2つの世界の架け橋

明人

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「では、行きます!!!」
リラが駆け出し、それを合図にオーリが魔法を唱える。
「『氷雨アイスレイン』」
氷槍アイスニードルと同じような鋭く尖った氷がいくつも、広範囲に展開され、降り注ぐ。氷は巣の外で巡回していたマイルビーを次々に貫く。だが、同時に巣から新たに大量のマイルビーが飛び出した。
「『闇渦ブラックホール』!」
すぐにシリーが魔法を唱え、飛び出てきた大半が闇に呑まれるが、巣から離しての攻撃のため魔法から逃れた個体も少なくない。
「『風刃ウィンドスラッシュ』!!」
シリーの魔法から逃れた個体をシラビシの唱えた風の刃が切り裂いた。
「ありがとう!皆!」
巣までの道は開けた。あとは巣を破壊し、中の蜜を回収する。
しかし、巣に触れた途端巣から新たにマイルビーが飛び出し、尾についた毒針をリラの腕に突き刺す。
「リラ!!!」
「大丈夫!!」
刺された痛みとマイルビーの毒による熱を帯びた鈍痛。それでもリラは作業を続ける。
マイルビーも自分達の巣を死守しようと何匹も何匹もリラの体に毒針を突き刺していく。
痛みが無限に襲い来る。刺されたところが段々と腫れ上がる。手を動かす度に腫れ上がった部分がまた痛みを伴う。
それでも、リラは手を止めなかった。
巣の奥の方に黄金の蜜を見つけた。巣ごと破壊し袋に入れていく。その最中もマイルビー達は攻撃を続け、見ていたシリーがついに悲鳴をあげる。
「もう十分よ!リラ!!もうやめて!!死んでしまうわ!!」
飛び出そうとしたシリーをリラが腫れ上がった手を向け制止する。
「絶対来ないで!みんなは絶対にそれ以上近付かないで...っ」
魔族はマイルビーの攻撃を少しでも受ければ死んでしまう。リラは集めた蜜を抱え込み巣から離れようと一歩後退した直後ガクンと膝が落ちその場に倒れた。
「リラさん!!!」
シラビシの声に続き、低い声が聞こえた。
「蜜は取れたんだな」
「は...い...」
そう返事をすればその刹那目の前に冷気が走った。
「『氷檻アイスロック』」
オーリの魔法は瞬時にマイルビーの巣とリラの周りにいたマイルビー達を氷漬けにした。
蜜を渡さなきゃ...
蜜の入った麻袋を抱え、少しでもみんなの元へ行こうと地面を這った直後暖かい何かに包まれた。
「もう十分よリラ」
「シリー...これ...お願い...ね...」
リラは麻袋をシリーに預け、目を閉じた。

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