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1章 雨宿りはいらない
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日曜日、気分はもやもやしていたけど、なんとか気合を入れて待ち合わせ場所に向かうことにした。だって、「ほんまに?」って喜んでた旭の顔を思い出せばドタキャンするわけにはいかないし、私だって楽しみにしてたんだ。折角誘ってくれたのに、最初から浮かない顔を見せるのは失礼だ。
休日にしか袖を通す機会のない、水色のワンピースを着て、小さなヒマワリのついたお気に入りのパッチンどめで髪をとめる。いざ家を出ると、丁度、茶太郎の散歩から戻ってきた美澄さんと鉢合わせた。
「梓ちゃん、こんにちは」
こんにちはと、私も挨拶を返す。美澄さんは私の兄のお嫁さんで、兄と一緒に近所に住んでいる。活発で、犬好きだという彼女は、たまにこうして茶太郎の散歩を引き受けてくれる。ボブカットの黒髪が眩しい二十五歳の彼女は、私に月と星のキーホルダーを作ってくれた張本人で、私は大好きだ。兄が美澄さんを見つけてくれて、本当に良かったと思っている。
「そんなワンピース持ってたんだ! すっごく似合ってるよ。……だめだめ、飛びついたら毛がついちゃう」
後足で立って私に飛びつこうとしたコーギー犬の茶太郎を、美澄さんが慌てて取り押さえた。普段は犬の毛がつくことなんて気にしない私だけど、今は流石に気にしてしまう。「ごめんね、茶太郎」謝りながら、頭をぽんぽんと軽く叩いてやる。コーギーにしては珍しい尻尾つきの茶太郎は、ふさふさのそれをぶんぶん振っている。
「お出かけ?」
「うん、ちょっとね」
「お友だち?」
屈んで茶太郎の胴を撫でながら訊いてくるのに、私はうっと言葉に詰まる。それを見逃さない美澄さんは、にやりと意地悪に笑った。
「おやおや、梓ちゃんも隅に置けないね」
「そんなんじゃないってば! もー、からかわないでよ」
「はーい、ごめんなさい」
ぺろりと舌と出す美澄さんには嫌味がない。私より九歳年上なせいか余裕があって、だけど子どもっぽい面も忘れてなくて、すごく付き合いやすい。
「いってらっしゃい。そうだ、この前、うちの実家からブドウ送られてきたの。今度食べにおいで」
「行く、絶対行く! ブドウ残しておいてね」
美澄さんのおかげだと思う。いってきますと手を振った私の気持ちは、子どもみたいにるんるんと飛び跳ねていた。
休日にしか袖を通す機会のない、水色のワンピースを着て、小さなヒマワリのついたお気に入りのパッチンどめで髪をとめる。いざ家を出ると、丁度、茶太郎の散歩から戻ってきた美澄さんと鉢合わせた。
「梓ちゃん、こんにちは」
こんにちはと、私も挨拶を返す。美澄さんは私の兄のお嫁さんで、兄と一緒に近所に住んでいる。活発で、犬好きだという彼女は、たまにこうして茶太郎の散歩を引き受けてくれる。ボブカットの黒髪が眩しい二十五歳の彼女は、私に月と星のキーホルダーを作ってくれた張本人で、私は大好きだ。兄が美澄さんを見つけてくれて、本当に良かったと思っている。
「そんなワンピース持ってたんだ! すっごく似合ってるよ。……だめだめ、飛びついたら毛がついちゃう」
後足で立って私に飛びつこうとしたコーギー犬の茶太郎を、美澄さんが慌てて取り押さえた。普段は犬の毛がつくことなんて気にしない私だけど、今は流石に気にしてしまう。「ごめんね、茶太郎」謝りながら、頭をぽんぽんと軽く叩いてやる。コーギーにしては珍しい尻尾つきの茶太郎は、ふさふさのそれをぶんぶん振っている。
「お出かけ?」
「うん、ちょっとね」
「お友だち?」
屈んで茶太郎の胴を撫でながら訊いてくるのに、私はうっと言葉に詰まる。それを見逃さない美澄さんは、にやりと意地悪に笑った。
「おやおや、梓ちゃんも隅に置けないね」
「そんなんじゃないってば! もー、からかわないでよ」
「はーい、ごめんなさい」
ぺろりと舌と出す美澄さんには嫌味がない。私より九歳年上なせいか余裕があって、だけど子どもっぽい面も忘れてなくて、すごく付き合いやすい。
「いってらっしゃい。そうだ、この前、うちの実家からブドウ送られてきたの。今度食べにおいで」
「行く、絶対行く! ブドウ残しておいてね」
美澄さんのおかげだと思う。いってきますと手を振った私の気持ちは、子どもみたいにるんるんと飛び跳ねていた。
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