ラブ・クラッシャーの仮面を剥いで

ほか

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Secret37.正体暴露

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 オーディエンスがざわめく中、凛とした伊吹の声が会場内に響く。



「玲愛さんと別れた後、地方を中心に活動するアーティストになり、演出の才能ものぞかせていたそうっすね」




 いつものチャラ男口調に伴うのは、ぞっとするほど冷たい視線。



「それもすべて、玲愛さんを亡き者にするための計画。列車で雇った殺人集団を差し向けたのもあなただ」




「――」



 炎の中、立ちあがった織也は。



 あろうことか高々と笑った。

「やるねぇ、きみ」



 ぱちぱちと手をたたきながら、右斜め上のステージ――あたしを抱いた伊吹に定まらない目を纏いつかせる。



「犯行現場をそのまま舞台に上げられたってわけか。傑作だよ」




 そして、箸休めのように付け加える。

「おっと、すねないでね」



 見ているようで、なにも見ていないような危うげなまなざしが向けられ、ぞくりと背筋が震えあがる。



「きみもとてもいい。きれいだよ、玲愛」



 瞬間、抱かれている身体が強く伊吹に引き寄せられ、感じるぬくもりがかろうじてあたしの正気をつないだ。



「きみのその恐怖に苛まれた顔、何年ぶりかな。――言うことをききさえすれば特別に許してあげる。恐怖から解放してあげるよ」



 手の中で、チェスのポーンでももてあそぶように、楽しげに織也は言った。



「僕のところに戻ってくるんだ」



 即座に答えたのはあたしではなかった。



「断固、お断りすると申し上げましたら」



 伊吹の返答に、笑顔のまま、織也は続ける。



「きみは僕のこと、ずいぶん詳細に調べてくれたらしいけど、だったら予想つかなかった?」



 はじめて、その表情にまで織也は邪心をにじませた。



「――この船の招待客の中にも、SCCの人間を紛れ込ませてるってさ」



 ズボンから小型リモコンをとりだし、何度か軽く投げてもてあそぶ。



「舞台も、乗客の命も思うがままだ。遠隔操作のリモコンを使うまでもない。この指ひとつ、パッチンと鳴らすだけで、そこここで心地いい叫び声がきけるよ」



 一段低い声で、下方の中央舞台から、この場の帝王と化した織也は宣告する。



「無為な犠牲を出したくなければ降りて来いよ。高みから見物されるのって、きらいなんだよね」



 月に押し寄せる闇夜のように、じわじわといやな予感が胸を侵食していく。

 まさか。

 伊吹。

 ねぇ、そんなつもりじゃないわよね。
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