2つの世界の架け橋

明人

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複雑な気持ち

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セシェールスに雨を降らせる任務とエナの薬の調合を頼むため、メンバーは雨を降らせる役のオーリ。そのオーリの魔力を回復させるためのゼル。人間と交渉できるようにリラ。そして、セシェールス近くの森に住んでいるという情報しかないガルディアの友人を探すためにリヴェアがついてくることとなった。
シリーは王不在の間代わりに仕事を行うため、クウリによって強制的に作戦不参加となった。
シラビシも療養の名目でリラの護衛を行っていたが、護衛が代わりにいるのならいい加減本職に戻れと団長に呼ばれたのだった。
セシェールスに向かう馬車の中でリヴェアはリラの正面に座りふんと鼻を鳴らす。
「言っておくがボクはお前なんか守りたくないんだ!だが、シラビシがまたこいつと任務に行くとなると遂にボクの親友の座が怪しくなる!!」
リヴェアは隣のオーリをビシッと指さし、頭を抱える。
「それを防ぐためボクは嫌いな貴様の護衛を買って出たんだ!なんでボクがこんなことを...っ」
「やかましい。文句を言うなら帰ればいいだろう」
「随分と生意気な口を叩くじゃないか。遊んでやろうか?」
オーリに明らかな敵意を向け、剣に手をかけたリヴェアを王はひと睨みで怯ませた。
そんな空気を緩和させようとリラが口を開く。
「で、でもリヴェアさんではなく他の方に護衛についていただくことも可能だったのでは?」
「はぁ?お前立場分かってる?人間で、王の婚約者で光と闇の支配者で、猫人団の後見を得た。そんなお前を殺したいと思ってる奴なんて山ほどいるよ。他のやつになんて任せられないからボクが来たんだろ」
「リヴェアさんは私の事殺したいとは思わないのですか?」
当たり前のように首を傾げるリラにリヴェアは深いため息をついた。気だるげに足を組んで頬杖をつく。
「嫌いと殺すが直結するには恨みや憎しみが要る。ボクはお前に対してそこらの感情はない。シラビシを助けてくれたことには感謝している。が!シラビシが特別視しているお前のことは嫌いだ!!」
「貴様は大してあのシラビシという男に好かれてなさそうに見えたが」
「オーリさん!!言っていいことと悪いことがあります!!」
ぎゃーぎゃーと言い合いをしている3人を見てゼルはうるさいと眉をよせつつ、少しばかりの疎外感と複雑な苛立ちを覚え不快感を増幅させていたのだった。
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