2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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轟かせる

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これはまずいとリラが考えこんでいると、ゲネルは目もとを拭いながら口を開く。
「王の座など今更興味はない。嫌悪する者共など返り討ちにすればいい」
「何で火種増やすような真似しようとするの!?」
ただでさえ大火になり得るというのに、愚王の名を轟かせようと言うのか。
「正直野に返したいところだが、野に放せばクウリ辺りが確実に殺すよう考えるだろうな」
陛下大好きクウリならやりかねないのが怖いところだ。
「おい貴様。俺を拾い物か何かだと勘違いしているようだな」
「拾い物は自身の意思で拾い上げて初めて成り立つ。自ら飛び込んできた貴様はただの侵入者だ」
睨み合っているゲネルと王の間にリラが割って入る。
「と、とにかく!今はゲネルさんをどう皆さんに説明するかですよね。まず、殺戮王だとバレてはいけないし、王の座に興味がないことも証明しなければならない…。口で言ってもきっと信用してもらえませんよね?」
「魔力の誓約で証明すればいいだろう?」
「魔力の誓約?」
リラがゲネルの言葉に首を傾げると王が補足する。
「己の魔力に誓約をかけ、その誓約が反故されれば自身の魔力を世界に返すというものだ。魔族同士で争いが耐えなかった時代は誓約をもって忠誠を誓っていた。誓約自体酷く魔力を消耗するため、今では戦力を削ぐ行為だと使われていないがな」
「なるほど...。魔力の多い魔族ならではの手法ですね」
リラが関心していると、ゲネルが立ち上がり膝の汚れを払った。
「俺が疑う奴らの前で誓約をすれば問題は解決するだろう」
「あぁ。その後は好きにしろ」
王はゲネルには興味のない様子で視線を外す。
「じゃあデューク!じゃないな、えっと…」
「私?自己紹介してなかったですね。カーリラです」
「カーリラ!カーリラのやらなければならないことが終わったら結婚しよう!」
リラの手を握ろうとするゲネルの手を王が手刀で殴り落とす。
「彼女は俺の婚約者だと言ったはずだが...?」
「相手を決める権利はカーリラにもあるだろう。俺が誓約するのは王にならないということだけだ。彼女を嫁にするのを諦めた訳じゃない」
「誓約をしたら森に帰れ」
「彼女の傍に居るに決まってるだろ。誓約には王にならないに加えて、彼女を嫁にするも加えてやるよ」
「それはやめてください!!!」
リラが思わず割り込むと、ゲネルがリラに視線を向ける。
「カーリラはもう心に決めた相手が居るのか!?」
「え!?」
一瞬リラの頭によぎった顔があったが、真っ赤になって叫ぶ。
「だから!!今はやらなきゃいけないことが優先なの!!!」
「そればかりだな。じゃあ、まずそのやらなきゃいけないことをこなしてから次のことを考えよう」
「今はまず皆に貴方をどう説明するかなんですけどね…」
「カーリラの未来の夫と説明してもいいぞ」
「カーリラ。この男を俺が始末すれば話は早い」
「真顔やめてください陛下!!!」
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