ಂ××ౠ-異世界転移物語~英傑の朝

ちゃわん

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第9章 英傑の朝 後編

第95話 戦争の始まり

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王都はやはり人が多い。

久しぶりに戻ってきてそう思う。

ナガルス総本家浮島の城下町と、ハルダニヤ国王都を比べるとやはり、王都のほうが洗練されているし、人の数も多い。

確か人口的には、ハルダニヤ国のほうが多いらしい。確か2倍~2.5倍だったと思う。

ナガルス全体で1億数千万、ハルダニヤ王国で3億に届かない位。

但し、ハルダニヤ王国は非常に国土が広いことから基本スカスカだ。しかも他領への行き来が意外にしやすいこともあり、人口の正確さはかなり適当とのこと。

浮島は、島と島の行き来のハードルが高いため、それなりに精度良く人口を管理しているらしい。

今回、ナガルス族は5万人の兵士が王都へ攻め込むらしい。

人口に対して攻め込む数が少なすぎる気がするが、基本空からの奇襲、ゲリラ戦が基本戦略だ。

そして王都に常駐しているハルダニヤ国兵士は、1万人程度。これなら速度に任せて攻めきれる数だ。

ナガルス様も言っていたが、この戦争はナガルス族が不利だ。

数が圧倒的に少なく、守りの拠点に攻め入らなくてはならない。

こちらの有利は、制空権が取れること、現代魔法について強い耐性があること、攻め込まれるタイミングを掴ませないこと。

つまりゲリラ戦だ。

今までは、ゲリラ戦を繰り返し、他におびき寄せていた古竜騎士が戻るまでに勝負をかけようとしていた。

そしてなんとか、宝珠にマーカーをつけて、生贄を解決するための魔法が完成したら、一気に転移して片をつけようとしていた。

しかし今までは上手くいかなかった。

前回は上手くいく寸前だったが、勇者佑樹のせいで失敗した。

今回は上手くいくだろう、と言っている。

攻め込む時も、攻め込まない時も常に各地に古竜騎士をおびき寄せている。

今回も他の領へおびき寄せているらしい。

戦力は半減だ。

今回の戦争で最も大事なのは速度。

しかしもし古竜騎士が戻ってきてしまっても、数万の軍勢で足止めする。いやしなければならない。今回が最初で最後の総力戦。

これで駄目だったら、後は、戦力を順次投入していく総力戦になる。

ゲリラ戦から総力戦だ。そうなったらもう引くに引けない。

ゲリラ戦を成功させればまだ、被害は少なく済む。

そして古龍を足止めしている間に宝珠を破壊。ナガルス族が長年研究していた魔法を発動する。

その魔法の発動は、ナガルス様かモニしか出来ない。

これは王かそれに近い血筋を持つものしか使えない魔法…という体を取って居るだけだ。事実は、今後のナガルス族統治におけるイニシアチブを取ることが目的らしい。

治めるものが英雄であれば、民衆は喜ぶ。

そしていつだって政治家は汚いものだ。

しかし、古竜騎士一人で数万の軍勢に値するんだからこの世界はでたらめだ。

とは言っても古龍騎士と正面からぶつかったことがないためどれくらいの強さかは正直分からないとも言われた。

普通の竜騎士であれば、文字通り、一騎当千程だ。古龍は…その十倍を見積もっても間違いじゃないだろう。

やってらんないよ、全く。

しかし気のせいだろうか。

どうも王都全体の活気が無いような…。

なんと言えばいいんだろうか。

店を構えている商人は、客に声をかけて物を買わせようとしている。

道行く人は、商人の冗談に軽く返して笑顔だ。

これでどうして活気が無いと思うのだろうか…。

…兵士や、冒険者がいない?

兵士は知らないが、冒険者ってこんなに少なかったか?

一体…。

「おい。さっさと孤児院に行けよ。何難しい顔してんだ。」

佑樹が俺のケツを蹴りながら言ってくる。まじふざけんなよ。ばぁ~っか。

「あ、いや、冒険者が少ないと思ってさぁ。」

「それは恐らく…我々が攻め込むという噂が広がっているのでしょう。」

「…情報が漏れてるってことか?」

「まぁそうとも言えますが、そこは織り込み済みです。完全に情報を遮断することは、たとえ浮島であろうとも難しいのです。それでも今回は大分慎重だった筈なんですがね…。」

「戦争が始まりそうだと、どうして冒険者が少なくなるんだ?ワックさん。」

「それは…冒険者は戦争が始まったら、非常事態宣言を受け、戦争に参加しなければならないからです。冒険者は戦争が一番嫌いですからね。金は殆ど儲からないのに、死ぬ危険だけあるんですから。」

「なる…そりゃ嫌だなぁ。戦争が起こるとわかってっから、一時的に逃げてるってわけか。」

「そうです。…ただ、情報は何処から漏れたのか…。こういう場合は、大抵情報に聡い一部の冒険者が逃げる程度で収まるものなんですがね。そういった冒険者が周りに言いふらさない限り…。」

「あ…。」

「なんです?ショー様。」

「…そう言えば、前にメディンに、半年ほど王都から離れろって言った覚えが…。」

「…それかも知れませんね。今となっては確かめようもありませんが。」

「ああ…。」

「…で、いつまで影から孤児院を眺めてんだよ。早く行けよ。時間があるわけじゃねぇんだぞ。」

「わかってる、わかってるよ佑樹。やめろ押すな。なんかちょっと…忘れられたりしたら傷つくっていうか?逃げて下さいって格好良く言っても、お前誰?って言われたらめっちゃ傷つく。ほら金まで用意したのに、え、キモいです…とか言われたらどうしよう。」

「…うっぜぇ~…。」

「ショー様。もし逃げろという話をされるのであれば、それは早い方が良いかと…。」

「わかってる。わかってます。でもそんな正論聞きたくない。もっと俺を優しく励まして欲しい。」

「…うるせぇ行け。」

「あ、ちょ、押さないで行くから、はい行きます、行きますぅ。」

サイッテー。

そういう事するからラドチェリー王女に捨てられんじゃないの?捨てたのはこいつだっけ?

まぁ迷宮都市の姿を見れば捨てられたのはこいつみたいなもんだろ。

「あ?なんだよ?」

「いえいえぇ?」

「久しぶりにくっそムカつくな。あ、あなたがイニーアさんですかぁ?!この人が話があるんですってぇ!」

「え?ちょ…。」

そう言って、佑樹は俺をイニーアさんの前に押し出す。

イニーアさんは朝早く、扉の蝶番の修理をしている。

相変わらずオンボロの孤児院だ。

「ん?」

少し痩せたか?っていうかもう修道服すら着てないじゃん。

「お前は…。」

「え、えぇっとあのですねぇ。きっと忘れてると思うんですが、昔黒髪のショーって男がいたと思うんですがその方から言付けを預かって…っお。」

俺のセリフはイニーアさんに抱きつかれて止まってしまった。

「ショー…。」

覚えていてくれたのか。俺変身してるのに。

俺はなんで彼女を疑ってしまったんだろう。

思えば、王都に来て一番優しくしてくれた人だった。

俺はなんて馬鹿な事を。

俺は本当に馬鹿野郎だ。

「やっと来たか!私を迎えに!!その心意気に免じて扉を直す権利をやろう!!」

いやまじで馬鹿野郎だよね。俺って。

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

扉を直せ直せと煩いイニーアさんをなだめすかし、兎に角話を聞いてもらう事になった。

孤児院は相変わらず、そこかしこが壊れている。やはり、余り資金繰りがいい状態だとは言えないみたいだ。

それでも子供達に笑顔が見られるのは、何とか飯は食えているのと、イニーアさんの人徳によるものだろう。

今は、俺のときよりも子供の数が少ない。良いことか悪いことか分からないが、逃げるのには役立ちそうだ。

「…ふぅん。戦争が始まるから今すぐ逃げろ、とそういうことか。」

「はい。一応こちらに支度金も用意しました。本当に、一ヶ月…いや、半月でも王都を離れて下されば良いんです。この子供の数なら、これだけあれば、別の町でも半年は持つと思います。」

「…確かに、ここを出ていった子達で冒険者になってる子達も居る。そしてその子達も仕切りに早く逃げたほうが良いと言ってくれている。俺達が護衛するからとも言ってくれている。」

「でしたら是非、お願いします。明日…いや、今日今から直ぐにでも避難をしてください。」

「…王都に攻め込んでくる別大陸の勢力など聞いたことはない。唐突に表れ、唐突に襲ってくるといえば…ナガルス族だけだ。ショーはナガルス族だったのか?」

「…いえ、私は人間です。しかし我妻がナガルス族です。彼女に救われた恩から、ナガルス族として参戦します。」

「…。」

「…いきなりの事で困惑しているとは思います。でも事態は逼迫しています。出来れば、その冒険者になった子達に護衛をしてもらって、他領…とはいかずとも、せめて別の街に一時避難してくれませんか。この金塊と多少のお金があれば暫くはなんとかなると思います。」

「…少し待ってくれ…。」

「何か用事でも?相当大事な用事でない限り後回しにした方がいいかと。物資が必要なら…。」

「…ショー、お前…結婚したのか?」

「は?」

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「あ~やってらんないやってらんない!やる気無くなったぁ!このまま動かない!う~ご~か~な~い!!」

「えぇ…。」

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「はぁ?!いやお前ふざけんなよ!どう考えてもおかしいだろうが!騙されんなよ!」

「じゃあ口説いたってのは嘘なのか?」

「…いやそれは本当だけど。」

「はい、アウト~。ワックさんも聞きましたよね。これは不味いっすわぁ。」

「わ、私は何も聞いておりませんよ。何もね。」

「いやいやいや。そういう…ちょっとまずいこと聞いちゃいましたって感じが既におかしいから。何もやましいことは無いから。流れでそうなっちゃっただけで…。」

「やる気な~い!やる気な~い!やる気を出させたいなら私に甘い言葉を…イテッ!」

「いい加減にしてください!先生!もう!どうせ脱出する準備をしてたでしょう!なんでそういうことばっかり…はぁ…。」

「アナリア!懐かしいな!」

懐かしい。俺の読み書きの師匠。今は…修道服みたいな物を着てる。

リヴェータ教の見習いだろうか?それとも本格的にリヴェータ教で司祭になる予定なんだろうか。

あれ…?だったらナガルス族が近くに居るのはまずいか?

いや俺は人間だし、ワックはナガルス族だと言ってないし、ナガルス族に味方するって言っただけだし。

やっぱまずいか?

「お久ぶりです。ショーさん。イニーア先生の事は気にしなくて良いですよ。どうせ私達も逃げるつもりだったんです。明日明後日の予定でしたが…。」

「いや出来れば今日、今すぐにでも逃げたほうが良い。」

「どうやらそのようですね。ほらっ!先生!早く準備してください!もう!お金まで貰ったんだったら何の問題も無いでしょう!お金だけが問題だったじゃ無いですか!」

「…別にお金で困ったわけじゃない。そもそも私は回復魔法が使えるんだ。いつでも何処でも簡単に稼げる。」

「その割には王都では振るわないようじゃないですか?」

「…王都は優秀なリヴェータ教徒が多いから…ちょっと場所が悪いっていうか。」

「はいはい。早く準備してくださいね。ごめんなさい、ショーさん。教え子が久しぶりに帰ってきたりするとすぐ我儘言うんですよ、この人。嬉しいのを隠すのが下手でねぇ~。」

「うるさい!とっとと準備しろ!ば~か!」

「はいはい。子供達に声かけてきますので、それまでに準備してくださいね。先生。」

何というか…全くいつもどおりだ。

俺がナガルス族に味方して戦争すると言ったばかりなのに。リヴェータ教徒にとってはナガルス族っていったら敵も敵。絶対に許せない敵のはずなのに。

…この孤児院に居る子達は、ナガルスが昔王都に攻め込んだ時に両親を無くした子だって居るのに。

いつもどおりだ。

努めて、いつもどおりにしてくれているのだろうか。

「はん!図体がでかくなったらいっちょ前に口も達者になりおって…。誰の乳で育ったと思っとるんだ。」

あんたの乳じゃ無い事は確かだよ。

「…ま、そういう事だ。私達も避難する予定だった。明日明後日位を予定していたがな。だが、まぁ…金があれば問題ないだろう。感謝する。」

いきなり真面目な顔をして、しっかりと頭を下げて礼を言ってくる。

こういう所がやっぱり立派な人だ。

「いえ…お役に立てたなら良かったです。」

「ショーは戦争に参加するのか。」

「はい。そのつもりです。」

「…奴隷からやっと生き延びたのに、戦争か。忙しないな。」

「ご存知でしたか…。」

「かなり後になって、風の噂でな。もう会えんと思っていたよ。済まないな、助けることが出来ず…。」

「いえ、いえ!イニーアさんやアナリアには本当に助けられました。奴隷になったのはあくまで俺がヘマしたってだけですから。冒険者の習いってやつですよ。」

「随分逞しくなったじゃあないか。あの時は随分悲壮な顔をしてたな。世界で一番可哀想な自分って面だったよ。」

「いや、手厳しいっすね。」

「今はそう見えないから言える訳だ。何事も朗らかに健やかに生きるのが一番。戦争なんぞとむさ苦しいことは軍人にでも任せておけばいい。」

「へっへ…。そうも言えない立場になってしまいました。」

「はぁ…。こんな美人と一緒にいられる機会をほうっておいて殺し合いとは。男ってのは…いや冒険者って奴らは訳がわからん。冒険者になった子達も偶にそんな顔をする。…大抵帰って来ないことが多い。」

「…むしろ美人だったからでは。その人のためにと剣を振るうのも冒険者って奴です。」

「ふん。…ならばあの子等が死んだのは私のせいか。」

「…これは、その…すいません。ただ、その子達も、そういう戦いの前に、あなたに会いに来たという事です。戦いの前に、自分が何のために戦っているかを自分に刻む必要があるのです。」

「いい。もう…いい。あの子等が言うのはいつも、一山当ててやるぜ、だ。そうすりゃもっと先生も楽できるってな。わかってはいたさ。だから私はいつも子供達が冒険者になるのを止めてるよ。地道にゆっくりと稼げばいいと言ってるんだがな…。」

「…。」

「…さて。もう行くか。準備するほどの物など無いしな。態々危険を犯してまで助言をくれるとは。感謝する。…会えて良かった。死んだと思った者が生きていてくれるほど嬉しいことは無い。」

「ありがとうございます。俺も…覚えていてくれるとは思いませんでした。どうかお元気で。あと、なるべく急いでください。急げば急ぐほどいいです。」

「ふん。安心しろ。日が暮れる前に隣の宿場街までは辿り着ける。お前が急かすから急ぐとするよ。…お前みたいな奴はなかなか忘れようと思っても忘れられんよ。」

そう言って、彼女は子供達を引率して言った。

アナリアは最後尾に付いていくようだ。ぐずっている子をあやしながら付いていこうとしている。

その時ふと、こちらを振り向き彼女は言った。

「あんな事言ってますけど、ここに居た子達の名前は全員覚えているんですよ。恥ずかしがって言わないんですけどね。先生は。じゃあ、また。ショーさんも無理しちゃいけませんよ。」

もうまるで、もうひとりのイニーア先生みたいな立ち振る舞いで去っていった。

アナリアは面倒見が良かった子だったからな。きっとイニーア先生を放っておけなかったんだろう。

ただイニーア先生よりも大分上品に見えるのは何故なんだぜ。

…彼女達の道中は大丈夫だろうか。

だが冒険者らしき奴らが何人か周りに居たし、なんとかなるだろうか。

王都近辺はかなり治安がいいと聞いていたし、多分大丈夫だ。…きっと。

今はそれを信じることしか出来ない。

どうか無事であってくれ。

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

その日の残りは、一応、仲立さん達を探し回ってみた。

だがやはり、彼等を見つける事はできなかった。

正直期待はしてなかったから、予想通りと言った所だ。

俺とワックと佑樹は、宿に戻り、食事を取っている。

美紀さん達は、まだ宿に戻っている様子はない。

「ギュワップ!!モグッ!ガッ!モグッ!ゴクッ!ゴッ!ゴッ!…ギュハァ~~~ッ!!」

「しかし良く食うなこの生き物は…。」

佑樹の横で陣取っているメリィが、明らかに自分の体積より多い食事を食べているのを眺めながら思わずつぶやいた。

最近はもう、佑樹の近くばっかりうろちょろしてる。

俺の側に来る時は、唐突に引っ叩いてきたり、耳元で息を吹きかけてきたり、ジッと横で眺めてたりと大体神経を逆なでさせようとするときだけだ。

まぁ佑樹の側に居る時も大体佑樹をおちょくってたりするだけなんだが。

「つーか、このメリィって何なの?どういう生き物?触れないし、偶に他の奴に見えてない時もあるっぽいし。こう言うの良く居るの?」

うんざりしながら佑樹が聞いてくる。

いや知らんよ。そして特に知りたいとも思わんよ。ペットと思えばいいのでは?

「…実は、我々の研究部門でも話題にはなったんですがね。妖精種の一種かもしれない…という結論だったそうです。」

ワックが難しい顔をしながら真面目に答える。

我がチームで一番真面目で一番常識人で、一番役立つワックさんだ。

「研究部門…ウォブリー一族、えぇっと…ヒュロッキンの所か?」

「ええ。彼女が管轄している組織、という事ですね。どの分家でも優秀であれば広く受け入れます。ただやはり、魔法、魔術に関しての研究はウォブリー一族が多くなってしまいますが。」

「妖精って…そもそも居るんですか?この世界に来て長いけど、見たことないっすよ。王国の人間も話して無かったし。」

「そうですね…ハルダニヤ王国ではなかなか話題にはならないかも知れません。妖精とは人間には、なかなか姿を見せないそうです。そもそもハルダニヤ大陸には居ないのでは無いかとも言われていますね。」

「ふぅん…じゃ、居るところには居るんですか?」

「ええ。森や山等の奥深くや、海の奥底。そういったところに生息していると言われています。南部大陸や開拓の大地では目撃例がありますよ。とは言ってもかなり珍しい生き物です。それもこんなに人に懐くなんて…。」

「妖精か…。確かに尋常の生き物じゃ無さそうだしな。そもそも基本触れないって言うのが不思議だし。」

「…それも研究部門は疑問に思っていたそうです。そもそも、妖精種は実態のある生物。しかし基本的にメリィには誰も触れません。何故かショー様は触れる技術をお持ちのようですが。この実態がないというのはどちらかと言えば精霊に近いのではないか、とも言われていました。」

「じゃあ精霊何じゃないか?触れてしまうのが俺だけなんだから、むしろ俺を例外とした方が話が通るような気もするけど。」

「そうなんです。そうなんですが…その…。」

「何?」

「ギュ?」

チラチラとメリィを見ながら言いづらそうにするワック。

飯をたらふく食い終えたメリィは鼻をほじりながら「何?俺の話し?」みたいな態度で鳴き声を出す。

「その…姿形があまりにも精霊らしく無いと言いますか。その…下品すぎると断じられまして…。」

「え?何?じゃああんまりにもキモい形だから精霊の筈じゃ無いって事?」

「…えぇ、まぁ…。」

「ブヒャッヒャッヒャ!!メリィ!おま、お前!ッブフ!お前みたいな精霊なんて居ないとよ!ップフーー!!」

「おいおいショー。そりゃ幾らなんでも可哀想…ッブフ!…可哀想だろ。」

「…ッチ。」

「いえいえ。その、あくまでエルフやドワーフから聞いていた精霊の姿形と違っていた、という話でありましてですね。」

「いやぁ~!外見がだっさいから妖精かぁ!いいんじゃないの?外見ってやっぱ重要だしなぁ!」

「まぁ外見が違ったら大体違う種族だしな!ッブハ!」

俺と佑樹はツボにはいってしまった。

いやまぁ確かに変ななりしてるしな。そう判断したのもわかるわかる。

「ギュペッ!ギュペッ!」

俺達の大爆笑が大分気に入らないのか、必死につばを吐きかけてきてる。本当こいつ育ち悪いよな。

「あ、まぁつまり我々もよくわからないという事です。ナガルス様も特に何も言っておりませんし。」

「じゃ、まぁ良いだろ。大した問題じゃないってことさ。」

「そうだな。それよりとっとと飲もう。飲める時に飲むのが冒険者ってやつだぜ?」

「まだ仕事の最中だろ。本当に酒好きだよなぁ。…ま、少しなら良いか。」

そう言いながら、俺達の夜は更けていく。

結局、就寝の時間になっても美紀さん達は帰ってこなかった。

上手く行ってるのだろうか。ガルーザが付いてるんだ。そうそう騙されたり不意打ちで襲われたりってのは難しいから大丈夫だと思うが。

そして寝入って暫く後、大きな声で俺達は起こされた。

「敵だぁ!!敵がきたぞぉ!!ナガルス族が攻めてきた!」

戦争が、始まる。

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