上 下
80 / 83

魔導師との戦い 5

しおりを挟む
 オリビアとアレスくんは仲間の体内にあった珠を飲み込んだ烈火と対峙していたのだが、今までに無いくらいにヤバい感じがした。

「お姉さん、ここは僕が食い止めるので逃げてください。僕の危険察知スキルが……」

『オリビア!ジャンプして!』

 オリビアは咄嗟に真上に飛び上がった直後、ものすごい熱風が地上を凪ぎはらっていた。

 ドゴン!

「ぐはっ」

「アレスくん!」

 アレスくんは熱風をまともに食らい、数十メートルは吹き飛ばされていた。

 これはヤバいな……

 吹き飛ばされたアレスくんは起き上がる気配がなかった。

『オリビア、これは火と風の混合魔導斬だ……、当たれば見た目以上にダメージを受けるよ。』

「魔導斬……なんでアイツが使えるの?」

「ほう、やはり魔導斬を知ってるのか。魔導書を持ちながら魔導斬も知ってる貴様は何者だ?」

 オリビアがジャンプからの着地を狙い、烈火が斬りかかってきたのをオリビアはギリギリで回避していく。

「……あなたこそ何で急に魔導斬を使えるようになったの。」

「魔導斬は本来ならゾディア様しか使えないが、俺の身体と魔導タイプの珠を融合させることで上位個体と同等のスペックにすることが出来るのさ。そして今の俺ならこの魔導武器の性能を引き出し、魔導斬を放つ事も可能なのだ。」

 烈火は熱風の纏った斬擊を連続して放ち、ギリギリで回避しているオリビアの皮膚を徐々に切り裂いていった。

「くっ……」

「ふははは! 一気に形勢は逆転したな!」

「剣があれば……」

 確かに烈火の斬擊を素手で受け止めるのは自殺行為だと思うけど、仮に武器があっても普通の剣なら一撃で破壊されてしまう程の破壊力が今の烈火にはあった。

『オリビア、変身を解いて剣に変化させよう。このままだといつかはやられちゃうよ。』

『アレスくんにばれちゃわない?』

『動かないからアレスくんは気絶してるかも。』

『分かった。』

 オリビアは一気に烈火と距離を取った瞬間に私は変身を解いて剣に変化する。

「あ? 身体が縮んだのか? それに魔導書が剣に……どういう事だ?」

 オリビアは烈火の疑問に答えず、斬りかかる。

 ガキンッ

 ガキンッ

 ガキンッ

「俺の魔導武器と撃ち合って破壊されないだなんてすげえ強度だな。いや、魔導書なのか? よく分からねえから貴様を倒してから考えるか!」

「ぐっ……」

「これが本来の魔導師の力だ! 優れた身体強化、それに耐えられる肉体、そして魔導武器を使いこなせる魔導力!」

 あの珠を丸飲みするまでは速度で圧倒していたオリビアだったけど、今では烈火の方が若干速いくらいになっていた。
しおりを挟む

処理中です...