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第二章 友人と恋人
第十三話
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予定がない日曜日は、親の店でバイトをする。散財した分は働いて取り戻さないとな。
と言っても相変わらず暇なので、スタッフルームのパソコンを起動して、「熟女」「巨乳」「ぽっちゃり」と打ち込み検索をかける。
言っておくが、俺は熟女好きではない。お姉さんが好きなのだ。しかし「お姉さん」で検索すると、二十代前半くらいの女性がヒットしてしまう。俺が求めているのは二十代後半から三十代前半なので、「お姉さん」ではなく「熟女」で検索するしかない。
ぽっちゃりお姉さんのふわふわに、荒んだ心が癒される。
はあ。ぷにぷにの女の人に慰めてもらいたい。辛かったね、と頭を撫でてもらいたい。骨ばっていない柔らかい腕の中に包まれたい。
「あれ? 誰もいない?」
「ほんとだ。すみませーん!」
「……」
「あれ? 今日定休日?」
「う、ううん。営業日だと思うけど……。すみませーん!!」
「……へっ? あ、やべ! はーい!」
また夢中になりすぎて、来客に気付かなかった。
急いで靴を履いてホールに出ると、そこには花崎さんと酒井さん、中迫さんが立っていた。
「え!?」
目を丸くしている俺に、花崎さんがもじもじと手を振る。
「急にごめんね? 今日このグループで遊んでて、話の流れで南君のお店に行こうってなって」
「そ、そうなんだ」
「迷惑だったかな……?」
不安げに視線を送る彼女に、俺は首を横に振った。
「全然。来てくれてありがとう。好きなとこ座って」
「わ、ありがとう」
花崎さんたちが腰かけた一番景色の良い席に、俺は温かいお茶をテーブルへ置き、注文を取る。さすがはスタイルを気にしている女子だけあって、三人はヘルシー定食を頼んだ。
五穀米に豚汁、サラダと漬物、サバの煮付けが載せられたトレーを、ひとつずつ運んでいく。
女子たちは「わー! おいしそうー!」と顔をほころばせ、各々「いただきまーす」と手を合わせて、料理を口に付ける。
「わ! おいしい!」
「これ、南君が作ったの!?」
花崎さんと酒井さんが、口に手を当てて俺に尋ねた。こんなおいしい料理を作れるなんて、と感心している様子だ。
「違う違う! 親が仕込んだ料理を、温めて出してるだけだよ」
「そうなんだね! 南君のお父さんとお母さんの料理おいしいー!」
中迫さんがそう言って、サバの煮付けをポイと口の中に放り込み、「ん~」と舌鼓を打つ。こんなに喜んでもらえたら、俺だってすごく嬉しい。
三人以外に客がいなかったので、俺は空いている椅子に座り会話の中へ入った。
「もうすぐ体育祭だよね? もういやぁ」
酒井さんがうんざりした表情を浮かべた。「実理、運動苦手だもんね」と中迫さんが相槌を打つと、酒井さんは頷く。
「運動嫌いなんだもん。走るの遅いし、どんくさいから、絶対クラスで迷惑かけちゃうよ」
そんなことを気にしているのかと、俺は内心驚いた。
「迷惑だなんて誰も思わないって。うちのクラス、男子も運動系の人少ないし。たとえば、七岡は吹奏楽部、木渕と俺は帰宅部」
「でもぉ~」
「実理の分まで、私と翔子が頑張るよ。だから楽しもう」
花崎さんが励ますと、酒井さんが「うん~」と低い声で唸った。本気で運動が好きじゃないようだ。それにきっと責任感が強いのだろう。俺も運動は得意じゃないが、最下位がどうしたという心持ちで挑むつもりだ。
話に花を咲かせていると、子ども連れの家族が店に入ってきた。
俺は「いらっしゃいませー」と声掛けをして、彼らに注文を取りに行く。席を離れる時に花崎さんたちに手を振ると、三人は笑顔で「がんばってー」と手を振り返してくれた。
家族連れの注文を取っている時、俺はふと気が付いた。
そう言えば花崎さんたち、料理が届いてからさっきまで、一度もスマホを触らなかったな。
と言っても相変わらず暇なので、スタッフルームのパソコンを起動して、「熟女」「巨乳」「ぽっちゃり」と打ち込み検索をかける。
言っておくが、俺は熟女好きではない。お姉さんが好きなのだ。しかし「お姉さん」で検索すると、二十代前半くらいの女性がヒットしてしまう。俺が求めているのは二十代後半から三十代前半なので、「お姉さん」ではなく「熟女」で検索するしかない。
ぽっちゃりお姉さんのふわふわに、荒んだ心が癒される。
はあ。ぷにぷにの女の人に慰めてもらいたい。辛かったね、と頭を撫でてもらいたい。骨ばっていない柔らかい腕の中に包まれたい。
「あれ? 誰もいない?」
「ほんとだ。すみませーん!」
「……」
「あれ? 今日定休日?」
「う、ううん。営業日だと思うけど……。すみませーん!!」
「……へっ? あ、やべ! はーい!」
また夢中になりすぎて、来客に気付かなかった。
急いで靴を履いてホールに出ると、そこには花崎さんと酒井さん、中迫さんが立っていた。
「え!?」
目を丸くしている俺に、花崎さんがもじもじと手を振る。
「急にごめんね? 今日このグループで遊んでて、話の流れで南君のお店に行こうってなって」
「そ、そうなんだ」
「迷惑だったかな……?」
不安げに視線を送る彼女に、俺は首を横に振った。
「全然。来てくれてありがとう。好きなとこ座って」
「わ、ありがとう」
花崎さんたちが腰かけた一番景色の良い席に、俺は温かいお茶をテーブルへ置き、注文を取る。さすがはスタイルを気にしている女子だけあって、三人はヘルシー定食を頼んだ。
五穀米に豚汁、サラダと漬物、サバの煮付けが載せられたトレーを、ひとつずつ運んでいく。
女子たちは「わー! おいしそうー!」と顔をほころばせ、各々「いただきまーす」と手を合わせて、料理を口に付ける。
「わ! おいしい!」
「これ、南君が作ったの!?」
花崎さんと酒井さんが、口に手を当てて俺に尋ねた。こんなおいしい料理を作れるなんて、と感心している様子だ。
「違う違う! 親が仕込んだ料理を、温めて出してるだけだよ」
「そうなんだね! 南君のお父さんとお母さんの料理おいしいー!」
中迫さんがそう言って、サバの煮付けをポイと口の中に放り込み、「ん~」と舌鼓を打つ。こんなに喜んでもらえたら、俺だってすごく嬉しい。
三人以外に客がいなかったので、俺は空いている椅子に座り会話の中へ入った。
「もうすぐ体育祭だよね? もういやぁ」
酒井さんがうんざりした表情を浮かべた。「実理、運動苦手だもんね」と中迫さんが相槌を打つと、酒井さんは頷く。
「運動嫌いなんだもん。走るの遅いし、どんくさいから、絶対クラスで迷惑かけちゃうよ」
そんなことを気にしているのかと、俺は内心驚いた。
「迷惑だなんて誰も思わないって。うちのクラス、男子も運動系の人少ないし。たとえば、七岡は吹奏楽部、木渕と俺は帰宅部」
「でもぉ~」
「実理の分まで、私と翔子が頑張るよ。だから楽しもう」
花崎さんが励ますと、酒井さんが「うん~」と低い声で唸った。本気で運動が好きじゃないようだ。それにきっと責任感が強いのだろう。俺も運動は得意じゃないが、最下位がどうしたという心持ちで挑むつもりだ。
話に花を咲かせていると、子ども連れの家族が店に入ってきた。
俺は「いらっしゃいませー」と声掛けをして、彼らに注文を取りに行く。席を離れる時に花崎さんたちに手を振ると、三人は笑顔で「がんばってー」と手を振り返してくれた。
家族連れの注文を取っている時、俺はふと気が付いた。
そう言えば花崎さんたち、料理が届いてからさっきまで、一度もスマホを触らなかったな。
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