インターネットで異世界無双!?

kryuaga

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 93層の探索開始から10時間程が経過した。

 その間に俺達が踏破した距離は、体感で精々1km程度に感じられる。

 どう見積もっても遅いペースだ。



 こうなった原因は、行く手を何度も遮った強力な魔物の存在や、道中に仕掛けられた数々の悪辣な罠など、複数存在する。

 が、結局の所、この階層までなんの苦労も無くやって来たツケが、今巡って来ただけなのだろう。



「今日の探索は、この辺で終わりにするとしよう」



 丁度開けた場所に着いたので、俺は皆を見回しながら、そう提案する。

 俺自身もそれなりに疲れていたが、それ以上にずっと先導をしていたエイミーの消耗が激しかったからだ。



 無論俺も出来る範囲で手伝ってはいたのだが、やはりこういった細々とした魔法はエイミーに分がある。

 加えて、残りの3人がその手の技能を全く持ち合わせておらず、全然役に立たなかったせいもあり、エイミーに負担が集中したという訳だ。



「エイミーはしばらくそこで休んでろ。俺達は野営と夕食の準備をする」



「あ、ありがと」



 本当は〈転移門〉を使って帰れるのだが、ナイトレイン達からの連絡があるかもしれないので、無線機が届く範囲内に最低1人は残っておく必要がある。

 エイミーだけでも一旦帰還しないか提案したのだが、それは断られてしまった。

 一番疲れているエイミーが残る以上、他の者が帰る訳にもいかず、結局全員で野営する事になったのだ。



 とはいえ野営道具は、俺のギフトの力を使いネット通販で調達出来るので、大荷物を持ち歩く必要が無いだけでも大分楽だ。

 ちなみにナイトレイン達は、自前の空間魔法内に仕舞っているので、同じく荷物を持ち歩く必要は無い。

 俺自身の能力については棚上げして言わせて貰うが、それはちょっとずるいと思う。



「どれも日本で良くみるタイプのキャンプ道具だから、異世界感が薄いわね……」



 ツバキがそんな事を呟いているが、こんな迷宮なんていう非日常空間で、異世界も何もあったもんじゃないと思うが……。



「寝ている間の護衛はコイツらに任せれば問題ない」



 サトルが、迷宮内でテイムした魔物たちを周辺警戒に当たらせる。

 まあ、俺は眠っていても襲撃があれば、即座に対応できる自信があるので、その辺はどうでもいい。

 むしろ俺の場合、余計な雑念が介在しない分、寝ている時の方が反応が良いまであるのだ。……まったく自慢にならないな。



 ちなみに夕食は、俺のお手製のアクアパッツアだ。



 まずは新鮮な真鯛に包丁を入れ切り身にしたり、アサリの砂抜きしたりといった下拵えを行う。

 それが済んだら(多分)鯛の切り身にクレイジーソルトをまぶし、オリーブオイルを敷いたフライパンで両面を軽く焼きあげる。

 そこに白ワインを入れ、更にアサリ、ミニトマト、マッシュルーム、ブラックオリープ、ニンニク、水を加え、蓋をして5分程、蒸し焼きにする。

 

 アサリが開いたタイミングに、蓋を開けて味見を行う。

 すると少々塩気が足りないように感じられたので、アンチョビを加えて味を整えてやる。



 うん、我ながら中々いい出来だ。



 迷宮内で何を呑気な、と思うかもしれないが、食事はストレス発散という面において非常に重要だ。

 少なくとも俺にとってはそうだ。

 ならば、こういうストレスフルな環境でこそ上手い食事を食べたいと考えるのは自然なのだ。



「……美味しいわね。何よりこの煮汁の味が素晴らしいわ……」



 その言葉はお世辞では無いらしく、エイミーの皿の盛られたアクアパッツァが見る見るうちに消えていく。



「たしかに美味しいけど、ねぇ、なんでイタリア料理なの?」



 ツバキはどうやら日本食を期待していたらしく、若干不満気だ。



 美味しけりゃ、別にいいだろうに……。



「コウヤ様は、ひょっとして、元は料理人だったのですか?」



 リーゼが何かズレた事を聞いて来るが、料理の腕を褒められて悪い気はしない。



「単なる学生だったよ。料理はまあ、趣味……みたいなもんかな?」



 親は居ないし、爺は料理などするタイプでは無かったので、必然調理場に立つ機会は多かったのだ。

 まあ今の時代は、ネット環境さえあれば、レシピも簡単に調べられるし、素人でもある程度までなら料理の腕を磨く事は容易なのだ。

 ちなみに、今回作ったアクアパッツァもスマホでレシピを見ながら作ったものだ。



「それでこれ程の腕前をお持ちとは……。日本とは凄い国なのですね」



 ……日本にいた頃の思い出にロクなのが無いせいか、そんな事を考えた事が無かったが、今思えば確かに凄い国だったのだと思う。

 孤児院の建屋建築の時の技術も日本のモノだしな。あれは本当に凄かった。

 

 そういえば、斉藤さんはどうしているだろうか。

 一時は頻繁に連絡を交わしていたが、爺がこちらにいる可能性が発覚してからは、やり取りはたまにメールするくらいに留めて、距離を取ることにしていたのだ。だが最近では、そのメールすらろくに出来てはいない。 

 時間が空いた時でも、メールくらい送るとしよう。



 食事を終えた俺達は、濡れタオルで身体を拭いたり、軽く雑談をしたりした後、各々テント内へと向かう。

 

 寝袋に入り、目を瞑りながら明日の探索へと思いを馳せているうちに、気が付けば俺の意識は眠りに落ちていたのだった。
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