音楽魔法具店の歌姫

ほか

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第1幕 歌うバロタン・ボックス

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「――うちの品物に、ミュージカリー・カップが紛れ込んでいないかって?」

 話を切り出されたジュリアは心外とばかりに瞳を大きく見張る。

「冗談でしょ。ここのオルゴールは一つ一つ職人が作ってるの。才能を奪い取る道具なんて、そんな怪しげなものなんか一つたりともないわ。保障できる」



 深く首肯するも、ヒューは食い下がる。



「では、貴店の商品を購入した人が、音楽の才能を吸い取られた、もしくは、才能が突然芽生えたという話はないかな」



「そんなの。――いえ、待って」



 即座に否定しようとしたジュリアがふいに細い眉をすがめたとき、景気のよいドアベルの音が来客を告げた。



 ガラスの扉が開くと同時に、ジュリアは目線でティナたちに詫びると、やってきた青年の応対に舞い出る。



「やぁジュリア」



 ウェーブがかったグレイの髪をした青年だ。



 肩から斜めがけにしているのはパーヴェル音楽学校の紋章の竪琴が描かれた鞄。

 年齢は十代後半――上級生のようだ。

 首から下げた細長く黒い入れ物には楽器が入っているのだろう。

 チュチュちゃんの先輩にあたるわね、とティナは類推する。



「いらっしゃい。このあいだはお買い上げありがとう。クラリネットの技術テストはどうだった?」



 ジュリアに愛想よく声をかけられるなり、青年はぱしりと、クラリネットケースの横のたくましい胸をたたく。



「ばっちりさ! いや、不思議だよ。このところずっとよく眠れないし食欲も出なくて参ってたのに。ここで気分転換用にオルゴールを買ってからすごく調子がいいんだ」



 そんなふうに報告すると、照れたようにこめかみをかき、先生にも実力以上の結果だって言われちゃったよ。いいんだか悪いんだかね、と苦笑する。



「いいに決まってるじゃない。ここは音楽の発展に寄与するためのオルゴール屋ですからね」

 腕を組んで重心を右にあずけ、勝気な笑みを浮かべるジュリアに、青年は手をふって応える。

「はは。ありがとう!」

「今日はなにか見ていく?」

「いや、一言お礼が言いたくて。また楽理の試験が終わったら来るよ!」

「待ってるわ」
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