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最終章 初恋と親友
最終話
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テンションが上がった栞奈ちゃんのせいで、浜辺からかなり遠くまで泳いで来てしまった。折り返しの時点でバテた俺は、栞奈ちゃんと七岡が引っ張る浮き輪に掴まり休憩する。純粋に溺れ死にそうだったので助かった。
浜辺に戻った俺たちは、ブルーシートの上で休憩した。
重力を全身で感じる。疲労で体がふらついたが、それもまた気持ち良かった。冷凍してあったジュースが沁みる。
俺はスマホを開き、カメラを起動する。ちらりとメンバーを窺い見ると、彼らはお喋りをしたり、お菓子を食べたりと、各々好きに過ごしていた。
自分でこんなことを言うの、初めてで緊張する。
女子たちのお喋りがなんとなく落ち着いた時を見計らい、俺はみんなに声をかける。
「な、なあ」
声が裏返ってしまった。恥ずかしい。
「ん? どうしたんだー南」
「み、みんなで、写真撮らないか?」
その提案に、メンバー全員が驚いていた。写真嫌いの俺がそんなことを言い出したんだから、当然だろう。
「わ、私たちは嬉しいけど、南君はいいの?」
花崎さんが遠慮がちに尋ねた。その一言で、今までこのメンバーが――栞奈ちゃんでさえ、一度も俺にカメラを向けなかった理由が分かった。みんな、俺に気を遣ってくれていたのだ。
「うん。みんなで撮りたい。いい?」
「もちろんいいよー! やったー!」
「おー! 撮ろうぜ撮ろうぜ!」
栞奈ちゃんと木渕がハイタッチをして、酒井さんと中迫さんは「わーい」と歓声をあげる。
「誰かに撮ってもらおうぜ! 俺、お願いしてくる!」
七岡がそう言って、俺のスマホを通りすがりの男性に渡した。
「撮りますよー。はい、笑ってー」
女子たちが前に座り、後ろで木渕と七岡が俺の隣に立つ。俺はそいつらの肩に腕を回し、ぎこちなく歯を見せ
た。
「おい南、なんだその顔。笑うのへったくそだなあ」
七岡の指が俺の腰をくすぐった。面白がった木渕もちょっかいをかけてくる。
俺が破顔したその瞬間、シャッターが切られた。
真上に太陽が昇る真っ青な空、白い砂浜、そして海が見えないほどの人混み。その中の真ん中でふざけて笑う俺たちの色鮮やかな日常が、一枚の画像に切り取られた。
グループチャットに画像を送ってから、俺は自分の写真投稿用SNSを開く。
《勉強会メンバーで白浜》
淡泊なメッセージを添えて投稿ボタンを押すと、見事に飼い猫や食べ物の写真しか載っていないタイムラインの先頭に、俺と六人の友人が映る写真が現れた。
「良い写真だな、これ」
ボソッと呟いた俺に、メンバー全員が嬉しそうに笑った。
「また撮ろうね! いっぱい撮ろー!」
「そうだよ南君、海のあとはBBQ、そのあとは花火をして、明日は動物園、明後日は観光名所巡りだよ。まだまだこれからなんだから」
栞奈ちゃんと花崎さんはそう言いながら、俺の投稿にイイネを押した。いつのまにか中迫さんと酒井さんも、そして木渕と七岡もイイネを押してくれている。どうして自分の投稿にイイネが押せないのだろう。俺だって、この投稿にイイネを押したい。
「にしてもやっぱりお前は顔が良いなあ。写真で見ると余計そう思うわ」
「分かる。こんなアホみたいに笑ってるのに顔が良いってなんだよー。はらたつわー」
「お前らも良い顔してんじゃん。ほら、木渕は半目で七岡は白目だ」
「だーーー! まじかよお前の顔が眩しすぎて気付かなかったわ!」
「それ分かってて投稿したのかお前! なんでだよ!」
なんでって、みんなに俺の友だちを自慢したかったからだよ。
見てくれよ俺の友だち、最高だろって。
そうか、写真ってこういう時のためにあるんだな。人生で一番楽しいんじゃないかと思えた瞬間を、じいちゃんになっても思い出せるように。
浜辺に戻った俺たちは、ブルーシートの上で休憩した。
重力を全身で感じる。疲労で体がふらついたが、それもまた気持ち良かった。冷凍してあったジュースが沁みる。
俺はスマホを開き、カメラを起動する。ちらりとメンバーを窺い見ると、彼らはお喋りをしたり、お菓子を食べたりと、各々好きに過ごしていた。
自分でこんなことを言うの、初めてで緊張する。
女子たちのお喋りがなんとなく落ち着いた時を見計らい、俺はみんなに声をかける。
「な、なあ」
声が裏返ってしまった。恥ずかしい。
「ん? どうしたんだー南」
「み、みんなで、写真撮らないか?」
その提案に、メンバー全員が驚いていた。写真嫌いの俺がそんなことを言い出したんだから、当然だろう。
「わ、私たちは嬉しいけど、南君はいいの?」
花崎さんが遠慮がちに尋ねた。その一言で、今までこのメンバーが――栞奈ちゃんでさえ、一度も俺にカメラを向けなかった理由が分かった。みんな、俺に気を遣ってくれていたのだ。
「うん。みんなで撮りたい。いい?」
「もちろんいいよー! やったー!」
「おー! 撮ろうぜ撮ろうぜ!」
栞奈ちゃんと木渕がハイタッチをして、酒井さんと中迫さんは「わーい」と歓声をあげる。
「誰かに撮ってもらおうぜ! 俺、お願いしてくる!」
七岡がそう言って、俺のスマホを通りすがりの男性に渡した。
「撮りますよー。はい、笑ってー」
女子たちが前に座り、後ろで木渕と七岡が俺の隣に立つ。俺はそいつらの肩に腕を回し、ぎこちなく歯を見せ
た。
「おい南、なんだその顔。笑うのへったくそだなあ」
七岡の指が俺の腰をくすぐった。面白がった木渕もちょっかいをかけてくる。
俺が破顔したその瞬間、シャッターが切られた。
真上に太陽が昇る真っ青な空、白い砂浜、そして海が見えないほどの人混み。その中の真ん中でふざけて笑う俺たちの色鮮やかな日常が、一枚の画像に切り取られた。
グループチャットに画像を送ってから、俺は自分の写真投稿用SNSを開く。
《勉強会メンバーで白浜》
淡泊なメッセージを添えて投稿ボタンを押すと、見事に飼い猫や食べ物の写真しか載っていないタイムラインの先頭に、俺と六人の友人が映る写真が現れた。
「良い写真だな、これ」
ボソッと呟いた俺に、メンバー全員が嬉しそうに笑った。
「また撮ろうね! いっぱい撮ろー!」
「そうだよ南君、海のあとはBBQ、そのあとは花火をして、明日は動物園、明後日は観光名所巡りだよ。まだまだこれからなんだから」
栞奈ちゃんと花崎さんはそう言いながら、俺の投稿にイイネを押した。いつのまにか中迫さんと酒井さんも、そして木渕と七岡もイイネを押してくれている。どうして自分の投稿にイイネが押せないのだろう。俺だって、この投稿にイイネを押したい。
「にしてもやっぱりお前は顔が良いなあ。写真で見ると余計そう思うわ」
「分かる。こんなアホみたいに笑ってるのに顔が良いってなんだよー。はらたつわー」
「お前らも良い顔してんじゃん。ほら、木渕は半目で七岡は白目だ」
「だーーー! まじかよお前の顔が眩しすぎて気付かなかったわ!」
「それ分かってて投稿したのかお前! なんでだよ!」
なんでって、みんなに俺の友だちを自慢したかったからだよ。
見てくれよ俺の友だち、最高だろって。
そうか、写真ってこういう時のためにあるんだな。人生で一番楽しいんじゃないかと思えた瞬間を、じいちゃんになっても思い出せるように。
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みんなの感想(1件)
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あれ?感想1番乗り?
はい 読ませてもらいました。
まだ2章までですが。
今回は男子高校生(1人)の日常の話ですが、
実に面白い。
もしかして
身近にモデルになった人がいたのかしら
そう思わせるくらい
活き活きとしてますね。
女子高生達も
う〜んふわちゃんとかTVとかで
見たことあるようなはしゃぎぶり(笑)
(ΦωΦ)フフフ…この先の男子高校生の日常
どうなることやら(笑)
ドタバタとにぎやかで
バカばっかりやったり
ときには悩んだり・・・
これ以上書いたらネタバレしそう(笑)
さ 続き読みましょう。
大倶利伽羅(小笠原樹)さん
ご感想ありがとうございます!!
やっぱり小笠原樹さんだったんですね!!( *´艸`)
そうかな!?と思いながら、間違っていたらだめなので言わずにいたのですが……やはり( *´艸`)!
こちらも読んでくださりありがとうございます!!
鋭いですね笑。はい、実はユウにはモデルがいます笑
女子高生たち書きながら、「若いわー……」と苦笑いしていました笑
これからも楽しんでいただけるととっても嬉しいです!
小笠原樹さん、ご感想ありがとうございました( *´艸`)