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27話目 決別の言葉
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ケイトの父親が現れたら、サムフォード家として歓迎する、と決まった。
つまり、ケイト一人の状況では会わせない、となった。
一介の使用人の家族に会うのに、誰かが一緒にいるのは変じゃないかという話になったが、それならば、とフォレスかジョシアがケイトの夫のふりをすることになった。
他に策があるのかと言われ、ケイトも抵抗のしようがなかった。
どうやら、ガストンとサリーの事件は、サムフォード男爵家と無関係、ではない、というのがミアとレインそしてキャロラインの考えだった。
そのため、考えたくはないが、ガストンとの繋がりが考えられるケイトの父親もどういう意図があるかわからないため、気を付ける他はないだろう、となったのだ。
ケイトとしても、自分の身内が、サムフォード家に害を与える立場にいるとは考えたくもなかったが、もう15年も会っていない、しかも何を考えているか理解できない父親のことを擁護することもできなかった。
疑わなければならない相手が実の父親であると言うことが心苦しかった。
移動手段を考えれば、手紙だけが早く来る、と言うわけではない。
だが、いつ来るともわからない望まない相手を待つ時間は、ケイトにとってはいやな時間になった。
勿論、くよくよと嘆いているわけではない。だが、ふとした瞬間に、重苦しいものが胸に乗る日々は、あまり気持ちのいいものではなかった。
早く父親が現れて、ガストンたちとは無関係だと証明して欲しかった。そして、ケイトに危害を与えずに王都を去って欲しかった。
**
ケイトが父親であるダンの来訪を覚悟して4日目だった。
ダンは旅にやつれた格好で、昼下がりのサムフォード家に訪ねて来た。ケイトは元より、ミアもレインも、真正面から訪ねて来たことにホッとしていた。
だが、険しい表情のダンに、15年ぶりの再会は、感動的と言えるものにはなりそうにはないと対応したフォレスは思った。
アルフレッドを抱きホールに現れたケイトを冷たく見るダンは、とても子供を愛する父親とは思えなかった。
「お久しぶりです。父さん」
バシン。
ケイトの頬に瞬間的な熱が起こる。こうやってダンに頬をぶたれること自体も初めてかもしれない。それほどケイトは父親との距離があった。ジンジンとした痛みをそのままに、ケイトは静かな目でダンを見た。
「なぜ逃げた」
15年前のことを責められているのに気付いて、ケイトはおかしくなった。勿論笑えそうにもなかったが。
「……自分が売られそうだから逃げたことの、何が悪いんですか?」
ケイトの声が震える。
ケイトが逃げた行為は、責められることではない。それはケイト自身がよくわかっている。むしろ、そのことを責めるダンが哀れになった。
「子供は親に従うものだ」
淡々と告げるダンは、そのことを何も疑っていないように思える。本気で言っているのだ。
「……子供に愛情も向けようともしないで、よく親だと言い張れますね」
声は震えたままだが、その声は強い。ケイトの気持ちが溢れていた。
「子供は親の言うことを聞いておけばいい。……支度をして来い。町に帰るぞ」
ダンの有無を言わせぬ言葉に、ケイトは首を横にふった。
「私の居場所はここです。あの町にはもう帰りません」
ケイトの気持ちは決まっている。だが、実の父親に向かって決別を宣言していることに、ケイトの胸は苦しくなる。愛しているとも思ってもいない父親だったが、それでもケイトのたった一人の父親だ。こうやって決別の言葉を言わなければならない状況になど、なりたいわけがない。
「俺を見捨てるのか」
「私を先に捨てたのは、あなたじゃないですか!」
身勝手だ。ケイトにはその気持ちしかわかなかった。
「失礼します。ここで話すことでもありませんし、こちらにどうぞ」
間に入ってきたのは、フォレスだった。
「……その子供の父親か」
忌々しそうに告げる父親に、フォレスは首を横にふった。
「私ではありません。こちらへ」
どうやらケイトの夫役は、ジョシアがすることになったらしい。ケイトがフォレスの後ろに続いて歩き出すと、ダンも荒々しい足音を立ててその後ろに続く。向かっているのは、使用人用の食堂だ。
ケイトは、アルフレッドを抱きしめる。
ケイトだけではなくアルフレッドにまで冷たい視線を向けるダンに、哀しみしか湧いて来なかった。
つまり、ケイト一人の状況では会わせない、となった。
一介の使用人の家族に会うのに、誰かが一緒にいるのは変じゃないかという話になったが、それならば、とフォレスかジョシアがケイトの夫のふりをすることになった。
他に策があるのかと言われ、ケイトも抵抗のしようがなかった。
どうやら、ガストンとサリーの事件は、サムフォード男爵家と無関係、ではない、というのがミアとレインそしてキャロラインの考えだった。
そのため、考えたくはないが、ガストンとの繋がりが考えられるケイトの父親もどういう意図があるかわからないため、気を付ける他はないだろう、となったのだ。
ケイトとしても、自分の身内が、サムフォード家に害を与える立場にいるとは考えたくもなかったが、もう15年も会っていない、しかも何を考えているか理解できない父親のことを擁護することもできなかった。
疑わなければならない相手が実の父親であると言うことが心苦しかった。
移動手段を考えれば、手紙だけが早く来る、と言うわけではない。
だが、いつ来るともわからない望まない相手を待つ時間は、ケイトにとってはいやな時間になった。
勿論、くよくよと嘆いているわけではない。だが、ふとした瞬間に、重苦しいものが胸に乗る日々は、あまり気持ちのいいものではなかった。
早く父親が現れて、ガストンたちとは無関係だと証明して欲しかった。そして、ケイトに危害を与えずに王都を去って欲しかった。
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ケイトが父親であるダンの来訪を覚悟して4日目だった。
ダンは旅にやつれた格好で、昼下がりのサムフォード家に訪ねて来た。ケイトは元より、ミアもレインも、真正面から訪ねて来たことにホッとしていた。
だが、険しい表情のダンに、15年ぶりの再会は、感動的と言えるものにはなりそうにはないと対応したフォレスは思った。
アルフレッドを抱きホールに現れたケイトを冷たく見るダンは、とても子供を愛する父親とは思えなかった。
「お久しぶりです。父さん」
バシン。
ケイトの頬に瞬間的な熱が起こる。こうやってダンに頬をぶたれること自体も初めてかもしれない。それほどケイトは父親との距離があった。ジンジンとした痛みをそのままに、ケイトは静かな目でダンを見た。
「なぜ逃げた」
15年前のことを責められているのに気付いて、ケイトはおかしくなった。勿論笑えそうにもなかったが。
「……自分が売られそうだから逃げたことの、何が悪いんですか?」
ケイトの声が震える。
ケイトが逃げた行為は、責められることではない。それはケイト自身がよくわかっている。むしろ、そのことを責めるダンが哀れになった。
「子供は親に従うものだ」
淡々と告げるダンは、そのことを何も疑っていないように思える。本気で言っているのだ。
「……子供に愛情も向けようともしないで、よく親だと言い張れますね」
声は震えたままだが、その声は強い。ケイトの気持ちが溢れていた。
「子供は親の言うことを聞いておけばいい。……支度をして来い。町に帰るぞ」
ダンの有無を言わせぬ言葉に、ケイトは首を横にふった。
「私の居場所はここです。あの町にはもう帰りません」
ケイトの気持ちは決まっている。だが、実の父親に向かって決別を宣言していることに、ケイトの胸は苦しくなる。愛しているとも思ってもいない父親だったが、それでもケイトのたった一人の父親だ。こうやって決別の言葉を言わなければならない状況になど、なりたいわけがない。
「俺を見捨てるのか」
「私を先に捨てたのは、あなたじゃないですか!」
身勝手だ。ケイトにはその気持ちしかわかなかった。
「失礼します。ここで話すことでもありませんし、こちらにどうぞ」
間に入ってきたのは、フォレスだった。
「……その子供の父親か」
忌々しそうに告げる父親に、フォレスは首を横にふった。
「私ではありません。こちらへ」
どうやらケイトの夫役は、ジョシアがすることになったらしい。ケイトがフォレスの後ろに続いて歩き出すと、ダンも荒々しい足音を立ててその後ろに続く。向かっているのは、使用人用の食堂だ。
ケイトは、アルフレッドを抱きしめる。
ケイトだけではなくアルフレッドにまで冷たい視線を向けるダンに、哀しみしか湧いて来なかった。
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