2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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見惚れる

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レオンの気配を避けて逃げていたシリーとハインとノーウィル。だが、レオン以外の気配には随分近づくまで気づかなかった。
目の前に現れたブルーノとベルにお互い目を丸くする。
同時にシリーはしまったと察し、すぐに後ろに飛び退く。
「嬢は流石だな」
ハインは咄嗟に後方に蹴りを放つも、手応えはなかった。同時に視界に映る黄金の立髪。目の前にしてようやく、その威圧感を直に受ける。
恐ろしさ以上に、猛々しい美しさに見惚れた。
しかし、その視界は一瞬で奪われる。
「何を惚けている。戦場ならその目は貫かれているぞ」
顔面を覆う温かな感触でようやく顔面を掴まれたのだと悟る。
ハインは鋭く伸びた爪にも関わらず、自分を傷つけぬように最大限に配慮された力加減。肉球があるが剣だこなのか一部分のみ固く、それ以外は柔らかい感触と毛の柔らかさ。少し香ばしいような体臭と、あまりの情報量の多さに頭が沸騰し倒れた。
「なんだ?力は込めたつもりはなかったが...」
『多分放っておいていいやつよ』
シリーの言葉通りひとまず放置する。
「残ったのは嬢とベルか。さぁ、どちらから逃げる?」
ギラギラとした瞳に2人とも怯む。
「シルヴィア様どうぞお先に」
『ふざけんじゃないわよ。どう見たってあの顔逃げた方から追う気でしょ』
ジリジリと後退という選択肢しか取れぬ2人。
「逃げぬのならば、こっちからいくぞ」
一瞬にして詰められた距離、ベルは大きく後ろに飛び退く。だから、それと同じように目の前に迫る爪を背を逸らして避ける。
「いい反応だ」
褒められたと思った直後視界の端に動く何かを反射的に防げば、強い衝撃と共に木に体を強打することになった。
「だが、まだ鍛錬が必要なようだな」
「は、はい...」
レオンはふとベルの背にいたはずのブルーノが消えており、同時にシリー、ノーウィルの気配も消えていることに気づく。
「あの2人も気配を消すのが随分上手くなったものだな」
何処か嬉しそうな声を漏らしながらレオンは走り出す。
レオンがいなくなった後ベルは大の字になって空を見上げる。
ふと自身の頭に手を置きポツリとつぶやいた。
「そんなに...嫌じゃなかったな...」
体についた土を払いながら立ち上がり、脱落者達の元へ向かった。
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