2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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ざわめき

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何やら城がざわめいている。
そう感じたのはシルヴィアだ。
特にハッキリと騒がしいと感じた訳では無いが、メイドや団員が何やらひそひそと話をしているを
共通点は王の執務室から出て来ているという点だった。
「陛下。入るわよ」
周りの目のこともあり、一応呼び名を改めて入室し、ざわめきの原因はすぐに分かった。
いつも渋面に近い顔を貫いている弟の柔らかい表情。
元々魔族の中でも整った顔立ちの男の緩んだ表情、更にいつもとのギャップに驚きと衝撃を受けたことだろう。
更に放たれる気配もいつもの鋭さが掻き消え、ふわふわとメルヘンチックな雰囲気が溢れている。
シルヴィアはニヤーと笑い、王を肘で小突く。
「ゼル、リラと何かあったんでしょ」
「あぁ」
明らかに高揚した声音に、シルヴィアのうきうきも増していく。
「まさか好きって言われたとか?」
その問いには答えず、ゼルは小さく笑った。それが答えだ。
「よくやったじゃないのよ!!! 」
バシバシと背を叩けばいつもなら不快そうに顔を歪め、手をはたいて来るような男がニヤケ顔で文句の一つも言って来ない。
相当浮かれていると分かり、シルヴィアまで嬉しくなった。
だが、そんな執務室にノックもなしに飛び込んでくる者が居た。
シルヴィアが怒鳴ろうと顔を向け、相手の姿に目を見開く。
ノックもなしに飛び込んできたのは息を切らしたクウリだった。
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