朧開闢

人狼

文字の大きさ
上 下
1 / 1

終わる世界、始まりの世界

しおりを挟む
 君たちは考えたことがあるだろうか。僕たち人間は「なぜ」生きているのかと。僕たち人間に必要性はあるのだろうか。何より僕に…生きる価値があるのだろうか。 
 「ごめんなさい…ごめんなさいっ…」ーーあの頃の僕はいつも謝ってばかりだった。なぜなら僕には何もなかったから。何度も道を誤り、踏み外したりすれば、必ず、道を示してくれる誰かが隣りにいてくれるものだと勝手に思ってしまっていた。そんな僕の考えが甘かった。実際、「僕」を考えてくれる人はいなかった。世界なんて、所詮、そんなもんだ。「そんな」世界僕は嫌いだーーーーー

 元々、僕の家は比較的、裕福な方だった。傍から見れば羨ましいとでも思われていたのだろう。実際僕も生活に不自由は無く、この暮らしに満足していた。両親が共働きで、月に一回家に帰ってきては荷物を持ってまた、仕事へ向かっていった。そんなこんなで親と合うことはなく、最後に両親を見かけた日なんて覚えていない。話なんてまともにしたこともなかった。だから学校で問題をおこしても親が来ることはなく、学校で暴力を受けても連絡なんて来なかった。そんな親に対して怒りしかなかった。だが、僕が15歳のとき変化が起きた。ーーーーー父親が死んだ。刺されたらしい。部下との話の食い違いだとか言っていた。…………だから?あとからその日に母親は家を出ていっていたことがわかった。…………だから、どうしたって言うんだろう?周りの人は僕を哀れんだ。……なぜ?ぼくは変わっていない。何を哀れむのだろう。あぁそうか。僕には感じられなかった。「悲しみ」という感情を。感情なんて僕には不必要だ。……そうだ…そうか………いや違う…僕じゃない。なぜ気づかなかったのだろう。不必要なのは世界じゃないか。「……ねぇ。」こんな世界は出来損ない…そうだろう?僕は叫ぶ。「神も仏もいるのなら…僕に…」いや…違うな。「俺に……この世界を変えさせてくれ!この出来損ないの世界なんて…いらねぇんだよ!」もし神が本当に存在するんなら、俺をこの世界の創造者に…!…割と本気で思っていた。転生系って結構あるじゃん?なんて思いも虚しく、……なかった。「……聖君…聞いてた…?」目の前には、少女がいた。彼女は俺の名前を呼びながら、可愛く頬を膨らませていた。しばらく俺は目を見開き、硬直したまま動けずにいたが、やがて口を開いた。「…だ…れだ…お前…」途切れ途切れの声に彼女はニヤリと口角を上げ、そして少し悲しそうな顔をしてから小さく口を開いた。「やっぱり…覚えてない…か。」少し考えるような仕草をしてから、彼女はいった。「私は白銀未來!まだピチピチな16歳だよ!よろしくね!如月聖君…。」彼女…未來は元気よく笑った。俺が知らないはずの女の子。俺を知らないはずの女の子。その出会いは俺の運命を変える。いや、世界を変える大切な出会いだった。これは俺が世界を変えるまでの物語の序章である。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...