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最終幕 きみに歌声をもう一度
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オリーブは嫣然と微笑んだ。
胸元に下がっている金の鎖を手に絡めると、トップをゆらゆらと揺らしてもてあそぶ。
「あなた、これを世界方々探し回ったんですってね」
妖艶さは一瞬。直後それに変わるのはあどけない微笑み。愛らしい少女のような。
「でも残念。先に見つけたのはあたし。こういうのは早い者勝ちなの」
くるくると纏う雰囲気を自在に操る様は、舞台女優は人々を魅せてこそ――そう言っているかのようだ。
どうあっても譲る気はないということか。
かすかな苛立ちが、ヒューに奥歯を噛み締めさせる。
――いや、焦るべきではない。交渉は粘りがかんじんだ。
「トルコのオークションに出回っているという情報を掴んで駆けつけたが、銃声を放ち混乱に乗じて盗み出すなど、父らしい卑怯な手口だね」
オークションの起きた混乱はイシャーウッドの手の者の仕業だというのは、かつてのつてを頼って調べたら聞こえてきた情報だが、ヒューは確信していた。
父は銃だろうとナイフだろうと平気で手にする
かつての歌い手から奪った品を今度は新たな歌い手に売りつける――才能の循環のためならば。
「ほんとね、あなたのパパって人でなし」
現王座に君臨する歌姫は、つまびくように言葉を発す。
「でも、あたしは嫌いじゃない」
ワインレッドの瞳が猫のように大胆不敵な色を讃え、ヒューを捕らえる。
「座長はあたしの夢を叶えてくれるんだもの」
「……」
「誰かの才能を奪って頂点に立つことは夢でもなんでもない。強欲だよ」
ひばりのような笑い声が、華やかな一室を満たす。
そこを統べる女王は無邪気に問うた。
違いなんてあるの? と。
「ねぇ、いいこと教えてあげようか」
しゃなり、しゃなりと衣擦れの音を響かせ、オリーブはヒューににじりよる。
胸元に飾られた涙を強調しながら。
「あなたのパパにね、もし、ある条件をあなたが承諾すればこのネックレス、あなたに返してもいいって言われてるの」
驚異と同時に警戒が駆け抜けたヒューの瞳を堪能するように見つめ、マゼンダの唇はまた、つまびく。
「あたし? ええ、かまわない。デビュー公演さえ無事終えれば、あとはほかのことで名声を維持するもの」
息をつめ、
罠か、策略か――その裏に潜むものは。
――だめだ、とヒューは思考を切り上げた。
そして、請われるままに、問う。
「条件とは?」
あのエメラルドを――どこか、彼女の瞳のライムグリーンにも似たあの粒を前にすると、なんとしてでもそれを取り返すと。
それ以外には、考えられない。なにも。
「なんでもする? 愛しい彼女に歌声を返すためなら」
どんなに理不尽にいたぶられても。
破滅を望まれてすら。
ヒューははっきりと、頷いた。
胸元に下がっている金の鎖を手に絡めると、トップをゆらゆらと揺らしてもてあそぶ。
「あなた、これを世界方々探し回ったんですってね」
妖艶さは一瞬。直後それに変わるのはあどけない微笑み。愛らしい少女のような。
「でも残念。先に見つけたのはあたし。こういうのは早い者勝ちなの」
くるくると纏う雰囲気を自在に操る様は、舞台女優は人々を魅せてこそ――そう言っているかのようだ。
どうあっても譲る気はないということか。
かすかな苛立ちが、ヒューに奥歯を噛み締めさせる。
――いや、焦るべきではない。交渉は粘りがかんじんだ。
「トルコのオークションに出回っているという情報を掴んで駆けつけたが、銃声を放ち混乱に乗じて盗み出すなど、父らしい卑怯な手口だね」
オークションの起きた混乱はイシャーウッドの手の者の仕業だというのは、かつてのつてを頼って調べたら聞こえてきた情報だが、ヒューは確信していた。
父は銃だろうとナイフだろうと平気で手にする
かつての歌い手から奪った品を今度は新たな歌い手に売りつける――才能の循環のためならば。
「ほんとね、あなたのパパって人でなし」
現王座に君臨する歌姫は、つまびくように言葉を発す。
「でも、あたしは嫌いじゃない」
ワインレッドの瞳が猫のように大胆不敵な色を讃え、ヒューを捕らえる。
「座長はあたしの夢を叶えてくれるんだもの」
「……」
「誰かの才能を奪って頂点に立つことは夢でもなんでもない。強欲だよ」
ひばりのような笑い声が、華やかな一室を満たす。
そこを統べる女王は無邪気に問うた。
違いなんてあるの? と。
「ねぇ、いいこと教えてあげようか」
しゃなり、しゃなりと衣擦れの音を響かせ、オリーブはヒューににじりよる。
胸元に飾られた涙を強調しながら。
「あなたのパパにね、もし、ある条件をあなたが承諾すればこのネックレス、あなたに返してもいいって言われてるの」
驚異と同時に警戒が駆け抜けたヒューの瞳を堪能するように見つめ、マゼンダの唇はまた、つまびく。
「あたし? ええ、かまわない。デビュー公演さえ無事終えれば、あとはほかのことで名声を維持するもの」
息をつめ、
罠か、策略か――その裏に潜むものは。
――だめだ、とヒューは思考を切り上げた。
そして、請われるままに、問う。
「条件とは?」
あのエメラルドを――どこか、彼女の瞳のライムグリーンにも似たあの粒を前にすると、なんとしてでもそれを取り返すと。
それ以外には、考えられない。なにも。
「なんでもする? 愛しい彼女に歌声を返すためなら」
どんなに理不尽にいたぶられても。
破滅を望まれてすら。
ヒューははっきりと、頷いた。
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