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第7章
第67話
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「拝啓 師匠へ
師匠。
この様な手紙でのご挨拶になってしまい申し訳ありません。
この手紙をご覧になる頃、僕は生贄となった後でしょう。
この生贄という儀式について、すでにナガルス様からお聞きになっているかと思います。
どうかナガルス様や一族の皆を責めないであげてください。
生贄となるまで、どうしても普通の生活がしたくて、僕のわがままで口止めをお願いしていました。
皆、僕の願いを、聞いてくれました。
師匠と過ごした日々は僕の人生の中でとても楽しかったです。
今までに感じたことのない、心地よい気分でした。
僕の人生は、生まれた時に決まっていました。
蠢く者を封印するための魔力の門としての人生が、決まっていました。
物心付く頃から僕は、欲しい物は全て手に入り、誰でも願いを聞いてくれる、そんな世界で生きていました。
しかしそのうち気付きました。
彼らは皆、いつも僕を憐れんだ目で見ており、母上は一度も僕と話さない事に。
父上はいつも、申し訳なさそうに僕と話す事に。
どうせ僕は死ぬから、可哀想だから、せめて好きなことをして死んでもらおうって、そう思ってたんだと思います。
僕のことを好きだから、愛しているから優しかった訳じゃ無かったんです。
ただ、哀れんでいただけだったんです。
そこから僕は色々としました。
優秀な息子になろうと魔術や礼節を学んだり、叱られようと悪戯の限りを尽くしたり。
今になって思えば、普通に父や母と、普通の家族のようになりたかったんだと思います。
何でも願いが叶う醜い王様になっていた僕は、いつも親に叱られてる平民の子に特にちょっかいをかけていました。
きっと彼らが羨ましくてしょうがなかったんでしょう。
当時の僕は気付けませんでしたが。
それでも僕は、平民の子達に悪戯し続けました。
今思えばそれはもう、いじめだと分かりますが、僕は友達と遊んでいたつもりでした。
皆で仲良く、楽しんでいると思っていたのです。
同じ様な分家の子供達は、僕に決して近づかなかったから、平民の子しか相手をしてくれなかったから、もしかしたらそれで悪戯に拍車がかかってしまったのかもしれません。
いや、それも言い訳ですね。
もちろん、平民の子は僕を友達とは思ってなかったでしょう。
でも僕は友達だと思っていました。彼らしか僕と話してくれなかったからです。
無茶な命令をして、困る所をみて皆で笑うことが友達同士だと本気で信じていたのです。
彼らはいつも笑っていましたが、心から楽しんではいなかったのでしょう。
師匠やユーキと広場で祭りを楽しんでいた時は、皆が心の底から楽しそうでした。
あの時の彼らの様子を見れば、僕にいじめられた彼らがどれ程苦しんでいたかが分かります。
本当に笑った時の笑顔というのはあれほど気分が良いものなんですね。
笑ってる本人も、その周りにいる人達も。
でも僕が彼らの本当の気持ちに気付いたのは別の出来事からでした。
ある日聞いてしまったのです。
彼らが彼らの親に言い聞かせている所に居合わせてしまったのです。
彼は生贄となる憐れな子供なのだから言うことを聞いて上げなさい、と。
きっと彼らは親からいつも言い含められていたのでしょう。
彼らはきっとある意味生贄にされていたのです。それでも彼らは僕から逃げませんでした。
他の子が生贄にされるのを防ぐために、彼らの身を盾にして他の子を守っていたのです。
僕という悪から。
生贄になることが嫌で傷つけていた友達は、僕のように生贄となっていました。
僕は嫌で嫌でしょうがなかったのに、彼らはそれに耐えていたんです。
僕はその当時、それに気付いた訳ではありませんでしたが、何故かたまらなく恥ずかしくなり家に逃げ帰りました。
ひとしきり泣いた後、僕を待っていたのはいつもの申し訳なさそうに話す父と、僕を一瞥もしない母でした。
僕が泣いても喚いても、どんなに苦しんでも、僕の周りは変わらないとわかりました。
僕はただ、死ぬために生かされているのだとわかりました。
僕は全てが嫌になって、ハルダニヤ国へ攻め入る際の軍の兵糧に紛れ込み、地上に逃げ出しました。
逃げること以外、僕のこの臆病な自尊心を守る方法が思いつかなかったのです。
地上へ逃れるのは上手く行きました。
僕らスレイマン第10分家は、隠形魔法の開発で分家創立しました。
ですので、親から際限なく甘やかされていた僕でも隠形魔法の教育だけは叩き込まれました。
家庭教師からでしたが。
それでも隠形魔法についてだけはかなりの腕前になったと思っています。
まるでこの時のために用意されていたかのように、全てが上手く行きました。
逃げ切れたことに喜んでいた僕は、地上で飛び回って、魔法で撃ち落とされ、奴隷商人に捕まりました。
ナガルス族の奴隷とは珍しかったのでしょう。
あの貴族に買われた後、殺されはしない程度に僕は生かされていました。
そこで僕は人族のナガルス族に対する憎しみの深さを知りました。
ナガルス族が人族を恨んでいたのは知っていたのに、彼らが僕らを恨んでいるとは分かっていませんでした。
考えてみれば当たり前のことなのに、その当然の事にすら気付け無いほど、僕は愚かでした。
そこから長い奴隷生活が始まりました。
長い長い、奴隷生活でした。
寝てる時は叩き起こされることに怯え、起きてる時は骨を折られることに怯えていました。
明日食べるご飯は家畜が食べる餌だったら嬉しいな、と毎晩寝る時に夢に見ました。
長い奴隷生活では、過去を思い返すことだけが僕の救いでした。
それだけしか僕に出来ることはなかったからです。
ただ人族の身近で暮らすようになって、彼らの考えを知って、彼らの立場に立って考えるようになった頃、過去の友達の立場になって考えることも出来るようになりました。
友達をいじめていたと気づいたのもこの頃でした。
あの子達が本当は僕のことなんか好きでもなんでもなかったこと。
友達とも何とも思っていなかったこと。
父上と母上は僕に興味なんかなかったこと。
奴隷生活の中で、僕はそう思うようになりました。
日々人族とナガルス族への恨みと憎しみが溜まっていきました。
そしてある時、何も感じなくなりました。
そこからの記憶は朧げです。
ドロドロとした水の中にいるような気もしたし、空気の少ない地中にいるような気もしていた気がします。
良かったことと言えば、殴られても怪我しても、そんなに痛くなかったことでしょうか。
どれほど経ったのか、それは覚えていません。
ただ、背が少し伸びたと言われたので、多分2,3年は経ってたのでしょう。
そうしていつものようにただただ町中で殴られていた時、師匠が助けてくれました。
記憶があやふやで、何も感じず、何を喋っているかも分かっていませんでしたが、その日からの記憶は少しずつですが思い出せます。
少しずつ、周りの水が薄くなってきたような気がしました。
少しずつ、昔を思い出しては懐かしいと思えるようになりました。
ですが感情が戻ってきたことで、苦しみも戻ってきました。
もしかしたら助かるかもしれない。
そんな希望が僕に生きる活力と、苦しみを与えました。
いえ、決して師匠を恨んでいるわけではないのです。それは誤解しないで下さい。
でももし助からなかったら。そう思うと夜も眠れなかったのは覚えています。
ただ、僕はこの時、大事なことに気付けました。
この苦しみは罰かもしれないと、そう思ったのです。
いままで人を苦しめてきた分が、全て自分に返ってきてるだけなのかもしれないと。
罪を償うために、誰かが与えたものなのだと。
ナガルス族と人族への恨みと憎しみはこの時、なくなりました。
僕が受けた仕打ちは理不尽なものではなく、自身の行いの結果だと分かったからです。
何となく心が晴れやかになった気がしました。
奴隷になって暴力をうけ、とても人ではない扱いを受けていても、少し心が晴れやかになった気がしたのです。
僕は生まれたときからただただ嫌われるためだけの存在ではなかったと。
僕が嫌われてたのは、自分が悪いことをしたからで、僕がもし、この罪を償えばきっと。
この罪を償えば、父上も母上もきっと。
父上と母上と、僕とで本当の家族になることだって出来るかもしれない。
憎しみと恨みにまみれていた僕では欠片も信じることのできなかった光景が、師匠のお陰で幽かな夢として見るくらいなら出来るようになりました。
そして最後、首を切り落とされる寸前まで、その幽かな夢が僕の心を救ってくれたのです。
首を切られる寸前、母上のことを想えたのも、この救いがあったからだと思います。
師匠が僕を助けてくれたあと、更に嬉しいことがありました。
師匠は覚えていらっしゃるでしょうか。
母上と父上が、僕と一緒に師匠に挨拶に行った時のことです。
帰ってきてからも母上は僕を一瞥もしなかったのに、師匠への挨拶の時はいつもの母上と違っていました。
もしかしたらユーキが強く言ってくれたからなのかもしれません。
母上があんなに取り乱したのを僕は初めて見ました。
あの時、あの時僕は分かったのです。
母上は決して僕が嫌いではなかったのだと。
母上は僕にただただ生きて欲しいと願っていただけだということを。
そうすると納得できるところもありました。
おおよそ教育など強要されていなかったのに、隠形魔法だけは特に厳しく教えられた事。
生贄として決して失ってはならない僕を、ありえないほど放任していた事。
過剰なほどに家と外に、僕の居場所がなかった事。
外に僕の居場所を作れなかったのは僕のせいですが、母上があれほど過剰に僕を拒絶していたのは、家に僕の居場所が無かったのは、ひょっとして逃げ出すように仕向けたのではないかという事。
なんの証拠もない話です。
ただ何となくそうではないかと確信しました。
結局僕が、地上から家に戻っても母上に優しくしてもらった覚えはありません。
抱きしめてもらった記憶すら無い。
でも、母上が取り乱した病室から僕の家まで、母上はずっと僕の手を握ってくれました。
ずっとずっと手を握ってくれました。
母上は僕のことを嫌いなんかじゃなかった。
母上はやっぱり優しかった。
手を握って貰えた時間は、凄く短かったけど、人生で一番幸せでした。
この僅かな時間を得るために、残りの僕の人生を差し出すことに何の躊躇いもありませんでした。
この時僕は、生贄となることを決めました。
初めて心の底から生贄となることを決意できました。
それもこれも師匠が僕を助けてくださったからです。
師匠が助けてくれたからこそ、母上を好きになることができました。
母上を救うために、生贄となることを決めることができました。
師匠、すみません。
師匠を助けるなんて言いましたが、実は殆ど言い訳みたいなものです。
師匠の前で格好つけただけでした。
本当は母上に幸せになってほしかっただけでした。
ナガルス様は僕が最後の生贄だと言いました。
この悲しい風習は、僕で最後となるのです。
僕が生贄になった後、母上が生む子供は決して生贄となることは無いのです。
僕の弟や妹が生贄になることは決して。
だから僕は生贄となるのです。
ですから師匠、ナガルス様をナガルス族を恨まないで上げてください。
みんなみんな、僕の母上と同じ辛さを抱えているのです。
だから恨まないで上げてください。
できればどうか、ナガルス族をナガルス様を助けて上げてください。
ナガルス様は誰よりも長く、この風習に苦しんでいるのですから。
ナガルス様の義理の息子である、師匠がどうか。
僕はもう満足しています。
だから皆を助けてあげてください、師匠。
いえ。
いえ、僕にも心残りがありました。
僕がいじめていた平民の子達に伝えてくれませんか。
ごめんなさいと。
彼らには結局、勇気が出なくて会うことができませんでした。
最後になっても、僕は卑怯で臆病者でした。
でもこれくらいきっと許してくれますよね。
あ、それと良かったら僕のポンチョを使ってください。
この手紙を父上に見せれば、きっと渡してくれる筈です。
ナイフはとても綺麗なので最後まで持っていきますが、ポンチョは貴重でしょうから。
それでは師匠、先に向こうで待っています。
ヨボヨボになった師匠と会うのを楽しみにしています。
サイード・スレイマン・ル・アマースト」
…。
サイードは、生贄になることを納得していた…。
彼は、覚悟していた。
…彼の母親が、アンナが俺の事を、俺達の事をあそこまで嫌ってた理由もわかった。
せっかく地上まで息子を逃したのに、余計な事をして連れ帰ってしまったのだから。
いやしかしそうしなければサイードは死んで…。
…。
…いや。
あの貴族は、ナガルス族が俺を探していることに動揺してサイードを殺そうとした。
もしナガルス族が俺を探さなかったら。
俺が奴隷から逃げなかったら。
俺がモニを助けなかったら。
…俺がこの世界に来なかったら。
サイードは死んでいなかった可能性は高い。
魔力の多さが寿命の長さになるとも言っていた。
スレイマン家は魔力が多いと。
ただでさえ魔力の多いナガルス族の中で更に多い魔力を持っているスレイマン家。
きっと皆寿命が長いのだろう。
サイードを奴隷にしていた貴族だっていつかは死ぬ。
奴隷になっても長く生きていれば、逃げるチャンスや開放されるチャンスはあるだろう。
傷ついた心だって時間が癒やしてくれる。
俺とは違って、長い時間が彼にはあるのだから。
百年くらい過ごしていれば、心の病気だって治るだろう。
俺がいなければ、サイードはもっと長生きできた可能性は…十分あった。
ありえないと言えるほどの低い確率じゃないのは間違いない。
…俺は…俺が、余計なことをしたから…。
…いや、まだ遅くはない。
サイードはまだきっと生きていると言っていた。
…まだ遅くない。
…。
…この手紙。
この手紙はスレイマン夫妻に渡そう。
それが良い気がする。
サイードの為に。いや違うな。
サイードが落ちていった時のアンナの姿が頭からこびり付いて離れない。
彼女に…渡してあげたほうが良い気がする。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「ショー…ここがスレイマン家の別邸…。ナガルス総本家に居るときは、分家当主はここにいるはずだから…。」
「ありがとう、モニ。当主に会うための手順とか全然わかんなくてさ。」
「うん…。ねぇ…怒ってる…?…サイードの事言わなくって…。」
「いや、そんな事無い。手紙にも書いてあった。口止めされてたんだろ?…ありがとう、サイードの願いを聞いてくれて。」
「ううん…。生贄に選ばれた子の願いはなるべく聞いてあげるようにしてるの。なんとなく自然と出来た曖昧なもの何だけど、皆そうしてる。…それが良いか悪いか分からないけど、でもやっぱりね…。」
「…そうだな。俺でもやっぱり何でも聞いてあげたと思う。…それ以外に出来ることなんて無いからさ。」
「うん…。結局そのせいで皆腫れ物に触るみたいになっちゃったりね。結局その家の教育方針次第なんだけど…。サイードはスレイマン夫妻の初めての子供でね。サイード以外に子供もいなくて…。」
「…そうか…。」
「本当は当主の子供が生贄に選ばれたからには、当主として立派に務めを果たすことが求められるものでね…。平民の子だったら家族ごと地上に逃げることもあるんだけど、彼らには立場があって…。」
「…そうだよな…。俺達の子供が選ばれたけど、当主の権利を振り回して別の子を生贄に…何てことしたら…。」
「うん…、きっと当主に従う者はいなくなると思う。彼らには分家を治める責任があるから。分家にも沢山の家族と…子供が居るから…。」
「…そうだよな…でも、アンナ・スレイマンは…。」
「そうね…。彼女が…あんなに取り乱しているのは始めて見たわ。当主の妻としてはあるまじき振る舞いだけど…、彼女の気持ちも分かる。そんな風に感じてる人は多いはずよ。…結果的に務めは果たしたわけだしね。」
「そうだな…務めは果たした…。サイードが果たしたんだ。サイードの親が果たした訳じゃない…。」
「…そうね…。サイードは勇敢な子だった。」
そう。
サイードは勇敢だった。
俺よりもきっと。
そして一人だった。
父親と母親にかまってほしいだけの子供だった。
…。
…父親と母親は本当はどう思っていたのか。
…いややめよう。
…サイードがそう信じて生贄になったんだ。
それに生贄を止めようとしたアンナ・スレイマンの態度。
聞くまでもない。
今更聞くのは野暮ってもんだろ。
「おまたせしました。ショー様、シャモーニ様。当主がお待ちです。」
「ええ、行くわ。ショー、いい?」
「ああ…。じゃあ行ってくる。」
「うん。…あまり思いつめないでね。これはナガルス族が抱えてきた問題なんだから。」
「…だったらもう俺の問題だよ。」
「…ありがとう。」
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「…おまたせしました。ショー殿。本日のご用向は…?」
やつれてるな。
確か…ヤフル、ヤフル・スレイマンだったっけか。
サイードの父親。
そりゃ、やつれるよな。当然だよ。
「はい。実は、サイードから手紙を受け取りました。これは僕に宛てられた手紙ですけど…お二人に、いえ、奥様にお渡ししたほうが良いかと思いまして…。」
「…そうですか…手紙を…。世話になった人に手紙を残すとは。…あの子も成長していたのですね。分かりました。妻に渡しましょう。おい。」
「は。ショー様…。」
この部屋に案内してくれた世話人か…。彼がハンナ・スレイマンに届けてくれるんだろう。
「お願いします。」
「…は。」
おお…。結構キビキビ動いてくれるな。
もう足早に…。
「式典では…お見苦しい所をお見せしました。ショー様。」
「いえ、そんな、ヤフル当主。その…見苦しいだなんて…。…むしろサイードが母親に好かれていると分かってよかったです。…それが意図したものであっても嫌われたと思いながら別れるのは、辛いでしょうし…。」
「…なるほど。もうすでにおわかりになっていたのですな。…いやひょっとして手紙に…?」
「ええ。サイードからの手紙にはわざとそうしているのではないかと書いてありました。確信している訳ではありませんでしたが、…満足そうでした。」
「…そうですか。そうか…。あの子は人の気持ちを慮れる様な子では無かったのです。そのように…甘やかしてしまったのですが、そうですか…。あの子も成長していたのですね。…いやそれは式典からすでに分かっておりましたな。」
「…ええ。台座での彼は…立派でした。とても。」
「そう…立派でしたな。そのまま逃げてくれればと思っていましたが、まさか成長して帰ってくるなど。…悲しいのは間違いありませんが、どこか清々しい気もあります。よくぞやったと。流石私の息子だと。…私の…。」
「…。」
「そう、結局は悲しいだけでは無いのですよ。私は。まさに子を想い悲しみに暮れるのが正しき親であるのは間違いないでしょう。…そういった気持ちが無いわけではない。しかし同時に、これで当主の務めを果たせた。これで私の地位は安泰だ。そう感じる自分が…無いとは言えないのです。」
「…それは…。…人間ですから。そういった事はあると思います。…自分の心と身体は、自分の思う通りに動いてくれないものです。」
「ハッハッハ。ショー殿はお優しいですな。それに、そうですか…身体だけでなく心も、ですか。生半な経験ではその様な言葉は出てこないものです。」
「…。」
「…しかし妻には分かっているのでしょうな。私が腹ではほっとしていることを。あれから顔も合わせてくれません。…これほど辛いものだったとは…。サイードの辛さはどれ程のものだったことでしょう。」
「奥様がサイードと話さなかったのはやっぱり…。」
「…あれは情が深く、気性が荒い質でしてなぁ。こうと決めたらもう全く動かないのですよ。…サイードが生まれてすぐ、次の生贄候補に選ばれた時は泣き叫んで抵抗しましてなぁ。…ただ私の立場も慮ってくれましてな。その折衷案の様な形であの様な態度になったのです。」
「…折衷案…ですか?」
「ええ。分家当主としては権力を振りかざして息子を特別に助けるわけにはいかない。しかし息子には生きていて欲しい。ならば…自分で逃げ出せばいい、と。」
「…でもサイードが逃げたら責任を問われるのでは無いのですか?」
「ええ、ええ。もちろん、責任は問われるでしょう。だが息子を逃した、と息子が逃げたでは天と地ほどに印象が違います。前者は不正を為す悪、後者は子供一人管理できないバカ親。…当主の座を明け渡すほどでは無いでしょうな。…繰り上がりで次の生贄となる家には一生恨まれるでしょうが…。」
「…あれは私の立場も考えて最善の行動を取り続けてくれたのです。息子を抱きしめたいのを堪えて、息子と私の最大限の幸福を選んでくれた。にも関わらず私はほっとしている。…妻は私に幻滅しているんでしょうな。」
「…。」
「…いえ、失礼…うん?」
ノックか?
誰だ?
「…ハンナです。失礼いたします。」
「ハンナ…。」
「…。」
「…。」
気まずい…。
「…ショー様。」
「あ、ええ…はい。」
「…今ままでの数々の無礼。大変失礼しました。」
「いえ…。どうぞお気になさらず。」
「…手紙も…ありがとうございました。」
「いえ…。なんとなく奥様に読んでいただいたほうが良いような気がしまして…。」
「…ええ。…こちら、サイードのポンチョとなります。よろしければ…。息子が望んだことですので。」
「…ありがとうございます。」
「…。」
「…。」
「…それでは、ここで失礼します。」
「…ショー様。」
「はい?」
「…サイードを、息子の命を助けていただき…ありがとうございます。…この御恩は一生、忘れません。」
「…いえ、そんな…。」
彼女は、震える声で頭を下げてる。
きっとまだ辛いんだ。
それでも俺に挨拶をするために顔を出してくれた。
早く帰ってあげよう。
彼女の弱さを見るのは俺の役目じゃない。
「ショー殿。」
「はい?」
「なにかお困りのことがありましたらスレイマン家にお声がけください。必ずお力になりましょう。」
「…ありがとうございます。…もし、もしサイードを救い出すことが出来たなら。…その時は普通の家族のようにしてあげてください。」
「…言われるまでもありません。息子が帰ってくるならば…我らスレイマン家は須らくあなたに忠誠を捧げることでしょう。」
「…それでは、失礼します。」
「ええ。シャダツ。ショー殿をご案内しろ。」
「は。こちらです。ショー様」
さっき手紙を届けてくれた人か。
しっかし広い家だな。
偉い人の家は何でこんなに広いのか。家の中で疲れない?
贅沢な…。
「ショー様…。」
「ん?えっと…シャダツさん…でしたっけ?」
「シャダツ・シナンと申します。どうぞ、シャダツとお呼びください。」
「はぁ…いえ、その、何でしょう?」
「…。」
何だい。
こういった老紳士に黙られるのも中々怖いな。
その割には背中の羽がワサワサしてるし。
しかし不思議な服だよなぁ。
上から被さるように着てる。
マントに近いと言うかなんというか。
マントに縦に切れ目が入っててそこに自分の羽を通す。
下着も上着もそういう構造だから、ぶっちゃけ羽を動かすと素肌が見えることがある。
だからか、大抵のナガルス族は首飾り…というか羽飾り…みたいなものを羽の根本に掛けている。
金銀細工の場合もあれば、革、布を折り重ねてる場合もあるし、鳥の羽を数珠つなぎにしたものを掛けてる場合もある。
ちょっとかっこいいんだよね。
…このシャダツさんは羽と背中の付け根を黒い包帯の様なもので巻いている。
だから素肌も見えないし、何よりきっちりしてる。
…正直羽が動く時にチラチラと肌が見えるとなんというか…ちょっと下品に感じる。
でもこのシャダツさんはそんな事無い。
普通は色々なものを折り重ねて飾ることで素肌を隠してるけど、きっちりぐるぐる巻にして素肌を隠してるからよりスマートに見えるっていうか。
なんかスーツを着てるみたい。
これって下着みたいなもんだろうし、毎朝巻くのは大変だろうな…。
性格もかなりかっちりしてるってのがなんとなく分かるよ。
…だから黙られると怖いんですけど。
「…私はサイード様の家庭教師をしておりました。…教えたのは隠形魔法だけですが…。」
「あ…そうですか…サイードも隠形魔法だけは特に厳しく教えられたと…。」
「そうですな。それだけは必ず習得させるようにと仰せつかっておりましたので…。」
「…。」
「…サイード様は…憐れな子供でした。…いつも父と母の関心を引くことだけを考えておりました。それが決して報われることなど無いのにです。」
「…。」
「おおよそ、子供らしさとは無縁の生活でした。子供のように笑い、遊び、健やかに…過ごすことなど出来なかったのです。」
「そう…でしょうね。」
「…憐れに思いましてな。仰せつかってる以上に世話を焼き…甘やかしてしまいました。それが分を超えたものであることは分かっていましたが…。」
「…。」
「ショー様…。私がお伝え出来なかった事を、ショー様は伝えられた。…ただ、ただどうしても…サイード様にもう一度お会いしたい。…私がお教えできなかったことをお教えしたいのです。」
「…。」
「身勝手な願いだと分かっております。しかしどうか…どうか…サイード様をお救いください。そのためであれば、この老骨を惜しむことなどありません…。…どうか…。」
「…出来るだけを尽くします…。」
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「…どうだった…?」
「うん。手紙は渡せたよ。」
「そう…。」
「…モニ。俺はこの戦いに参加する。…戦うための訓練をしたい。本格的な鍛錬をお願いしたいんだ。」
「…わかった。心当たりをあたってみる。…ありがとう。」
「まぁ、モニが参加する時点で俺も最初から参加するつもりだったし。ちょっと理由が増えただけだからさ。」
「…ふふ…。そうね。ショーはそういう人だもんね。」
まぁね。
だけど…出来れば、いや絶対にモニには危険な事をしてほしくない。
なんとか…俺の力だけでなんとか…。
師匠。
この様な手紙でのご挨拶になってしまい申し訳ありません。
この手紙をご覧になる頃、僕は生贄となった後でしょう。
この生贄という儀式について、すでにナガルス様からお聞きになっているかと思います。
どうかナガルス様や一族の皆を責めないであげてください。
生贄となるまで、どうしても普通の生活がしたくて、僕のわがままで口止めをお願いしていました。
皆、僕の願いを、聞いてくれました。
師匠と過ごした日々は僕の人生の中でとても楽しかったです。
今までに感じたことのない、心地よい気分でした。
僕の人生は、生まれた時に決まっていました。
蠢く者を封印するための魔力の門としての人生が、決まっていました。
物心付く頃から僕は、欲しい物は全て手に入り、誰でも願いを聞いてくれる、そんな世界で生きていました。
しかしそのうち気付きました。
彼らは皆、いつも僕を憐れんだ目で見ており、母上は一度も僕と話さない事に。
父上はいつも、申し訳なさそうに僕と話す事に。
どうせ僕は死ぬから、可哀想だから、せめて好きなことをして死んでもらおうって、そう思ってたんだと思います。
僕のことを好きだから、愛しているから優しかった訳じゃ無かったんです。
ただ、哀れんでいただけだったんです。
そこから僕は色々としました。
優秀な息子になろうと魔術や礼節を学んだり、叱られようと悪戯の限りを尽くしたり。
今になって思えば、普通に父や母と、普通の家族のようになりたかったんだと思います。
何でも願いが叶う醜い王様になっていた僕は、いつも親に叱られてる平民の子に特にちょっかいをかけていました。
きっと彼らが羨ましくてしょうがなかったんでしょう。
当時の僕は気付けませんでしたが。
それでも僕は、平民の子達に悪戯し続けました。
今思えばそれはもう、いじめだと分かりますが、僕は友達と遊んでいたつもりでした。
皆で仲良く、楽しんでいると思っていたのです。
同じ様な分家の子供達は、僕に決して近づかなかったから、平民の子しか相手をしてくれなかったから、もしかしたらそれで悪戯に拍車がかかってしまったのかもしれません。
いや、それも言い訳ですね。
もちろん、平民の子は僕を友達とは思ってなかったでしょう。
でも僕は友達だと思っていました。彼らしか僕と話してくれなかったからです。
無茶な命令をして、困る所をみて皆で笑うことが友達同士だと本気で信じていたのです。
彼らはいつも笑っていましたが、心から楽しんではいなかったのでしょう。
師匠やユーキと広場で祭りを楽しんでいた時は、皆が心の底から楽しそうでした。
あの時の彼らの様子を見れば、僕にいじめられた彼らがどれ程苦しんでいたかが分かります。
本当に笑った時の笑顔というのはあれほど気分が良いものなんですね。
笑ってる本人も、その周りにいる人達も。
でも僕が彼らの本当の気持ちに気付いたのは別の出来事からでした。
ある日聞いてしまったのです。
彼らが彼らの親に言い聞かせている所に居合わせてしまったのです。
彼は生贄となる憐れな子供なのだから言うことを聞いて上げなさい、と。
きっと彼らは親からいつも言い含められていたのでしょう。
彼らはきっとある意味生贄にされていたのです。それでも彼らは僕から逃げませんでした。
他の子が生贄にされるのを防ぐために、彼らの身を盾にして他の子を守っていたのです。
僕という悪から。
生贄になることが嫌で傷つけていた友達は、僕のように生贄となっていました。
僕は嫌で嫌でしょうがなかったのに、彼らはそれに耐えていたんです。
僕はその当時、それに気付いた訳ではありませんでしたが、何故かたまらなく恥ずかしくなり家に逃げ帰りました。
ひとしきり泣いた後、僕を待っていたのはいつもの申し訳なさそうに話す父と、僕を一瞥もしない母でした。
僕が泣いても喚いても、どんなに苦しんでも、僕の周りは変わらないとわかりました。
僕はただ、死ぬために生かされているのだとわかりました。
僕は全てが嫌になって、ハルダニヤ国へ攻め入る際の軍の兵糧に紛れ込み、地上に逃げ出しました。
逃げること以外、僕のこの臆病な自尊心を守る方法が思いつかなかったのです。
地上へ逃れるのは上手く行きました。
僕らスレイマン第10分家は、隠形魔法の開発で分家創立しました。
ですので、親から際限なく甘やかされていた僕でも隠形魔法の教育だけは叩き込まれました。
家庭教師からでしたが。
それでも隠形魔法についてだけはかなりの腕前になったと思っています。
まるでこの時のために用意されていたかのように、全てが上手く行きました。
逃げ切れたことに喜んでいた僕は、地上で飛び回って、魔法で撃ち落とされ、奴隷商人に捕まりました。
ナガルス族の奴隷とは珍しかったのでしょう。
あの貴族に買われた後、殺されはしない程度に僕は生かされていました。
そこで僕は人族のナガルス族に対する憎しみの深さを知りました。
ナガルス族が人族を恨んでいたのは知っていたのに、彼らが僕らを恨んでいるとは分かっていませんでした。
考えてみれば当たり前のことなのに、その当然の事にすら気付け無いほど、僕は愚かでした。
そこから長い奴隷生活が始まりました。
長い長い、奴隷生活でした。
寝てる時は叩き起こされることに怯え、起きてる時は骨を折られることに怯えていました。
明日食べるご飯は家畜が食べる餌だったら嬉しいな、と毎晩寝る時に夢に見ました。
長い奴隷生活では、過去を思い返すことだけが僕の救いでした。
それだけしか僕に出来ることはなかったからです。
ただ人族の身近で暮らすようになって、彼らの考えを知って、彼らの立場に立って考えるようになった頃、過去の友達の立場になって考えることも出来るようになりました。
友達をいじめていたと気づいたのもこの頃でした。
あの子達が本当は僕のことなんか好きでもなんでもなかったこと。
友達とも何とも思っていなかったこと。
父上と母上は僕に興味なんかなかったこと。
奴隷生活の中で、僕はそう思うようになりました。
日々人族とナガルス族への恨みと憎しみが溜まっていきました。
そしてある時、何も感じなくなりました。
そこからの記憶は朧げです。
ドロドロとした水の中にいるような気もしたし、空気の少ない地中にいるような気もしていた気がします。
良かったことと言えば、殴られても怪我しても、そんなに痛くなかったことでしょうか。
どれほど経ったのか、それは覚えていません。
ただ、背が少し伸びたと言われたので、多分2,3年は経ってたのでしょう。
そうしていつものようにただただ町中で殴られていた時、師匠が助けてくれました。
記憶があやふやで、何も感じず、何を喋っているかも分かっていませんでしたが、その日からの記憶は少しずつですが思い出せます。
少しずつ、周りの水が薄くなってきたような気がしました。
少しずつ、昔を思い出しては懐かしいと思えるようになりました。
ですが感情が戻ってきたことで、苦しみも戻ってきました。
もしかしたら助かるかもしれない。
そんな希望が僕に生きる活力と、苦しみを与えました。
いえ、決して師匠を恨んでいるわけではないのです。それは誤解しないで下さい。
でももし助からなかったら。そう思うと夜も眠れなかったのは覚えています。
ただ、僕はこの時、大事なことに気付けました。
この苦しみは罰かもしれないと、そう思ったのです。
いままで人を苦しめてきた分が、全て自分に返ってきてるだけなのかもしれないと。
罪を償うために、誰かが与えたものなのだと。
ナガルス族と人族への恨みと憎しみはこの時、なくなりました。
僕が受けた仕打ちは理不尽なものではなく、自身の行いの結果だと分かったからです。
何となく心が晴れやかになった気がしました。
奴隷になって暴力をうけ、とても人ではない扱いを受けていても、少し心が晴れやかになった気がしたのです。
僕は生まれたときからただただ嫌われるためだけの存在ではなかったと。
僕が嫌われてたのは、自分が悪いことをしたからで、僕がもし、この罪を償えばきっと。
この罪を償えば、父上も母上もきっと。
父上と母上と、僕とで本当の家族になることだって出来るかもしれない。
憎しみと恨みにまみれていた僕では欠片も信じることのできなかった光景が、師匠のお陰で幽かな夢として見るくらいなら出来るようになりました。
そして最後、首を切り落とされる寸前まで、その幽かな夢が僕の心を救ってくれたのです。
首を切られる寸前、母上のことを想えたのも、この救いがあったからだと思います。
師匠が僕を助けてくれたあと、更に嬉しいことがありました。
師匠は覚えていらっしゃるでしょうか。
母上と父上が、僕と一緒に師匠に挨拶に行った時のことです。
帰ってきてからも母上は僕を一瞥もしなかったのに、師匠への挨拶の時はいつもの母上と違っていました。
もしかしたらユーキが強く言ってくれたからなのかもしれません。
母上があんなに取り乱したのを僕は初めて見ました。
あの時、あの時僕は分かったのです。
母上は決して僕が嫌いではなかったのだと。
母上は僕にただただ生きて欲しいと願っていただけだということを。
そうすると納得できるところもありました。
おおよそ教育など強要されていなかったのに、隠形魔法だけは特に厳しく教えられた事。
生贄として決して失ってはならない僕を、ありえないほど放任していた事。
過剰なほどに家と外に、僕の居場所がなかった事。
外に僕の居場所を作れなかったのは僕のせいですが、母上があれほど過剰に僕を拒絶していたのは、家に僕の居場所が無かったのは、ひょっとして逃げ出すように仕向けたのではないかという事。
なんの証拠もない話です。
ただ何となくそうではないかと確信しました。
結局僕が、地上から家に戻っても母上に優しくしてもらった覚えはありません。
抱きしめてもらった記憶すら無い。
でも、母上が取り乱した病室から僕の家まで、母上はずっと僕の手を握ってくれました。
ずっとずっと手を握ってくれました。
母上は僕のことを嫌いなんかじゃなかった。
母上はやっぱり優しかった。
手を握って貰えた時間は、凄く短かったけど、人生で一番幸せでした。
この僅かな時間を得るために、残りの僕の人生を差し出すことに何の躊躇いもありませんでした。
この時僕は、生贄となることを決めました。
初めて心の底から生贄となることを決意できました。
それもこれも師匠が僕を助けてくださったからです。
師匠が助けてくれたからこそ、母上を好きになることができました。
母上を救うために、生贄となることを決めることができました。
師匠、すみません。
師匠を助けるなんて言いましたが、実は殆ど言い訳みたいなものです。
師匠の前で格好つけただけでした。
本当は母上に幸せになってほしかっただけでした。
ナガルス様は僕が最後の生贄だと言いました。
この悲しい風習は、僕で最後となるのです。
僕が生贄になった後、母上が生む子供は決して生贄となることは無いのです。
僕の弟や妹が生贄になることは決して。
だから僕は生贄となるのです。
ですから師匠、ナガルス様をナガルス族を恨まないで上げてください。
みんなみんな、僕の母上と同じ辛さを抱えているのです。
だから恨まないで上げてください。
できればどうか、ナガルス族をナガルス様を助けて上げてください。
ナガルス様は誰よりも長く、この風習に苦しんでいるのですから。
ナガルス様の義理の息子である、師匠がどうか。
僕はもう満足しています。
だから皆を助けてあげてください、師匠。
いえ。
いえ、僕にも心残りがありました。
僕がいじめていた平民の子達に伝えてくれませんか。
ごめんなさいと。
彼らには結局、勇気が出なくて会うことができませんでした。
最後になっても、僕は卑怯で臆病者でした。
でもこれくらいきっと許してくれますよね。
あ、それと良かったら僕のポンチョを使ってください。
この手紙を父上に見せれば、きっと渡してくれる筈です。
ナイフはとても綺麗なので最後まで持っていきますが、ポンチョは貴重でしょうから。
それでは師匠、先に向こうで待っています。
ヨボヨボになった師匠と会うのを楽しみにしています。
サイード・スレイマン・ル・アマースト」
…。
サイードは、生贄になることを納得していた…。
彼は、覚悟していた。
…彼の母親が、アンナが俺の事を、俺達の事をあそこまで嫌ってた理由もわかった。
せっかく地上まで息子を逃したのに、余計な事をして連れ帰ってしまったのだから。
いやしかしそうしなければサイードは死んで…。
…。
…いや。
あの貴族は、ナガルス族が俺を探していることに動揺してサイードを殺そうとした。
もしナガルス族が俺を探さなかったら。
俺が奴隷から逃げなかったら。
俺がモニを助けなかったら。
…俺がこの世界に来なかったら。
サイードは死んでいなかった可能性は高い。
魔力の多さが寿命の長さになるとも言っていた。
スレイマン家は魔力が多いと。
ただでさえ魔力の多いナガルス族の中で更に多い魔力を持っているスレイマン家。
きっと皆寿命が長いのだろう。
サイードを奴隷にしていた貴族だっていつかは死ぬ。
奴隷になっても長く生きていれば、逃げるチャンスや開放されるチャンスはあるだろう。
傷ついた心だって時間が癒やしてくれる。
俺とは違って、長い時間が彼にはあるのだから。
百年くらい過ごしていれば、心の病気だって治るだろう。
俺がいなければ、サイードはもっと長生きできた可能性は…十分あった。
ありえないと言えるほどの低い確率じゃないのは間違いない。
…俺は…俺が、余計なことをしたから…。
…いや、まだ遅くはない。
サイードはまだきっと生きていると言っていた。
…まだ遅くない。
…。
…この手紙。
この手紙はスレイマン夫妻に渡そう。
それが良い気がする。
サイードの為に。いや違うな。
サイードが落ちていった時のアンナの姿が頭からこびり付いて離れない。
彼女に…渡してあげたほうが良い気がする。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「ショー…ここがスレイマン家の別邸…。ナガルス総本家に居るときは、分家当主はここにいるはずだから…。」
「ありがとう、モニ。当主に会うための手順とか全然わかんなくてさ。」
「うん…。ねぇ…怒ってる…?…サイードの事言わなくって…。」
「いや、そんな事無い。手紙にも書いてあった。口止めされてたんだろ?…ありがとう、サイードの願いを聞いてくれて。」
「ううん…。生贄に選ばれた子の願いはなるべく聞いてあげるようにしてるの。なんとなく自然と出来た曖昧なもの何だけど、皆そうしてる。…それが良いか悪いか分からないけど、でもやっぱりね…。」
「…そうだな。俺でもやっぱり何でも聞いてあげたと思う。…それ以外に出来ることなんて無いからさ。」
「うん…。結局そのせいで皆腫れ物に触るみたいになっちゃったりね。結局その家の教育方針次第なんだけど…。サイードはスレイマン夫妻の初めての子供でね。サイード以外に子供もいなくて…。」
「…そうか…。」
「本当は当主の子供が生贄に選ばれたからには、当主として立派に務めを果たすことが求められるものでね…。平民の子だったら家族ごと地上に逃げることもあるんだけど、彼らには立場があって…。」
「…そうだよな…。俺達の子供が選ばれたけど、当主の権利を振り回して別の子を生贄に…何てことしたら…。」
「うん…、きっと当主に従う者はいなくなると思う。彼らには分家を治める責任があるから。分家にも沢山の家族と…子供が居るから…。」
「…そうだよな…でも、アンナ・スレイマンは…。」
「そうね…。彼女が…あんなに取り乱しているのは始めて見たわ。当主の妻としてはあるまじき振る舞いだけど…、彼女の気持ちも分かる。そんな風に感じてる人は多いはずよ。…結果的に務めは果たしたわけだしね。」
「そうだな…務めは果たした…。サイードが果たしたんだ。サイードの親が果たした訳じゃない…。」
「…そうね…。サイードは勇敢な子だった。」
そう。
サイードは勇敢だった。
俺よりもきっと。
そして一人だった。
父親と母親にかまってほしいだけの子供だった。
…。
…父親と母親は本当はどう思っていたのか。
…いややめよう。
…サイードがそう信じて生贄になったんだ。
それに生贄を止めようとしたアンナ・スレイマンの態度。
聞くまでもない。
今更聞くのは野暮ってもんだろ。
「おまたせしました。ショー様、シャモーニ様。当主がお待ちです。」
「ええ、行くわ。ショー、いい?」
「ああ…。じゃあ行ってくる。」
「うん。…あまり思いつめないでね。これはナガルス族が抱えてきた問題なんだから。」
「…だったらもう俺の問題だよ。」
「…ありがとう。」
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「…おまたせしました。ショー殿。本日のご用向は…?」
やつれてるな。
確か…ヤフル、ヤフル・スレイマンだったっけか。
サイードの父親。
そりゃ、やつれるよな。当然だよ。
「はい。実は、サイードから手紙を受け取りました。これは僕に宛てられた手紙ですけど…お二人に、いえ、奥様にお渡ししたほうが良いかと思いまして…。」
「…そうですか…手紙を…。世話になった人に手紙を残すとは。…あの子も成長していたのですね。分かりました。妻に渡しましょう。おい。」
「は。ショー様…。」
この部屋に案内してくれた世話人か…。彼がハンナ・スレイマンに届けてくれるんだろう。
「お願いします。」
「…は。」
おお…。結構キビキビ動いてくれるな。
もう足早に…。
「式典では…お見苦しい所をお見せしました。ショー様。」
「いえ、そんな、ヤフル当主。その…見苦しいだなんて…。…むしろサイードが母親に好かれていると分かってよかったです。…それが意図したものであっても嫌われたと思いながら別れるのは、辛いでしょうし…。」
「…なるほど。もうすでにおわかりになっていたのですな。…いやひょっとして手紙に…?」
「ええ。サイードからの手紙にはわざとそうしているのではないかと書いてありました。確信している訳ではありませんでしたが、…満足そうでした。」
「…そうですか。そうか…。あの子は人の気持ちを慮れる様な子では無かったのです。そのように…甘やかしてしまったのですが、そうですか…。あの子も成長していたのですね。…いやそれは式典からすでに分かっておりましたな。」
「…ええ。台座での彼は…立派でした。とても。」
「そう…立派でしたな。そのまま逃げてくれればと思っていましたが、まさか成長して帰ってくるなど。…悲しいのは間違いありませんが、どこか清々しい気もあります。よくぞやったと。流石私の息子だと。…私の…。」
「…。」
「そう、結局は悲しいだけでは無いのですよ。私は。まさに子を想い悲しみに暮れるのが正しき親であるのは間違いないでしょう。…そういった気持ちが無いわけではない。しかし同時に、これで当主の務めを果たせた。これで私の地位は安泰だ。そう感じる自分が…無いとは言えないのです。」
「…それは…。…人間ですから。そういった事はあると思います。…自分の心と身体は、自分の思う通りに動いてくれないものです。」
「ハッハッハ。ショー殿はお優しいですな。それに、そうですか…身体だけでなく心も、ですか。生半な経験ではその様な言葉は出てこないものです。」
「…。」
「…しかし妻には分かっているのでしょうな。私が腹ではほっとしていることを。あれから顔も合わせてくれません。…これほど辛いものだったとは…。サイードの辛さはどれ程のものだったことでしょう。」
「奥様がサイードと話さなかったのはやっぱり…。」
「…あれは情が深く、気性が荒い質でしてなぁ。こうと決めたらもう全く動かないのですよ。…サイードが生まれてすぐ、次の生贄候補に選ばれた時は泣き叫んで抵抗しましてなぁ。…ただ私の立場も慮ってくれましてな。その折衷案の様な形であの様な態度になったのです。」
「…折衷案…ですか?」
「ええ。分家当主としては権力を振りかざして息子を特別に助けるわけにはいかない。しかし息子には生きていて欲しい。ならば…自分で逃げ出せばいい、と。」
「…でもサイードが逃げたら責任を問われるのでは無いのですか?」
「ええ、ええ。もちろん、責任は問われるでしょう。だが息子を逃した、と息子が逃げたでは天と地ほどに印象が違います。前者は不正を為す悪、後者は子供一人管理できないバカ親。…当主の座を明け渡すほどでは無いでしょうな。…繰り上がりで次の生贄となる家には一生恨まれるでしょうが…。」
「…あれは私の立場も考えて最善の行動を取り続けてくれたのです。息子を抱きしめたいのを堪えて、息子と私の最大限の幸福を選んでくれた。にも関わらず私はほっとしている。…妻は私に幻滅しているんでしょうな。」
「…。」
「…いえ、失礼…うん?」
ノックか?
誰だ?
「…ハンナです。失礼いたします。」
「ハンナ…。」
「…。」
「…。」
気まずい…。
「…ショー様。」
「あ、ええ…はい。」
「…今ままでの数々の無礼。大変失礼しました。」
「いえ…。どうぞお気になさらず。」
「…手紙も…ありがとうございました。」
「いえ…。なんとなく奥様に読んでいただいたほうが良いような気がしまして…。」
「…ええ。…こちら、サイードのポンチョとなります。よろしければ…。息子が望んだことですので。」
「…ありがとうございます。」
「…。」
「…。」
「…それでは、ここで失礼します。」
「…ショー様。」
「はい?」
「…サイードを、息子の命を助けていただき…ありがとうございます。…この御恩は一生、忘れません。」
「…いえ、そんな…。」
彼女は、震える声で頭を下げてる。
きっとまだ辛いんだ。
それでも俺に挨拶をするために顔を出してくれた。
早く帰ってあげよう。
彼女の弱さを見るのは俺の役目じゃない。
「ショー殿。」
「はい?」
「なにかお困りのことがありましたらスレイマン家にお声がけください。必ずお力になりましょう。」
「…ありがとうございます。…もし、もしサイードを救い出すことが出来たなら。…その時は普通の家族のようにしてあげてください。」
「…言われるまでもありません。息子が帰ってくるならば…我らスレイマン家は須らくあなたに忠誠を捧げることでしょう。」
「…それでは、失礼します。」
「ええ。シャダツ。ショー殿をご案内しろ。」
「は。こちらです。ショー様」
さっき手紙を届けてくれた人か。
しっかし広い家だな。
偉い人の家は何でこんなに広いのか。家の中で疲れない?
贅沢な…。
「ショー様…。」
「ん?えっと…シャダツさん…でしたっけ?」
「シャダツ・シナンと申します。どうぞ、シャダツとお呼びください。」
「はぁ…いえ、その、何でしょう?」
「…。」
何だい。
こういった老紳士に黙られるのも中々怖いな。
その割には背中の羽がワサワサしてるし。
しかし不思議な服だよなぁ。
上から被さるように着てる。
マントに近いと言うかなんというか。
マントに縦に切れ目が入っててそこに自分の羽を通す。
下着も上着もそういう構造だから、ぶっちゃけ羽を動かすと素肌が見えることがある。
だからか、大抵のナガルス族は首飾り…というか羽飾り…みたいなものを羽の根本に掛けている。
金銀細工の場合もあれば、革、布を折り重ねてる場合もあるし、鳥の羽を数珠つなぎにしたものを掛けてる場合もある。
ちょっとかっこいいんだよね。
…このシャダツさんは羽と背中の付け根を黒い包帯の様なもので巻いている。
だから素肌も見えないし、何よりきっちりしてる。
…正直羽が動く時にチラチラと肌が見えるとなんというか…ちょっと下品に感じる。
でもこのシャダツさんはそんな事無い。
普通は色々なものを折り重ねて飾ることで素肌を隠してるけど、きっちりぐるぐる巻にして素肌を隠してるからよりスマートに見えるっていうか。
なんかスーツを着てるみたい。
これって下着みたいなもんだろうし、毎朝巻くのは大変だろうな…。
性格もかなりかっちりしてるってのがなんとなく分かるよ。
…だから黙られると怖いんですけど。
「…私はサイード様の家庭教師をしておりました。…教えたのは隠形魔法だけですが…。」
「あ…そうですか…サイードも隠形魔法だけは特に厳しく教えられたと…。」
「そうですな。それだけは必ず習得させるようにと仰せつかっておりましたので…。」
「…。」
「…サイード様は…憐れな子供でした。…いつも父と母の関心を引くことだけを考えておりました。それが決して報われることなど無いのにです。」
「…。」
「おおよそ、子供らしさとは無縁の生活でした。子供のように笑い、遊び、健やかに…過ごすことなど出来なかったのです。」
「そう…でしょうね。」
「…憐れに思いましてな。仰せつかってる以上に世話を焼き…甘やかしてしまいました。それが分を超えたものであることは分かっていましたが…。」
「…。」
「ショー様…。私がお伝え出来なかった事を、ショー様は伝えられた。…ただ、ただどうしても…サイード様にもう一度お会いしたい。…私がお教えできなかったことをお教えしたいのです。」
「…。」
「身勝手な願いだと分かっております。しかしどうか…どうか…サイード様をお救いください。そのためであれば、この老骨を惜しむことなどありません…。…どうか…。」
「…出来るだけを尽くします…。」
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「…どうだった…?」
「うん。手紙は渡せたよ。」
「そう…。」
「…モニ。俺はこの戦いに参加する。…戦うための訓練をしたい。本格的な鍛錬をお願いしたいんだ。」
「…わかった。心当たりをあたってみる。…ありがとう。」
「まぁ、モニが参加する時点で俺も最初から参加するつもりだったし。ちょっと理由が増えただけだからさ。」
「…ふふ…。そうね。ショーはそういう人だもんね。」
まぁね。
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本当に、ありがとうございます。
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アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
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アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
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