2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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1番

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夜、中庭に訪れるとシルヴィアが言っていた通りカーリラの姿があった。
先日とは違い、大木に背を預け俯いている。
きっと彼女の顔を曇らせている原因は自分だろうと想像出来た。
彼女の頭の中が自分で埋まっていると思うと優越感を覚えるが、彼女は真剣に悩み苦しんでいることを考えると早く真実を伝えなければならないだろう。
リオンの姿になり、カーリラに歩み寄る。
足音に気付いて顔を上げたカーリラは少し複雑な表情を浮かべつつ、笑った。
「今晩は。リオンさん。貴方に会いたかったんです」
「それは光栄なことだ。俺に話でも?」
彼女の悩みが自分である確信はまだない。
真実を明かすのは話を聞いてからでも遅くはないだろう。
カーリラは頷いて口を開いた。
「あの、お手をお借りしていいですか?」
疑問符を浮かべつつ手を差し出せば、カーリラの細く柔らかい指が絡められた。
途端に鼓動が早くなり、早くなった鼓動は顔に熱を集める。反射的に片手で隠していると、真剣に手を眺めていたカーリラがふと顔を上げた。
視線が混じり合い、こちらの反応に気づいたのかつられるようにカーリラも赤くなっていく。
すぐに手が離され、カーリラは頭を下げた。
「す、すみません!!いきなり手を握るなんて...」
「い、いや、構わない。少し驚いただけだ...」
暫し気まずい沈黙が流れる中、カーリラがポツリと呟いた。
「私は、リオンさんが好きなんだと思います」
衝撃の言葉に目を見開く。
嬉しい言葉だが、告白にしては声音がやけに硬かった。
「...でも、と。何か否定の言葉が続きそうだな」
カーリラは胸元を握り締め、真っ直ぐ見つめてくる。
「貴方の容姿や、雰囲気、言動がとても綺麗で素敵だなとそう思いました。多分、私が魔族のことを何も知らず貴方と出会っていれば素直に私は貴方に恋をしていたと思います」
真剣に真っ直ぐ思いを伝えてくれるこの少女がやはり愛おしい。
小さな笑みすら浮かべ、うんと頷いた。想像通りのでもと続く言葉を聞きながら。
「でも...私はやっぱり陛下が好きです。私を守ってくれる陛下が。国のために私のために全力を尽くしてくれる陛下が。優しくて温かいあの方が、1番好きなんです」
苦しげに顔を歪めるカーリラを強く抱き締める。
「カーリラ。俺もお前に聞いて欲しいことがある」
「え...?」
「俺は...」

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