怖くていい人

明人

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乙女の悩み

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私は遅まきながら、藍くんのことが好きだと自覚した。
猫アレルギーなのに子猫を助けたり、虐められていた人を助けたりする優しいところも、お礼の消しゴムを妖精の仕業にしちゃうお茶目なところも。リンゴジュースを落とした私を笑った時の笑顔が可愛いところも、今振り返ってみると全部好きだ。
『なら11時。猫通り商店街の猫カフェ来い』
そんな人にお出かけに誘われたんだけどどうすればいい!?!?
私は今まで生きてきて1番動揺している。
まずこのお誘いは何なのか。
多分私が深田先生に抗議しに行ったことに対するお礼だろう。勿論それ以外の深い意味はない。分かっている。
だが、藍くんに深い意味は無いが私の方には深い意味があるのだ。
普通で居られる!?だって藍くんが目の前に居て喋って隣に居てって私の心臓保つ!?!?生きれる!?!?
花巻さんのような美人と付き合ってきたかっこいい藍くんが私なんかを好きになる訳がない。知っている。付き合ってるのかと聞かれた時即答で否定したことも忘れていない。
私に可能性なんてないのだ。
そう思うと少しだけチリッと胸が傷んだ。
けど、分かりきったことなら明日を全力で楽しもう。私を好きになる可能性なんてないのならどう思われたっていいだろう。何も気にしなくていい。
「よしっ!気合い入れて可愛くしていこ!ワンピース着ちゃおうかな~」
これから一生来るのことのない最大の機会だ。楽しまなきゃ損だろう。
自分の好きな人とデートができる。そう思っているのは私だけだが、沢山楽しもう。
「猫カフェ前って言ってたけど猫カフェ行く気なのかなぁ。猫アレルギーなのに」
猫を助けたあの様子から猫は嫌いじゃないだろうけど、アレルギーが心配だ。
マスクとあとアレルギー用の目薬持っていっとこ。バンソーコーとティッシュとかもあってもいいよね。
私は遠足前のような気分で日曜日のための準備をしていった。
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