戦争に行くキミのために、僕は剣を鍛え上げる。

クロモリ

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第三章 刀工と騎士と武芸大会

刀工、騎士を見送る

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ギレイはミシュアの目にかすかに涙が滲むのを、見て取った。
「ごめん……ミシュアさん、こんな話」
 謝りながら、しかし、ギレイは思ってしまった。
(泣かせて悪いと思うのに……悲しんでくれて少し……嬉しい、だなんて)
 ギレイは自分の感情の扱いに惑っていると、彼女は言った。
「いえ、わたしこそ、ごめんなさい」
 彼女は涙を零すみたいに、ささやかに言った。

「わたしがさっき言ったこと、忘れて。武芸大会は……そう、自分でどうにかしてみる」
「うん……って、そうだ」
「……え?」
「完成速度を重視するなら、僕が渡してある試供の剣よりも――」
「――ギレイさん、あの、」
「武芸大会のような試合形式なら、ルーさんの剣の方がいい……かも」
 言いながら、ギレイは自分の声が他人のもののように聞こえた。聞こえただけでなく、他人の悪評のように、かすかに心を傷つけた。でも、続けた……彼女にとって最善だろうと信じて。
「ルーさんの剣を連戦に備え、予備を幾つも持って。ルーさんの工房の量産技術――複製精度は凄い。同じ剣を振るっている感覚になるはずだから試合ごとに取り替えていけば良い……よ」
 言い終えて、ギレイはでも、衝動的に言った。
「あくまで、武芸大会では、ね」
 思いの外、声が大きくなってしまったことにギレイ自身驚いた。そしてそれは彼女も同じであったようで……けれど。
「……ふふっ、なんだ。そうか」
 彼女は何かを納得したように少し笑って、続けた。
「ううん、ギレイさんからもルーキュルクギルドの営業をされるとは思わなかっただけ……」
「え? あ、あー良いじゃない、そんな刀工が居ても」
「ええ、わたしもそう思う」
 彼女はギレイが差し出したいくつかの剣の図案を持ち、席を立った。
「ギレイさん。この図面は後でゆっくり見ることにする……武芸大会の後に、ね」
「うん」
「この図面も、今の助言も……ありがとう」
「うん」
「あ、そういえば、ごめんなさい」
「……え?」
「……どんな新しい剣が欲しいか。わたし、考えても、まだ思いつかないんだ」
「うん。すぐに分かることじゃないよ、良い剣士なら、尚更ね」
「そうかな?」
「そうだよ」
「そっか――改めて、ギレイさん」
「ん?」
「わたしの新しい剣を作って欲しい……ゆっくりと時間をかけてね」
「ありがとう……ミシュアさんもどんな剣が欲しいか、ゆっくり考えてね」
「……ふふっ、そうする」
 言って、彼女は鍛冶小屋を出て行った。
 ギレイは閉ざされていく扉を見つめていた。去っていく彼女――いつもよりも、どうしてか、小さく頼りなげに目に映った背に、かけられる言葉を見つけられなかった所為だった。
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