しい君だから好きになってしまったのだろう」

「だがミリアが許したとしても私は許さない！」

そう言って何かをこちらに投げつけた。

「死んで詫びろ」

目の前に落ちたものを手に取り見ると綺麗な細工の施された短剣であった。

「！！！！！！」

「早くしろ、お前に使う時間などもうないのだ。それとも牢屋で辱めを受けながら死ぬか？」

「わか…りました…」

鞘から引き抜くと鈍い墨色をした刀身が姿を現した。その刀に映る自分は酷くやつれた顔をしていた。

「(なぜ私がこんな事にあってるの、)」

「(もう、私には死ぬか辱めを受ける選択しか残されていないのね。)」

「(辱めを受けるくらいなら死んだ方がまだマシね。)」

心臓のところへ短剣を当てたところでふと横を見ると父であるジョセフ•リースが息を乱しながらこちらを見ていた。

「(なぜここに父がいるのかしら？王様との話し合いの最中のはずですが。)」

「(もう考えても仕方のないことね。覚悟はできました。親不孝な娘でごめんなさい父上)」

そう頭の中で謝罪すると勢いよく刃を突き刺した。

ドボドボと溢れ出す鮮血と激しい痛みが襲うがそれもすぐにおさまった。

目の前が徐々に暗くなり駆け寄ってくる父上の姿と気持ちの悪い顔をしたミリアの表情が私の最後の記憶となった。