Xmas・nighT

鳴神月

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恋は盲目っていうじゃない?

ー…なんで…アイツの顔がチラつくんだ…?ー

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 …ついに来てしまった。ピンク一色でライトアップされたホテル。まさか俺がこんな所に来るとは思わなかった。栞の手を握ってホテルの前に立ち尽くす。


「………」


「………」


お互い何も言わない。何か言って栞!!お願い!!正直童貞の俺にはここに来る事が既に危険なの!!


「………」


「………」

  
お願いだから喋ってぇぇ!?い、いや待て!!脳内議会でどうするか考えるべきか!?こ、ここはやはり俺からビシぃっと!?出来るか!!つまづいたっていいじゃないかどうていだもの すぐる。 


「し、栞!!」


「ひゃい!!」


お互い素っ頓狂な声をあげる。栞も初めてなのだろうか…。だとしたらそれはそれで嬉しいが…


「ど、どうする?」


「ど、どうするって…」


再び沈黙。そりゃそうだ…。どうしようもないじゃん。入るか、帰るかの二択だ。


「す、優君こそどうするの!!」 

 
俺!?お、俺はそりゃ男だし…で、でも…本当に良いのかとか…くそっ!!童貞だから分かんない!!


「は、入ろう!!」


手を引いて一緒に歩き出した瞬間。何故だか分からない。神の悪戯か、悪魔の罠か。俺には分からない。幻聴と幻覚を見た。


“もやしっ子!!”


そう俺に声を掛けたのは花村だった。居るはずの無い場所に花村が居る。花村が居るからこれ以上進めない。これは花村の怨霊なのか………いや…俺の…理性…か…?こんな大人しくて可愛らしい子じゃなくて…俺はガサツで意地っ張りで偉そうでいつだって笑顔で接してくる…アイツが…好き…なのか…?


気が付くと栞と向かい合って頭を下げていた。それは栞も同じだった。


「「ごめん!!」」


同時に発した言葉に驚愕する。異口同音。異なる口から同じ言葉を発する。どうやら栞にもちゃんと想い人が居たらしい。俺は急いで携帯を取り出し、アイツにかけ始めた。
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