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2章 青南高校
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若葉町の駅に帰り着くと、凛が言った。
「ねえ、遊びにおいでよ」
翔太は目をしばたたかせる。
「遊びにって、榎本さんの家?」
「そう。今日、これから用事ある?」
「いや、別にないけど」肩の鞄をゆする。「なんで」
「今日が終わっちゃうの、なんかやだなって思って」だから一緒に遊ぼうと凛は言った。
確かに遊ぶといっても、翔太には金がないからゲームセンターやカラオケには行けない。それを凛に見越されているのは悲しいけれどもありがたい。
しかし公園で駄弁るにしても、八月の午後三時はあまりに不向きだった。じっとしているだけで汗が流れるのだ。間違いなく熱中症になってしまう。
「平日だから誰もいないし。お姉さんも、大学の補講なんだって。だから誰も気にしないよ」
はあ、と翔太は間の抜けた声を漏らした。凛は気にしないのかと思ったが、気にしていればこんなことは言わないだろう。
「嫌ならいいよ」あまりに翔太の反応が鈍いので、ついに彼女はそんなことを言う。
「嫌なんかじゃないよ」
「ほんと?」
「うん」
「じゃあ、おいでよ」
翔太としても、あの家にこれから帰って一日が終わるぐらいなら、その方がいいかと思った。何より彼女がどうにも楽しそうだから、断る必要などないだろう。
駅から五分ほど歩いて辿り着いたのは、若葉町で最も背の高い高層マンションだった。階数は余裕で二桁に至るだろう。見上げていると首が痛くなる。
まるで翔太には縁のない建物だった。オートロックを開けた凛に続いて中に入る。ホテルのような広々としたエントランスにはソファーがあり、エスカレーターが上に伸びていた。だが彼女はそれを使わず、奥のエレベーターに乗り込む。どうやらマンションの最上階、二十階に彼女は住んでいるらしい。
「ほんとにいいの」
辿り着いた一室の前で戸惑う翔太に、凛は笑った。
「ほんとにって、どういうこと」
「俺、つまみだされたりしないかな」
「そんなこと誰もしないよ」
室内の玄関もずいぶん広々としていた。ここだけで十分寝起きできそうだ。
「あっ」凛が小さく声を出す。「お姉さん、帰ってるみたい」三和土には、派手なサンダルが一足並んでいる。
「じゃあ、俺……」帰ろうかと言いかけると、凛は慌てて首を横に振った。
「折角なんだから、上がって。私でもお茶ぐらい出せるから」
ただいまと言った凛の声の強張りに翔太は気づいた。おじゃましますと呟いて靴を脱ぐ。奥からの返事はない。
奥に続く廊下には進まず、彼女は脇の階段を上った。マンションであるのに、上にも部屋は続いているらしい。信じられない富裕さに舌を巻きながら、翔太はついて行く。
廊下を進み、脇の部屋のノブに彼女が手をかけると、突き当りの部屋のドアが開いた。
出てきたのは、二十歳前の若い女だった。凛のいう「お姉さん」だろう。白いTシャツと丈の短いジーンズに包まれた身体はスタイルがいい。だが、明るく染めた髪は傷み、背中に垂れている。顔色も悪く、表情は不満そうだ。世の中の「不機嫌」が詰め込まれているように見える。義理であっても凛と姉妹であるなど誰も予想しないだろう。
「あ、ただいま。友加里さん」
そう言った凛には構わず、友加里という彼女は突っ立っている翔太を眺める。頭のてっぺんからつま先まで。そして凛に視線を戻すと吐き出すように言った。
「あんた、当てつけ?」
慌てて「違うよ」と凛が否定する。
「ほら、いつも言ってるでしょ。翔太くん。今日、一緒に高校見学行ったから、ついでに遊びに来てもらっただけ」
彼女の説明に「ふーん」とつまらなさそうに鼻を鳴らす。その隙にドアを開けた凛は、「お茶持ってくるから、待ってて」と言った。軽く会釈だけして翔太が部屋に入ると、ドアが閉まり二人の足音が遠ざかっていく。
想像通りに広く、それでいて綺麗に整った部屋だった。ベッドと学習机、小さな座卓。その前に座り込み、翔太はそれを見上げる。本棚が壁に背を当てて左右に二つ並んでいる。ハードカバーの本や文庫本が整頓されて並び、空きは二段しかない。右側の棚の一番下には小さな動物の貯金箱が鎮座している。
しんとした部屋の中、階下の物音が微かに聞こえる。下で会話をしているようだが、内容までは聞き取れない。
数分で凛は戻ってきた。手にする盆には、オレンジジュースの入った二つのコップと、一口サイズの市販のビスケットが入った菓子器が乗っている。
「ごめんね、嫌なこと言われて」
盆を座卓に置きながら言うのに、翔太はかぶりを振った。
「別に、気にしないけど」
「この前、彼氏さんと別れたんだって。だから、余計に、ね」
そういうことかと思い、それだけではない気もした。玄関で見た彼女の躊躇いは、義姉が恋人と別れてピリピリしていることだけが理由ではない気もする。
今もほんの少し、凛の身体には強張りが見え隠れしている、ような気がする。
しかし彼女のそんな緊張は、二人で今日のことを話していると次第に溶けていった。
「榎本さんの家、金持ちだったんだな」翔太が改めて言うと、彼女は苦笑する。
「叔父さん……私を引き取ってくれた、お父さんの弟ね。お金持ちだけど、私の元々の家は、お金なんてなかったよ」凛は菓子器に手を伸ばすと、子袋の一つを翔太に渡し、自分も一つを手に取る。「お父さんと離婚して、私はお母さんの苗字に戻ったけど。お母さん、帰ってこなくなっちゃったし」
「じゃあ、叔父さんたちとは苗字が違うの」
「そう」
「へえ」翔太は指先で小袋を開けた。「俺と似てる」
「似てるって、何が?」スカートに落ちた菓子の破片を摘んで菓子器に落としながら、彼女が首を傾げる。
「俺も、一回苗字替わったんだ。雨宮は母親の旧姓。一緒に暮らしてる伯母さんは、母親の姉」
「そうなんだ!」ビスケットを食んで、凛は嬉しそうに笑う。「じゃあ、翔太くんはなんて苗字だったの」
「教えない」
「えー」くすくすと笑いながら、凛は口を尖らせる。「じゃあ、私も教えないよ」
「いいよ」
「ひどいなあ」
「いつか。いつか教えるよ」
笑う凛から目を逸らし、翔太はビスケットを食べながら指をさした。「そういえば、あれ、なに」
彼が示す本棚の下段には、犬、猫、小鳥。虎に亀。片手に乗るほどの貯金箱が整然と並んでいる。
「ねえ、遊びにおいでよ」
翔太は目をしばたたかせる。
「遊びにって、榎本さんの家?」
「そう。今日、これから用事ある?」
「いや、別にないけど」肩の鞄をゆする。「なんで」
「今日が終わっちゃうの、なんかやだなって思って」だから一緒に遊ぼうと凛は言った。
確かに遊ぶといっても、翔太には金がないからゲームセンターやカラオケには行けない。それを凛に見越されているのは悲しいけれどもありがたい。
しかし公園で駄弁るにしても、八月の午後三時はあまりに不向きだった。じっとしているだけで汗が流れるのだ。間違いなく熱中症になってしまう。
「平日だから誰もいないし。お姉さんも、大学の補講なんだって。だから誰も気にしないよ」
はあ、と翔太は間の抜けた声を漏らした。凛は気にしないのかと思ったが、気にしていればこんなことは言わないだろう。
「嫌ならいいよ」あまりに翔太の反応が鈍いので、ついに彼女はそんなことを言う。
「嫌なんかじゃないよ」
「ほんと?」
「うん」
「じゃあ、おいでよ」
翔太としても、あの家にこれから帰って一日が終わるぐらいなら、その方がいいかと思った。何より彼女がどうにも楽しそうだから、断る必要などないだろう。
駅から五分ほど歩いて辿り着いたのは、若葉町で最も背の高い高層マンションだった。階数は余裕で二桁に至るだろう。見上げていると首が痛くなる。
まるで翔太には縁のない建物だった。オートロックを開けた凛に続いて中に入る。ホテルのような広々としたエントランスにはソファーがあり、エスカレーターが上に伸びていた。だが彼女はそれを使わず、奥のエレベーターに乗り込む。どうやらマンションの最上階、二十階に彼女は住んでいるらしい。
「ほんとにいいの」
辿り着いた一室の前で戸惑う翔太に、凛は笑った。
「ほんとにって、どういうこと」
「俺、つまみだされたりしないかな」
「そんなこと誰もしないよ」
室内の玄関もずいぶん広々としていた。ここだけで十分寝起きできそうだ。
「あっ」凛が小さく声を出す。「お姉さん、帰ってるみたい」三和土には、派手なサンダルが一足並んでいる。
「じゃあ、俺……」帰ろうかと言いかけると、凛は慌てて首を横に振った。
「折角なんだから、上がって。私でもお茶ぐらい出せるから」
ただいまと言った凛の声の強張りに翔太は気づいた。おじゃましますと呟いて靴を脱ぐ。奥からの返事はない。
奥に続く廊下には進まず、彼女は脇の階段を上った。マンションであるのに、上にも部屋は続いているらしい。信じられない富裕さに舌を巻きながら、翔太はついて行く。
廊下を進み、脇の部屋のノブに彼女が手をかけると、突き当りの部屋のドアが開いた。
出てきたのは、二十歳前の若い女だった。凛のいう「お姉さん」だろう。白いTシャツと丈の短いジーンズに包まれた身体はスタイルがいい。だが、明るく染めた髪は傷み、背中に垂れている。顔色も悪く、表情は不満そうだ。世の中の「不機嫌」が詰め込まれているように見える。義理であっても凛と姉妹であるなど誰も予想しないだろう。
「あ、ただいま。友加里さん」
そう言った凛には構わず、友加里という彼女は突っ立っている翔太を眺める。頭のてっぺんからつま先まで。そして凛に視線を戻すと吐き出すように言った。
「あんた、当てつけ?」
慌てて「違うよ」と凛が否定する。
「ほら、いつも言ってるでしょ。翔太くん。今日、一緒に高校見学行ったから、ついでに遊びに来てもらっただけ」
彼女の説明に「ふーん」とつまらなさそうに鼻を鳴らす。その隙にドアを開けた凛は、「お茶持ってくるから、待ってて」と言った。軽く会釈だけして翔太が部屋に入ると、ドアが閉まり二人の足音が遠ざかっていく。
想像通りに広く、それでいて綺麗に整った部屋だった。ベッドと学習机、小さな座卓。その前に座り込み、翔太はそれを見上げる。本棚が壁に背を当てて左右に二つ並んでいる。ハードカバーの本や文庫本が整頓されて並び、空きは二段しかない。右側の棚の一番下には小さな動物の貯金箱が鎮座している。
しんとした部屋の中、階下の物音が微かに聞こえる。下で会話をしているようだが、内容までは聞き取れない。
数分で凛は戻ってきた。手にする盆には、オレンジジュースの入った二つのコップと、一口サイズの市販のビスケットが入った菓子器が乗っている。
「ごめんね、嫌なこと言われて」
盆を座卓に置きながら言うのに、翔太はかぶりを振った。
「別に、気にしないけど」
「この前、彼氏さんと別れたんだって。だから、余計に、ね」
そういうことかと思い、それだけではない気もした。玄関で見た彼女の躊躇いは、義姉が恋人と別れてピリピリしていることだけが理由ではない気もする。
今もほんの少し、凛の身体には強張りが見え隠れしている、ような気がする。
しかし彼女のそんな緊張は、二人で今日のことを話していると次第に溶けていった。
「榎本さんの家、金持ちだったんだな」翔太が改めて言うと、彼女は苦笑する。
「叔父さん……私を引き取ってくれた、お父さんの弟ね。お金持ちだけど、私の元々の家は、お金なんてなかったよ」凛は菓子器に手を伸ばすと、子袋の一つを翔太に渡し、自分も一つを手に取る。「お父さんと離婚して、私はお母さんの苗字に戻ったけど。お母さん、帰ってこなくなっちゃったし」
「じゃあ、叔父さんたちとは苗字が違うの」
「そう」
「へえ」翔太は指先で小袋を開けた。「俺と似てる」
「似てるって、何が?」スカートに落ちた菓子の破片を摘んで菓子器に落としながら、彼女が首を傾げる。
「俺も、一回苗字替わったんだ。雨宮は母親の旧姓。一緒に暮らしてる伯母さんは、母親の姉」
「そうなんだ!」ビスケットを食んで、凛は嬉しそうに笑う。「じゃあ、翔太くんはなんて苗字だったの」
「教えない」
「えー」くすくすと笑いながら、凛は口を尖らせる。「じゃあ、私も教えないよ」
「いいよ」
「ひどいなあ」
「いつか。いつか教えるよ」
笑う凛から目を逸らし、翔太はビスケットを食べながら指をさした。「そういえば、あれ、なに」
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