86 / 92
#86
しおりを挟む
爺の頼みを受けて俺達は、神々の地を一度後にし、下界へと戻って来た。
「我々は一旦魔王国へと戻る。事が事だけに、息子たちにも協力を仰がねばならんからな」
ナイトレインはそう言って、魔王国へと帰っていった。
「わたくしも帝国に戻ります。ツバキとサトルを護衛にお借りしてもいいでしょうか?」
「ああ、連れてけ」
リーゼもルーシェリア帝国へと一旦戻るようだ。
「エイミーはどうするんだ?」
「私は、先代様との連絡を任されてるから、あなたについていくわよ」
という訳で、俺はエイミーを連れて孤児院へと帰還した。
◆
「エイミー、少し休んだら、トラバントの所に交渉に行ってくれないか?」
「……そうね。別に構わないわよ」
「すまん、助かる」
エイミーに教国との交渉は、投げる事にする。
俺は俺にしか出来ない事をやらないとな。
「しばらく俺は部屋に籠るから、食事とかは気にしないでくれ」
リズリアにそう伝え、俺は自室へと籠る。
そうして〈電脳網インターネット接続〉のギフトの力でPCを召喚する。
いつもなら、ネットを覗くのはスマホだが、今回は色々と書き込む必要がありそうなので、PCだ。
「さてと、どうするか……」
俺が爺に依頼されたのは、日本、いや地球の連中に対し、協力を要請する事だ。
今俺がいる世界と、地球のある世界をゲートで繋ぐ為の下準備に、あちらの人間の協力が必要不可欠なのだ。
だが、現在あちらと連絡を取れるのは、俺のみ。
爺も以前は出来たらしいのだが、現在は能力の大半を世界間ゲートの作成に割いているとかなんとかで、出来ないらしいのだ。
「とりあえずは事情を理解してくれそうな、斉藤さんに連絡するか……」
こうなる事を予想していた訳ではないが、少し前からメールでの連絡を再開していたのは幸いだった。
長いこと連絡の途切れていた相手に、突然コンタクトを取るのは結構勇気がいるからな……。
緊急とまではいかないが、あまりのんびりともしていられないので、メールではなく、アプリ経由でテキストチャットを送る。
すると、すぐさま反応があった。
『こちらでの連絡とは珍しいですね。何かありましたか?』
察しが良くて助かる。
『ちょっと急ぎの用があるので、通話大丈夫ですか?』
それに対し了承の返事が来たので、俺は通話を発信する。
「こちらでは久しぶりですね、虹夜様。どういったご用件でしょうか?」
それに対し、俺は爺と出会った事、爺から頼まれた依頼などについて語る。
「成程。状況は大体理解しました。白夜様には何かとお世話になっていますし、御依頼頂ければお手伝いするのは構いませんよ」
やはり金はちゃんと取るらしい。まあそれは構わないけどな。
「ですが、私どもだけでは少々手が足りませんね」
「えっと確か、シロイヌナハトとかいう運送会社の方には、応援頼めないんですかね?」
「……ああ。あちらは看板が違うだけで、人員はほとんど共通ですからあまり意味がありませんね」
どうも、日本で異世界アムパトリ絡みの事業をしていたのは、実は全部斉藤さんとその仲間の皆さんだったらしい。
一々名前変えてるから分かりづらいんだよ……。
「なんでその事を隠してたんですか?」
「いやー、白夜様がそちらで虹夜様と会うまでは、黙っていて欲しいと頼まれていまして……。申し訳ありません」
どうやら爺のせいらしい。まったく……。
「なにぶん異世界絡みですから、他の方に仕事を振る訳にも参りませんし……」
まあ魔力が云々、異世界が云々なんて話を受ける人間は普通、居ないだろうな。
「そうですか……。不足している人手については、こっちでも何か手が無いか考えてみます。とりあえずやって欲しい事のリストを、後程メールしますので、そちらで受け持てそうな箇所にチェックを入れて連絡を下さい。それと料金の見積もりも」
「承りました。では早速、他のメンバーのスケジュールチェックなどもありますので、これで失礼しますね」
「ええ、急な話ですいませんが、どうぞ宜しくお願いします」
とりあえず、これである程度は片付くだろうが、他にも手伝ってくれる人員を探さないとな。
だが、日本にいた頃の俺には、こんなことを頼めそうな友人知人はいない。
……自分で言ってて泣けてくるな。
「他に話せる人間と言えば……」
イチかバチか、ダメ元で奴らに頼んでみるか。
正直、自分でも馬鹿げた案だと思うが、他に手が浮かばない。
別に頼んで断られても、大した不利益がある訳でもないし。
そう自分に言い聞かせて、再び俺はPCへと向かうのだった。
「我々は一旦魔王国へと戻る。事が事だけに、息子たちにも協力を仰がねばならんからな」
ナイトレインはそう言って、魔王国へと帰っていった。
「わたくしも帝国に戻ります。ツバキとサトルを護衛にお借りしてもいいでしょうか?」
「ああ、連れてけ」
リーゼもルーシェリア帝国へと一旦戻るようだ。
「エイミーはどうするんだ?」
「私は、先代様との連絡を任されてるから、あなたについていくわよ」
という訳で、俺はエイミーを連れて孤児院へと帰還した。
◆
「エイミー、少し休んだら、トラバントの所に交渉に行ってくれないか?」
「……そうね。別に構わないわよ」
「すまん、助かる」
エイミーに教国との交渉は、投げる事にする。
俺は俺にしか出来ない事をやらないとな。
「しばらく俺は部屋に籠るから、食事とかは気にしないでくれ」
リズリアにそう伝え、俺は自室へと籠る。
そうして〈電脳網インターネット接続〉のギフトの力でPCを召喚する。
いつもなら、ネットを覗くのはスマホだが、今回は色々と書き込む必要がありそうなので、PCだ。
「さてと、どうするか……」
俺が爺に依頼されたのは、日本、いや地球の連中に対し、協力を要請する事だ。
今俺がいる世界と、地球のある世界をゲートで繋ぐ為の下準備に、あちらの人間の協力が必要不可欠なのだ。
だが、現在あちらと連絡を取れるのは、俺のみ。
爺も以前は出来たらしいのだが、現在は能力の大半を世界間ゲートの作成に割いているとかなんとかで、出来ないらしいのだ。
「とりあえずは事情を理解してくれそうな、斉藤さんに連絡するか……」
こうなる事を予想していた訳ではないが、少し前からメールでの連絡を再開していたのは幸いだった。
長いこと連絡の途切れていた相手に、突然コンタクトを取るのは結構勇気がいるからな……。
緊急とまではいかないが、あまりのんびりともしていられないので、メールではなく、アプリ経由でテキストチャットを送る。
すると、すぐさま反応があった。
『こちらでの連絡とは珍しいですね。何かありましたか?』
察しが良くて助かる。
『ちょっと急ぎの用があるので、通話大丈夫ですか?』
それに対し了承の返事が来たので、俺は通話を発信する。
「こちらでは久しぶりですね、虹夜様。どういったご用件でしょうか?」
それに対し、俺は爺と出会った事、爺から頼まれた依頼などについて語る。
「成程。状況は大体理解しました。白夜様には何かとお世話になっていますし、御依頼頂ければお手伝いするのは構いませんよ」
やはり金はちゃんと取るらしい。まあそれは構わないけどな。
「ですが、私どもだけでは少々手が足りませんね」
「えっと確か、シロイヌナハトとかいう運送会社の方には、応援頼めないんですかね?」
「……ああ。あちらは看板が違うだけで、人員はほとんど共通ですからあまり意味がありませんね」
どうも、日本で異世界アムパトリ絡みの事業をしていたのは、実は全部斉藤さんとその仲間の皆さんだったらしい。
一々名前変えてるから分かりづらいんだよ……。
「なんでその事を隠してたんですか?」
「いやー、白夜様がそちらで虹夜様と会うまでは、黙っていて欲しいと頼まれていまして……。申し訳ありません」
どうやら爺のせいらしい。まったく……。
「なにぶん異世界絡みですから、他の方に仕事を振る訳にも参りませんし……」
まあ魔力が云々、異世界が云々なんて話を受ける人間は普通、居ないだろうな。
「そうですか……。不足している人手については、こっちでも何か手が無いか考えてみます。とりあえずやって欲しい事のリストを、後程メールしますので、そちらで受け持てそうな箇所にチェックを入れて連絡を下さい。それと料金の見積もりも」
「承りました。では早速、他のメンバーのスケジュールチェックなどもありますので、これで失礼しますね」
「ええ、急な話ですいませんが、どうぞ宜しくお願いします」
とりあえず、これである程度は片付くだろうが、他にも手伝ってくれる人員を探さないとな。
だが、日本にいた頃の俺には、こんなことを頼めそうな友人知人はいない。
……自分で言ってて泣けてくるな。
「他に話せる人間と言えば……」
イチかバチか、ダメ元で奴らに頼んでみるか。
正直、自分でも馬鹿げた案だと思うが、他に手が浮かばない。
別に頼んで断られても、大した不利益がある訳でもないし。
そう自分に言い聞かせて、再び俺はPCへと向かうのだった。
62
あなたにおすすめの小説
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。
課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」
強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!
やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!
本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!
何卒御覧下さいませ!!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる