2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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「ただいま...」
無意識に口から漏れた言葉。
見慣れたはずの孤児院は懐かしくて。
走り回る子供達の中には知らない顔も増えていた。
だが、知っている顔も沢山見える。
その1人がリラに気付き、目を見開く。
「ねぇ...ちゃん...?」
信じられないと滲む声でリラを呼ぶ少年。
身長が伸びて顔つきも大人に近付きつつあるが、分かる。
リラは自然と微笑んだ。
「ただいま。スイキ」
よくイタズラをして叱っていた。
別れも言えず家を離れたあの日も彼を叱ったことを覚えている。
一度だけ手紙で安否の旨は院長に伝え、生きていることは知っていたはずだ。
それでも、きっと裏切られたような寂しさを覚えたことだろう。
歳上としてお兄さんの顔をしていたスイキの顔がみるみる歪み、涙が溢れる。
「ねぇちゃん!!ねぇちゃん!!!」
飛びつくように抱きつかれ、リラは優しくスイキの頭を撫でた。
「なんにも言わずいなくなっちゃってごめんね。元気そうで良かった」
「何で急に居なくなるんだよぉ!!!俺ずっと待ってたんだよ!!俺が悪い子だからねぇちゃんが居なくなったんじゃないかって...っ。だからいい子になるから帰ってきてってずっと...っずっと...っ!」
「うん。ごめんね。待っててくれてありがとう」
「ねぇちゃんの馬鹿ぁ!!!」
スイキの泣き声は孤児院中に届き中に居た子供達も外に出てきた。
そして、リラの姿を見つけた途端皆スイキのように泣き始め、リラを知らない子供達も姉、兄達につられて泣き始めた。
何事かと飛び出してきた院長はリラの姿を見つけ、スイキと同じように目を見開く。
「ただいま。お父...」
院長は強く、強くリラを抱き締めた。
確かめるように、そして絞り出すように声が漏れた。
「お帰り...。カーリラ」
リラは大きなその背中に手を回し、応える。
「ただいま。お父さん」
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