インターネットで異世界無双!?

kryuaga

文字の大きさ
34 / 92

#33

 魔の森で突如発生した、ユニークモンスター"シャドウウルフ"とそれに率いられた魔物の群れを倒すべく、討伐隊がアルストロメリアの街から出発した。

 その様子を俺は街の南門側に敷かれた防衛戦の後方で見守っていた。

 冒険者の中でも底辺の存在であるノービスランクの俺には、大した役割は与えられていない。

 前線で戦う冒険者の補助が主な仕事だ。

 まあ今回の依頼に何か騙し打ちを受けたような気分を感じており、正直やる気が無かったので好都合とも言える。



「おい、魔物の群れがこっちにやって来たぞ!」



 それから程なくして、魔物の一群がこちらへと向かってきた。

 シャドウウルフらしき巨体は見当たらないので、群れの本隊ではないようだが、それでもこちらの冒険者よりも数が多い。



 大丈夫か? 

 などと、他人事のように戦いの様子を見守っていたが、その心配はどうやら杞憂だったらしい。



 防衛戦の先頭に立った冒険者たちが、魔物の群れをガンガン蹴散らしている。

 その中心となっているのは、間違いなくブルーローズの面々だった。



 どうやら彼女達は、俺の依頼を受ける前からビショップランク昇格目前だったらしく、つい先日昇格試験を突破し全員がビショップランクになったそうだ。

 元々兼ね備えていた実力に加え、実験ついでに飲んでもらった栄養ドリンクによる力の上乗せもあり、彼らはルークランク冒険者にも劣らない実力を手に入れたようだ。



 この様子なら、俺の仕事も無さそうだ、などとゆったりと事態を見守っていたのだが、徐々に雲行きが怪しくなっていく。



 というのも、魔物の数が一向に減らないのだ。

 かなりの数の魔物を倒しているのは、ずっと観察していたのでまず間違いない。

 にも関わらず周辺の転がっている魔物からの戦利品ドロップアイテムの数が妙に少ないのだ。



 動物型やら鳥型やら、はたまたドラゴン型まで幅広い種類が存在するにも関わらず、奴らが魔物と一括りにされて呼ばれるのは、ある共通点が存在するからだ。

 それは止めを刺すと死体が残らず、その変わりにドロップアイテムを落とすという特徴を持つという点だ。

 逆に言えば、そう言った特徴を持つ存在のことを魔物と呼ぶ、と言い換えることも出来る。 



 死体が残らず、かと言ってドロップアイテムもなく、それでいて押し寄せる魔物の数は減らない。



 これは一体どういう事なのか?

 それに、討伐隊が出発してもう長い時間が経つ。

 そろそろシャドウウルフ討伐の報告があってもいい頃なのだが……。



 そう不可解に思っているうちに、気が付けば防衛線に変化が起きていた。



「くそっ! どうして数が減らない!」



「討伐隊はまだ戻らないのか!」



「グ、グスタフさんっ! 大丈夫っすか!」



「へっ、この程度。なんてこたぁないぜ!」



 冒険者達の叫びがいくつも飛び交っている混沌の最中、ついに防衛戦の一部が押され始めたのだ。

 もう何時間も戦闘を続けているのだ、疲労もかなりのモノだろう。

 負傷者も増え始め、後方もかなり慌ただしくなってきた。



 負傷者の治療などを手伝いつつ、俺は考える。

 悩んだ末、女神様に貰ったギフトの一つ〈千里把握〉の力を使うことにした。



 このギフトの効果は、千里以内の範囲の状況を、魔力や温度など様々な観点から探ることが出来る。

 更に特定の場所の様子を、ビデオカメラで撮影したように脳内モニターに映し出すことも可能だ。

 しかし、この能力を発動するに辺り、ある問題が存在した。



 実の所、現在の俺は所持しているギフトの多くを使えない状態にある。

 より正確に言えば、使えない訳ではなく、マトモに扱えないというべきか。



 その原因は〈超魔力〉のギフトにある。

 このギフト、その名の通り俺の魔力をアホみたいに増やしてくれる効果があるのだが、そのあまりに膨大な量のせいで、魔力の制御が難しくなってしまったのだ。

 魔力の出力制御というのは、どうしてもその本人の持つ魔力量に引っ張られる。

 例えば、千の魔力を持つ魔導師ならば、百の魔力を使う魔法を特に苦も無く発動できるが、十万の魔力を持つ魔導師の場合、百の魔力を使う魔法を使おうとしても、二百の魔力が引き出されるといった具合だ。



 俺の場合はそれに加えて更に〈魔力節約術〉というギフトまで所持していたので、更に大変なことになった。

 このギフト、言ってしまえば百の魔力を使う魔法を十の魔力で発動できるという便利な代物だが、その分だけ、余計に細かい魔力の制御が必要となってしまう。



 そんな訳で現在の俺は、魔力を必要とするギフトを実質使えない状況にあるのだ。

 そして〈千里把握〉もまた魔力を必要とするギフトの一つだ。



 だが現状を鑑みるに、この能力でシャドウウルフ討伐隊の状況を探るのは急務だと言えた。

 こっそりと戦場から抜け出し、物陰へと姿を隠す。



「〈千里把握〉」



 俺がギフトの力を発動した瞬間、強烈な痛みが頭を駆け巡る。



「くっ、どこだっ……。見つけた!」



 痛みに耐えながら、魔力を探るとすぐにシャドウウルフの居場所を見つけることが出来た。

 すぐさま、その付近の様子を脳内モニターへと映し出す。



「これはっ」



 そこには、黒い巨躯の狼を取り囲むルークランク冒険者たちの姿があった。

 だが、彼らは攻めきれずにいた。

 その理由は明白だ。

 見ればシャドウウルフの影から次々と魔物が這い出してきている。

 そいつらに進路を阻まれ、冒険者たちは攻めきれずにいるのだ。



「こんな能力、偵察隊からの報告では無かったはずだが……」



 こんな凶悪な能力を相手が持っているのを知らずに、対策無しで挑めば苦戦するのも無理はない。

 同時に、こちらに魔物が無尽蔵に押し寄せている理由も判明した訳だ。

 露払いの役割を任された騎士団もかなり奮戦しているようだが、それでもそれなりの数がその防衛戦を抜けている。

 これではいつまで経っても、街に押し寄せる魔物の数が減らない訳だ。



 痛みを堪えつつ戦場の様子を見守るが、どうにも状況が好転する兆しが見えない。



「面倒だが、やるしかないか……」



 ここで派手に動けば、冒険者ギルドから本格的に目を付けられそうだが、かと言ってこの状況を黙って見過ごすのもそれはそれで寝覚めが悪くなりそうだ。

 俺はこの手でシャドウウルフを倒す覚悟を決める。



 〈千里把握〉を解除し、目前の戦場へと視線を戻すと、さっきよりも負傷者の数が増していた。

 中には放置すれば、そのまま死にかねない重傷者の姿もチラホラ見受けられる。



「まだ表に出すつもりは無かったんだがな……」



 俺はスマホを手に、ネット通販サイトへと接続する。

 そして、軟膏を大量注文した。これらは以前にフィナの治療で使ったモノだ。

 負傷者の治療に大いに役立つだろう。

 ついでに変装用としてマスクとサングラスを注文し、それを身に付けて素顔を隠す。



「おい、この薬品を負傷者に使ってやれ! 良く効く魔法薬だ!」



 物陰から飛び出した俺は、そう言って手近な冒険者へと軟膏の詰まった段ボール箱を押し付けると、すぐさま魔法を発動する。



浮遊レビテーション



 俺の身体がゆっくりと上空へと浮かび上がる。

 風と闇・、2つの属性の複合魔法だ。

 魔力の制御が甘いせいかフラフラと揺れて安定しないが、今は気にしてはいられない。



 俺は防衛戦の後方の敵の一団へと視線を向ける。



 数をある程度削ってやらないと、持ちそうにないからな……。



 俺は右手を前へと突き出し、魔法を発動する。



「焼き払え! 火炎奔流バーンストリーム!」



 俺の右手の先から、巨大な炎の渦が放たれる。

 以前、デポトワール商会で対峙した魔導師ソンブルが使っていた魔法だ。

 だが、俺の放ったそれは威力が全く異なっていた。



 巨大な炎の渦が魔物の一団を包み込むと、そのままそこら一帯がマグマ溜りへと変化してしまった。

 当然その辺りにいた魔物は、消し炭だ。

 

「これでも手加減したつもりだったんだが……」



 勿論、気を遣って大分離れた位置に放ったので、味方には被害は出ていない。

 それでも十分良い援護になったはずだ。



「あー! 何してるの! コ――むぐぅ」



 ディジーが俺の姿に気付き、声を上げようとしてシアンに口を抑えられているのが見えた。

 熟練の魔導師は魔力の質から、相手の正体が分かると聞いたことがある。

 マスクとサングラスを身に付けていたにも関わらず、あっさりとディジーには正体がバレてしまったようだ。



 姿を隠しているのは分かるだろうに、名前を叫ぼうとするなよ、まったく……。

 止めてくれたシアンには感謝しないとな。



 魔物と対峙していたはずの、他の冒険者たちからも視線が集まっているのを感じる。

 さっさとここを去った方が良さそうだ。



飛行フライ!」



 浮遊の魔法と同じく、風と闇、2つの属性の複合魔法だ。使用難易度はこちらの方がより高い。

 魔法の発動と同時に、俺の身体がジェット噴射の様に勢い良く大空を駆けてゆく。



「ぐぅぅぅっ」



 転生前の俺なら容易く扱えていた魔法だが、本来はかなり魔力制御が難しい魔法だ。

 俺は姿勢制御に苦戦して、ジグザグの軌道を描きつつも、なんとかシャドウウルフの元へと飛翔する。



「見えたっ!」



 シャドウウルフの巨体を視界に収めた俺は、1直線にそちらへと向かう。



「はぁぁ!」



 高速の飛翔の勢いを乗せて、そのまま思いっきりシャドウウルフの巨体を拳でぶん殴る。

 〈肉体超強化〉のギフトの御蔭か、殴った拳は然程痛まない。

 だがシャドウウルフの方も、多少吹き飛びはしたものの、傷は浅いようだ。



「な、なんだっ!?」



 突然の俺の飛来に、冒険者たちが目をパチクリとさせているが、気にはすまい。

 さっさとコイツを倒して、孤児院へと戻り残った仕事の続きをするという使命が俺にはあるのだ。



あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。