2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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混ざり合った瞳

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以前の鬼ごっこで使った森にたどり着く。前回は主催者としてみんなの様子を見るだけだが、いざ走ることにしてみると開けていて見通しもそれなりにいい。
「確かに中庭と比べると解放感あっていいな~。中庭はどうしても城の壁に囲まれてるから閉鎖感が少しあるんだよね。巡回してくれてるって話だし、団員の人に会ったら事情話せばいいよね」
よしと大きく息を吸った後、走り出した。その体が不意に宙に浮かぶ。
「へ...」
驚いたリラの口が塞がれ、何者かに抱え上げられていると気づいた。
突然のことにパニックになり、どうすればいいか思考を必死に巡らせる。
今1番まずいのは自分が殺されることだ。
命が惜しいとかそんな話ではなく、自分は魔王の客人の立場であり、城に逗留している人間の部隊の隊長の妹だ。そんな自分が人間、魔族、どちらに殺されたとしても双方の大きな問題になるだろう。
そうなれば人間と魔族の共存という夢が砕け散り、仲の良い者達も含めた殺し合いが始まる。
それを避けるにはまず、殺されないことが最優先だ。
今殺されていないことを考えれば殺すことが目的ではないだろう。
そうだとするなら、抵抗する方が危険だ。
大人しくしていたリラは森の奥深くの、洞窟の中に連れてこられた。少しジメジメしている。幸い外が満月のためかろううじて辺りの様子が確認できた。
ゴツゴツした地面に降ろされたところで改めて相手を確認する。
相手は青と赤の鱗に加え、混ざり合った瞳は紫の蜥蜴人族だった。
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