怖くていい人

明人

文字の大きさ
上 下
58 / 64

放課後

しおりを挟む
俺に攻撃をしていた連中引きつった表情のまま立ち尽くし、俺が立ち上がっても誰も攻撃はしてこなかった。
「あいつはどこに居る?」
俺が一歩近づけば奴らは一歩後退する。
「聞こえてねぇのか?あいつは今何処にいるのかって聞いてんだよ!!!」
俺の怒声にビクリと肩を震わせた奴がおなじく震えた声で答える。
「し、知らねぇよ!!俺達はただお前をぶっ倒して電話したら動画見せろって言われただけで...」
「動画?」
「女がヤられてる動画を見せるからその時のお前の様子も撮影してろって...」
そういうことか!
答えた男の胸ぐらを掴み、締め上げる。
「花巻は何処だ!!」
「しらねぇって!!」
さらに締め上げても返ってくる言葉は一緒だった。
その時携帯が鳴り花巻かと確認もせず電話に出る。
「てめぇ今何処に『藍~!!!!』
鼓膜が破れるかと思うほどの声量に思わず携帯から耳を離す。泣きじゃくっており少し聞き取りづらい。
「その声桜音か?悪いがお前に構ってる暇ねぇんだよ」
『未明がヤバイかも知れん!!』
「何か知ってんのか!?」
『未明が花巻に呼び出されて危ないやろうから場所だけでも分かるようにうちと電話繋いで会いに行ったんや。そしたらちょっと話した後にやっぱり争っとるような音して、未明が倒れたような音して...。バレて電話切られて電源も切られて...っ』
嗚咽が酷くなり、喋りづらそうにしている桜音の代わりに聴き慣れた声が聞こえた。
『藍くん。聞こえるかな?』
「山中?」
『僕も桜音さんから電話貰ったんだ。最初の呼び出しが学校の前だったことは確定してる今二人で学校の前に居るんだ』
「学校だな」
すぐにバイクに向かうが、山中から待ってと声がかかった。
『大体の場所のルートは田中さんが桜音さんに話してくれたので分かってる。でも明確な場所が分からない』
「しらみつぶしに探すしかねぇだろ。わかんねぇってごちゃごちゃ悩むよりな」
バイクのエンジンをかける。山中はバイクのエンジン音に負けないような声で言った。
『そんな暇もないかも知れない!』
「じゃあどうしろってんだよ!!!」
自分でも驚くほど声が出た。山中の声はあくまで落ち着いていた。
『藍くん。君なら分かるんじゃないかな?』
「俺が?」
分かるならとっくに向かっている。一体
何を言い出すのか。
『花巻さんは嫌いな桜音さんは呼ばず、田中さんだけを呼び出した。どうしてだと思う?』
「時間がねぇつったのはてめぇだろ!結論から言え!!」
『分かった。君の好きな田中さんだから花巻さんは彼女だけを選んだんじゃないかな。桜音さんを巻き込んだのも彼女にダメージを与えるため。そう考えれば辻褄が合うんだ』
「...俺への復讐って訳か?」
『そうだね。でも、それだけじゃないと思う。多分...彼女はまだ君を好きだからこそ、君に好意を向けられてる田中さんに苛立って、君のことも許せなかったんだと思う。ただの恨みだけじゃない。だからこそ、君なら彼女の居場所に覚えがないかと思って。彼女が行きそうな場所。もしくは、彼女と行った思い出の場所とか』
「そんなもんが分かりゃとっくに...」
ふと、田中が最初に呼び出された場所が学校の前だというのを思い出した。
放課後何度かあいつに連れて行かれた場所があった。
「山中!大体のルートわかってるつってたよな!?」
『う、うん。田中さんの発言から察するに学校の前の通りを右に曲がった細い路地方面だと思う。まるつきっていうラーメン屋さんがある方面だって言ってた。でもそこまでしか分からない。そのあとすぐ電話は気付かれちゃったらしいから』
「それだけ分かりゃ充分だ!!」
『待って!!僕も行く!場所は!?』
「お前らは学校の前に警察と救急車呼んで待ってろ。これは俺の問題だ」
山中の声がまだしていたが強制的に電話を切り、アクセルを全開にして走り出した。
しおりを挟む

処理中です...