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乙女ゲーム マザコン編

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表記 ヒロイン:ヒロ マザコン:マザ
ナレーションの時は【⠀】

ヒロ「高校生活楽しくなるといいなぁ...。知り合いが全然いないからまず友達作りから頑張らなきゃ」

マザ「ねぇねぇ!」

ヒロ「きゃっ!」

マザ「あぁ、ごめん。ビックリさせちゃったね。君があまりにも僕のママに似ててつい声掛けちゃった。初めまして僕は山田ネオ。よろしくね!」

ヒロ「初めまして。私は広居 凛(ひろい りん)。そんなに私あなたのお母さんに似てるの?」

マザ「うん!ボクのママはね!料理も上手だし、頭もいいし凄く素敵なんだよ!まさに理想の女性なんだぁ」

ヒロ「お、お母さんのこと大好きなんだね...」

マザ「勿論!ママだもん!君は自分のママのこと嫌いなの?」

ヒロ「ううん。大好きよ。でもあなたほどではないかも」

マザ「僕のママへの愛は誰にも負けないから当然だよね!」

ヒロ【キラキラした笑顔。だけど何故か少しだけ違和感があった】


少し間を開けて

ヒロ「お昼ご飯食堂に食べに来たけど、メニュー豊富だなぁ。今度食堂のご飯食べてみようかな」

マザ「凛ちゃん!ここいい?」

ヒロ「山田くん!うん。勿論大丈夫だよ」

マザ「ネオでいいよ。ママが作ってくれたお弁当すっごく綺麗で美味しいから誰かに見せたいなぁって思ったら、君の姿が見えたから走って来ちゃった!君のお弁当も凄く綺麗だね!」

ヒロ「ありがとう。自分で作ったから褒めてもらえるとやる気になるよ」

マザ「え!?自分で作ったの!?凄いなぁ君はいいお嫁さんになるね」

ヒロ「え...」

マザ「僕のママみたいになれるといいね!」

ヒロ「あ、うん...。そうだね...」

ヒロ【ネオくんとの会話にはいつも必ずお母さんの影がチラついた。そして段々と最初の違和感の片鱗も見えてくるようになる】

少し間を空けて

ヒロ「明日のお弁当の材料買わなきゃ。このスーパー今日はウィンナーが安かったはずなんだよね。あれ...あそこにいるのネオくん?」

マザ「あれ?スーパーで会うとは思わなかったな。僕はママにお使い頼まれて来たんだけど君も買い物?料理上手だもんねぇ。あ、ねぇねぇ!いいお野菜とかわかる?良かったら教えて?」

ヒロ「いいよ。何買うの?」

マザ「きゅうりとパプリカとあとカボチャ!」

ヒロ「なんだか予想がつかない組み合わせ。何作るの?」

マザ「うーん。わかんない。僕は料理しないから。あ!ねぇねぇ!今度僕のおうちで一緒にご飯作らない?ママに美味しいご飯を作ってあげたいんだけど僕は下手だからさぁ。ね、だめ?」

ヒロ「そんな急に言われても...」

マザ「友達としての一生のお願い!今度は凛ちゃんのお願いも聞くから!」

ヒロ「うーん...。ちょっと予定確認してからでもいい?」

マザ「うん!全然大丈夫だよ!ご飯作れるようになれればさ、ママの気持ちをもう少し分かってあげられるかなって...」

ヒロ「え?」

マザ「え、あ、ご、ごめん!やっぱりさっきの話なしで!ごめんね!またね!凛ちゃん!」

ヒロ【逃げるように走っていくネオくんを追いかけることは出来なかった。今のはきっと本来は見せたくなかったものだから】

少し間を開けて

ヒロ「今日お休みだからお散歩しようと思ったけど正解だったなぁ。凄い気持ちいい。あれ、こんなとこにお花屋さんなんてあったんだ!綺麗~。あれ…あそこに居るの…ネオくん?」

マザ「あ!凛ちゃん!昨日に引き続き偶然だねぇ」

ヒロ「ほんとに。こんな朝からネオ君に会えるなんて思わなかった」

マザ「でも凛ちゃんに会えて嬉しいな。そうだ。このお花あげるよ。似合うと思うんだ」

ヒロ「え?いいの?ありがとうネオくん」

マザ「うん。やっぱり似合うね。可愛い」

ヒロ「そ、そうかな…」

マザ「凛ちゃんはママに似てるからママにも似合いそうだ!うん!僕の目に狂いはないね!」

ヒロ「うん…。よかったねぇ…」

マザ「華やかになったママは更に素敵だろうなぁ。あれ、凛ちゃんのスマホのストラップ可愛いね。カエルさんだ」

ヒロ「あ、うん。可愛くて気に入ってるんだ」

マザ「いいねぇ。ん?あれ…あ!野良猫が!」

ヒロ「え!?あ!ストラップ返して!」

マザ「追いかけよう!」


少し間を空けて


マザ「見て!いたよ!」

ヒロ「ほんとだ!というかここ…猫ちゃんがいっぱい!」

マザ「猫の集会所みたいだね。可愛い~。凄い人懐っこいよ」

ヒロ「ストラップも返して貰えた!皆可愛い~」

マザ「可愛いがいっぱいだねぇ。写真撮ってママに送ろ。あ!ほら、見てみて!これ、凄く可愛いよね」

ヒロ「ほんとだ可愛い~!ネオくん写真撮るの上手だね!」

マザ「あ、猫ちゃんじゃなくて猫ちゃん見てる君の表情がだよ?」

ヒロ「...え!?」

マザ「絶対勘違いしてると思った。僕結構君のこと気に入ってるんだよ?」

ヒロ「あ、ありがとう...。急に言われてちょっとびっくりしちゃった」

マザ「ふふっ。...ここはいいね。嫌なこととか忘れられそうで」

ヒロ「...嫌なことあったの?」

マザ「...昨日さ。父さんが久しぶりに家に帰ってきたんだ。でも...父さんは...ママが用意してたご飯に一口も手をつけなくて...」

ヒロ「そっか...。お母さん悲しかったよね」

マザ「だから...ママには僕がいてあげなきゃいけないんだ。僕が、ママを支えてあげなきゃ」

ヒロ「...ネオくん。貴方がお母さんを好きなことは疑ってないよ。でも、『してあげなきゃ』は自分に言い聞かせているように聞こえる」

マザ「っ!」

ヒロ「お母さんを大事にするのと同じぐらい自分のことも大事にしてね」

マザ「してるよ!変なこと言うんだね凛ちゃんは!それじゃ、帰らなきゃ。またね凛ちゃん」

ヒロ「うん...」

ヒロ【最初に見えた違和感が次第に形になっていく。歪んだ形で】

少し間を空けて

ヒロ「いたっ。怪我しちゃったけど...これぐらいならほっといても治るよね」

マザ「ちょっと!怪我してるのになんでそのままにしてるの!?バイキン入っちゃうよ!もう!ほら手出して!手当してあげる」

ヒロ「ネオくん!手馴れてるね...」

マザ「ママが怪我すると凄く心配してすぐ手当してくれたから。ママに心配かけないようにって癖づいちゃったんだよね。女の子は傷なんて残しちゃダメだよ」

ヒロ「はーい。手当してくれてありがとう」

マザ「せっかく綺麗な手してるんだから。今度は放置しちゃダメだからね」

ヒロ「気をつけます...」

マザ「僕に自分のこと大事にしろって言った本人が自分のこと大事にしてないんだから」

ヒロ「返す言葉もないなぁ...」

マザ「最近ね、ママと話してると君の事を思い出すんだ。その度に君に言われた言葉を思い出す。不思議だね。君の言葉ってゆっくり染み込むみたいで。少しずつ自分のことをちゃんと大事に出来てる気がする」

ヒロ「そっか。偉いね」

マザ「ありがとう。君のその一言で救われる気がする」

ヒロ「大袈裟だよ。でも、ネオくんが楽になるなら何度でも言ってあげる。ネオくんは頑張ってるよ偉いね」

マザ「っ...。何でだろ..嬉しいはずなのに泣きたくなっちゃうな」

ヒロ「え!?ごめんね」

マザ「ううん。君が謝ることなんて何もないよ。ねぇ、今度良かったら電話とか出来ないかな。凛ちゃんと話したいことがあるんだ」

ヒロ「うん。いいよ。LINEでいい?」

マザ「うん!...へへっ。凛ちゃんの連絡先がスマホに入ってるだけで嬉しいなぁ」

ヒロ「え?なんて?」

マザ「凛ちゃんと話せるの楽しみって言ったの!それじゃまたね!」

ヒロ「うん。またね」

ヒロ【歪んでいたと思っていた物は次第に正しい形に変わっているような。そんな気がした】

少し間を空けて

ヒロ「お風呂も入ったし寝る前にちょっと勉強してから寝ようかな。ん、電話だ。ネオくん?はい。もしもし」

マザ「凛ちゃんこんばんは。急にごめんね」

ヒロ「ううん。大丈夫だよ。どうしたの?」

マザ「...凛ちゃんの声が聞きたくなって」

ヒロ「...何かあった?」

マザ「本当に凛ちゃんの声が聞きたくなっただけなんだ」

ヒロ「そっか。じゃあちょっとゆっくりお話しよ」

マザ「凛ちゃんは用事とか大丈夫?」

ヒロ「うん。あとは寝るだけだから」

マザ「じゃあ甘えちゃおうかな。…ママと喧嘩したんだ」

ヒロ「仲直りはできそう?」

マザ「うーん…。ちょっと時間はかかるかも。でも…誰より大事にしたい人が出来たんだ。僕器用じゃないから二人ともを一番にはできない。でもママのこともちゃんと愛してる。僕のことを大事に愛してくれたから」

ヒロ「うん。それも大事なことだと思う。ネオ君が自分の意思で大事にしたいって思えたのもとっても素敵だよ」

マザ「ふふ。僕が大事にしたいって思えた子もとても素敵な人なんだよね」

ヒロ「そうなんだ!どんな人?」

マザ「なんかカエルが好きらしいよ」

ヒロ「へえ。私と一緒…え!?」

マザ「ねえ。誰のことだと思う?」


-END-
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