君は花のよう

明人

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行方

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ルルーアの手紙を受け取った直後、頭が真っ白になった。
「ヴァールリック様!」
セドの声でハッと我に返る。
「すぐに捜索させますか?」
反射的にあぁと頷こうとしたのを遮ったのはヘレナだった。
「どうして?逃げたいのなら逃してあげればいいじゃない」
「ヘレナ様!」
攻めるようなセドの声を受けてなお、ヘレナは続ける。
「言ったわよね?貴方と隣を歩くのなら、あの子にも相応の覚悟がいる。どういう理由かは知らないけど、逃げ出すようなら追わないほうがお互いのためよ」
「君の言葉を何度も考えた。僕が彼女のために何が出来るのか。離れたほうがいいのかとも考えた。だが、僕の答えはすぐに出た。彼女の幸せより何より、僕が彼女が居なくては駄目なんだ」
「自分のためにあの子を縛り付けるというの?」
「そうだ。どれだけの時間がかかろうと彼女に僕を好きになってもらう。そのためには、まずどうしてここを去ったのか彼女の口から聞く必要がある。僕は一度、彼女を手放そうと考えたことがある。だが、その時彼女は言った。『私の気持ちを勝手に決めるな』と。だから、彼女の口から理由を聞き全て改善していく。どんなことだろうと」
ヘレナは驚いたように口元を覆ったあと、愉快そうに笑う。
「凄い執着ね。面白そうだわ。見物しててあげる」
リックはすぐにルルーアの情報を集めた。
行商の馬車で隣町に向かった情報は得た。だが、その後の消息があまりにも不透明でリックが直接調査に向かうことにした。
ルピィはルルーアのことを聞いて激怒したが、必ず連れ戻すと伝えると案外あっさりと大人しくなった。だが、ルルーアのことで心穏やかでいられる自信がないことを伝えると、ユウラの影響を避けるためルピィはサファイアの指輪の姿になった。
その指輪をつけ、ルルーアを探す。
街に来たことは確かで、ザハスという仕立て屋の老人と居たという情報を得たため聞きに行った。
「ルルーアという少女?存じ上げませんねぇ」
「目撃者の話では貴方とぶつかった女性がルルーアの可能性が高い」
「あぁ。彼女にはここに送って貰った後別れたので行方は分かりません」
「そうか...。邪魔をした」
その後もルルーアに似た者を目撃したという話からルルーアが足を運んだという者の家まで行くが外見の特徴が違う、良く似た別人だと言われたりと情報はいつまで経っても得られなかった。
足取りが見えなくなり、更に隣町にも足を運んだ。
だが、そこではルルーアの情報が一切なく最後の目撃があったナリストンに戻ってきた。
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