2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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興奮

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シラビシとレオンの様子を遠目で確認したハインはキラキラと目を輝かせながら、叫んだ。
「流石猫人族!!!あれほどの高さを跳べるなんて!!人型をしておきながら空を羽ばたける鳥人族も素晴らしいが、身体能力の高さで猫人族の方が上なようだ」
ハインの興奮気味な様子にシェードは少し引いた眼差しを向けていた。
「興奮してる場合じゃないわよ。シラビシのバカが速攻で捕まったから私達のチームは一人分不利だわ」
走りながら唸るシリーにシェードも頷く。
「ノーウィルくんを守るゲーム...。立ち回りが難しいですね。レオン団長相手には逃げるのも簡単じゃないですし」
「レオンおじちゃん怖いんだよね...。でも今のところ気配は近くないから多分ブルーノ達の方かなぁ」
ノーウィルの言う通り、レオンの肌を刺すような気配はしない。
シラビシを捕まえた以上ブルーノのチームを狙っているのかも知れない。
「この戦いに勝つにはどうすればいいか考えないとね」
レオンの気配がない内に作戦会議を始める。
「ルールとしてはどちらかの将であるブルーノくん、ノーウィルくんが捕まると負け...。そして今の鬼役であるレオン殿の動きからして公平に数を減らしていく算段かも知れない」
「正直な話うちの団長と肩を並べるレオン団長から逃げ切れる気はしません。多少の時間は生き延びれるでしょうが...」
シェードの言葉にシリーもノーウィルも頷いた。
「身体能力に優れた君達が無理ならば人間の私にも無理な話だ。そうなるとどうやって鬼に相手の将を捕まえさせるかという話になるな」
さてどうするかと考えていた時、迫ってくる威圧感に気付く。
「レオン団長が来る!!」
シェードの声でシリーが狼の姿にを変え、背中にノーウィルを乗せて走り出す。
「おおおお!!!獣の姿にもなれるのか!!美しい!!!」
『どーも』
シリーに並んで走りながらシェードがハインに向かって口を開く。
「ずっと気になっていたんだが君キャラ変わりすぎじゃないか...?この間は気安く近づかないでくれとかなんとか言ってなかったか...?」
リラに嫌われている訳ではないと説明は受けたが、正直リラの前でそう嘘をつくしかなかったのだろうと想定していた。
だというのに以前の冷たい態度をとってきた人物と同一とは思えないほどに目を輝かせ、叫んでいるのだ。訳もわからなくなる。
「このテンションでいくのは迷惑だろう?抑えるのに必死だったんだ。その件で君達に不快な思いをさせてしまったようで申し訳なかった」
「あ、いや...俺の方こそちゃんと話も聞かず決めつけて悪い」
走りながら双方にいい雰囲気が流れていたその時だった。
「話は終わったか?」
あまりにも近くから聞こえる低い声に反射的にシェードがハインを庇うって声の前に割り込む。グンッと服が掴まれ、持ち上げられる感覚があった。
「シェード殿!!」
『ハイン!!あんたも捕まるわよ!!』
シリーの言葉にハインは伸ばした腕を下ろし、駆け出す。
去っていく背を見送り、レオンは持ち上げているシェードに目を向けた。
「人間を庇うとはな。どういう風の吹き回しだ?」
「気付いたら体が動いてたんです...」
シェードはため息をついたあと、小さく笑う。
「昔、じいちゃんが言ってました。人間とは時に酷く恐ろしく、時に酷く魅力的だと。その言葉の意味が少しだけ分かった気がしました」
「なるほどな...。だが、こうも容易に俺に捕まるとはスウキの訓練も見直した方が良さそうだと伝えておこう」
「そ、それは...」
有無を言わせぬ雰囲気にそれ以上は言えなかった。
飄々としている犬人団団長のスウキ。
だが、レオンのことをライバル視していることを知っている。そんなレオンからそんなことを言われた日にはただでさえハードな訓練がどうなるか想像もしたくない。
震えるシェードはシラビシ共にリラ達の所で待機となった。
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