2つの世界の架け橋 第2巻

明人

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人質

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残されたゲネルは、今すぐにでも走り出したい衝動を必死に抑える。
子供達の中には魔力が強い者もおり、誰がフェリシアの仲間かまだ分からない。
奴等が本当に子供達に手を出さないとという保証がない以上、ここを離れる訳にはいかない。
「ねぇ!ゲネルさん!姉ちゃんは?」
駆け寄ってきたスイキにゲネルはあくまで平然と答える。
「少し出てくると言っていた。暫く戻らんだろう」
「ええ!!姉ちゃんとドラゴン滑り台したかったのに...。そういえばヘレナ姉ちゃんとバニダ兄ちゃんもいないけど姉ちゃんについて行ったの?」
「いや...その二人については俺も分からんがいつから居ないんだ?」
「朝ごはんの時は居たんだけど姉ちゃんのこと報告しようとしたらもう見当たらなくて」
ゲネルの中で何かがザワリと音をたてる。
「ヘレナ姉ちゃんとバニダ兄ちゃんなら朝ごはんの後ナナノに薪割り教えるって森に行ってたよ!」
話を聞いていたらしき幼い少女の言葉にゲネルはスイキに問いかける。
「ナナノとはどんな奴だ? 」
「俺より背はちっちゃくて。青髪で最近入ってきたからまだ孤児院のこと良くわかんないから色々教えてるんだ!あ、さっき話してたフェリシアと一緒に来た一人だよ!」
ゲネルは大きく目を見開く。
居ない子どもと一緒に居たフェリシアの仲間。
連れ去ったと考えるのが妥当だろう。
奴等が本当に子供達を連れ去ったのならそれは人質の役目。
カーリラが行かないと言った時の保険か?
いや。それは孤児院の子供達で十分なはずだ。
では連れ去った意味は?
不意に掠めるフェリシアの言葉。
『ええ。貴女がついてきてくれるなら、が子供達を傷つけることはないわ。我が主様に誓って』
嫌な想像がゲネルの頭を駆け巡った。
今回の件はカーリラを人質にとった流れといい、確実に王を狙っている。
今回の件も王を誘き出すための罠の1つだとするならばーーー
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