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他国の英雄
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戦争が始まったある国では、子供を戦闘兵器として運用するための実験が始まった。訓練で死亡者が出るほどの中、1人の少年は10年近くもこの訓練に耐え続け、素手で簡単に人を殺せる生きた兵器が誕生した。
名前はNo.169
勿論正式な名前ではなく、実験に伴う管理ナンバーだ。
169は武器を持っている大人でも、無傷で相手を殺せた。そんな169を兵器として運用する戦いが始まる。
大人達は皆鎧に身を包み、腰に長剣を下げている。しかし、169に防具はなく、武器らしい武器も短剣1つのみだった。その事実に169が不満を覚えることは無い。人を殺すことにしか思考を割くことがないのだから。
「さぁ殺せ!169!」
いつも通り、下された命令に淡々と従う。目の前にいる敵をただひたすらに殺していく。
そんな169の前に1人の兵士が現れた。
戦場では目立つ白の甲冑に身を包んでいる。
しかし、169にとって甲冑の色など気に止める要素ではない。頭には、この男をどう殺すかの方法だけを考えていた。
即座に背後に周り首をへし折ろうと蹴りを放てば後ろに目がついているかのように剣で防がれた。ならば腕を折ってしまおうと考えた刹那、反射的に飛び退いた鼻先に剣が掠める。
「へぇ。突っ込んでくるしか脳のない猪のようなものかと思っていたが...回避も出来るか。それにしても子供を兵器にするなんてほんと...反吐が出るな」
169には敵が何を言っているのか理解出来なかった。だが、今まで殺してきた者と目の前の者が違うことだけは分かった。
殺せない人間に出会うのは初めてだ。殺そうと思うのに、下手に動くと自分が殺されるのが分かり動けずにいた。
「相手の力量を見定められるなら十分だ。投降しなさい」
169はただ一定ごとに瞬きを繰り返すのみ。その様子に男は声を曇らせて呟く。
「なるほど...。本当に兵器としての教育しか施されていない訳か...。なら、無力化する他ないな」
何が来ると分かった訳ではない。
後ろに飛べと反射で動いた。目の前で一線される剣は動いていなければ胸元を裂かれていたことだろう。
地面の土を抉り、相手の顔面にぶつけ視界を遮る。背後から頭部を蹴り抜けば、腕で防がれた。そのまま相手の首に足を絡め、自重と共に首の骨を折ろうとするが、男はビクともしない。
ならばと鎧の隙間から短剣を突き刺そうとすればその手を掴まれた。
「あの手この手全部が殺すことしか考えてない一手だ...。だが浅い!!」
腕の力だけで引き剥がされ、地面に叩きつけられる。169の足の力はそう簡単に引き剥がされるようなものではない。まさか腕の力だけで引き剥がされるとは思っておらず、受け身もとれなかった。地面を砕くほどの衝撃をもろに食らう。
だが、飛びそうになる意識を縫い付け、相手の鎧の腕関節に短剣を差し込み切りつけた。痛みに男の力が弱まるとその隙に抜け出し距離をとる。
「今ので気絶しないのか...。タフだな」
男が急に剣を手放した。無意識に危険物である剣に目が引っ張られる。
刹那、迫る拳を理解したが避けることは出来なかった。
衝撃と共に吹き飛び地面を滑る。
起き上がろうとしたが、その直前に首を掴まれ地面に押さえつけられた。
「大人しくしてろ。悪いようにはしない」
169は短剣で相手の肘関節部分を突き刺そうとしたが、その手も押さえつけられる。
「言葉が通じねぇ以上はしょうがねぇ。寝てろ」
振り上げられた拳を169は目を逸らさずただ黙って見つめた。
名前はNo.169
勿論正式な名前ではなく、実験に伴う管理ナンバーだ。
169は武器を持っている大人でも、無傷で相手を殺せた。そんな169を兵器として運用する戦いが始まる。
大人達は皆鎧に身を包み、腰に長剣を下げている。しかし、169に防具はなく、武器らしい武器も短剣1つのみだった。その事実に169が不満を覚えることは無い。人を殺すことにしか思考を割くことがないのだから。
「さぁ殺せ!169!」
いつも通り、下された命令に淡々と従う。目の前にいる敵をただひたすらに殺していく。
そんな169の前に1人の兵士が現れた。
戦場では目立つ白の甲冑に身を包んでいる。
しかし、169にとって甲冑の色など気に止める要素ではない。頭には、この男をどう殺すかの方法だけを考えていた。
即座に背後に周り首をへし折ろうと蹴りを放てば後ろに目がついているかのように剣で防がれた。ならば腕を折ってしまおうと考えた刹那、反射的に飛び退いた鼻先に剣が掠める。
「へぇ。突っ込んでくるしか脳のない猪のようなものかと思っていたが...回避も出来るか。それにしても子供を兵器にするなんてほんと...反吐が出るな」
169には敵が何を言っているのか理解出来なかった。だが、今まで殺してきた者と目の前の者が違うことだけは分かった。
殺せない人間に出会うのは初めてだ。殺そうと思うのに、下手に動くと自分が殺されるのが分かり動けずにいた。
「相手の力量を見定められるなら十分だ。投降しなさい」
169はただ一定ごとに瞬きを繰り返すのみ。その様子に男は声を曇らせて呟く。
「なるほど...。本当に兵器としての教育しか施されていない訳か...。なら、無力化する他ないな」
何が来ると分かった訳ではない。
後ろに飛べと反射で動いた。目の前で一線される剣は動いていなければ胸元を裂かれていたことだろう。
地面の土を抉り、相手の顔面にぶつけ視界を遮る。背後から頭部を蹴り抜けば、腕で防がれた。そのまま相手の首に足を絡め、自重と共に首の骨を折ろうとするが、男はビクともしない。
ならばと鎧の隙間から短剣を突き刺そうとすればその手を掴まれた。
「あの手この手全部が殺すことしか考えてない一手だ...。だが浅い!!」
腕の力だけで引き剥がされ、地面に叩きつけられる。169の足の力はそう簡単に引き剥がされるようなものではない。まさか腕の力だけで引き剥がされるとは思っておらず、受け身もとれなかった。地面を砕くほどの衝撃をもろに食らう。
だが、飛びそうになる意識を縫い付け、相手の鎧の腕関節に短剣を差し込み切りつけた。痛みに男の力が弱まるとその隙に抜け出し距離をとる。
「今ので気絶しないのか...。タフだな」
男が急に剣を手放した。無意識に危険物である剣に目が引っ張られる。
刹那、迫る拳を理解したが避けることは出来なかった。
衝撃と共に吹き飛び地面を滑る。
起き上がろうとしたが、その直前に首を掴まれ地面に押さえつけられた。
「大人しくしてろ。悪いようにはしない」
169は短剣で相手の肘関節部分を突き刺そうとしたが、その手も押さえつけられる。
「言葉が通じねぇ以上はしょうがねぇ。寝てろ」
振り上げられた拳を169は目を逸らさずただ黙って見つめた。
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