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期限付き
しおりを挟む「おじいちゃんおばあちゃんになっても友達だよ」
「一緒に長生きしようね」
その言葉に「そうだね」と返す度、心のどこかで何かが引っ掛かっていた。
高校生の時、友達とそんな話をした事あったなぁなんて思いながらいつも通りの道を歩く。
今日も疲れたなぁ...
蘭という名前は親がつけてくれたから気に入っている。
強いて言えば、花言葉を調べるとこれでもかというくらいに、ポジティブな意味ばかりで私にはちょっと勿体無いかな...
子供達が帰って寂しそうな公園の前を通って、次の角を曲がるとスーパー。
今日は何にしようかな。
最近は野菜が高いからカット野菜のミックスパック。
冷凍うどんは節約の味方。
お買い得の文字が付いた、なるべく賞味期限が長いお肉を選ぶ。
今日も必要最低限でお会計を終えて、またいつもの道を歩く。
「ただいまー」
当然ながら返事は返ってこない。
これもいつも通り。
一人暮らしを始めてすぐに、帰宅後ソファに座ったらもう立てないと学んだ。
よしっやるかぁ
キッチンに立って冷蔵庫の中のラインナップを見て、今日も特製あるものご飯を作る。
大体野菜炒めか、うどんか鍋になりがちなのは一人暮らしあるあるだと思う。
何となくテレビを付けると、歌番組のクリスマス特番が流れてきた。
「続いては、今話題のアーティストSun Flowerの皆さんです」
「よろしくお願いします!!」
キラキラしていて凄いなぁ。
まるで違う世界を見ているようで、同じ人間とは思えない。
「Sun Flowerの皆さんが今日披露していただく曲の見どころは何かありますか?」
「そうですね。
皆さんにこうしてパフォーマンスを見ていただけるのも残り1ヶ月ほどとなり、
改めて貴重な機会を頂けていると感じています。
この曲は皆さんとの思い出の詰まった大事な曲なので、
是非一緒に楽しんで見てもらえたら嬉しいです」
へぇー。
テレビにさほど興味のない私でも分かるくらい有名なグループなのに辞めちゃうんだ。
そっか。残り1ヶ月か。
ファンの人達は寂しいだろうなぁ。
私には推しとかそういう感覚は分からないけど、好きな事を出来なくなるのは悲しいだろうなと思う。
ブーブー
友達の愛からメッセージが届いた。
愛『蘭ー!今Sun Flower出てたの見た?!』
蘭『たまたま見たよ』
愛『本当に😭最高だった😭』
蘭『格好良かったね』
愛『うん!あとちょっとだから全力で楽しむ!!』
蘭『寂しくないの?』
愛『勿論寂しいけど、ここまでは全力で楽しんで良いよって期間を決めてくれたと思って今は楽しむ!!後のことはまた考える!』
『その時は付き合ってね✌️』
蘭『了解👌いつでも呼んで~』
愛の事は尊敬してるし友達として凄く好き。
私だったら好きなグループが辞めるってなったら何でどうしてって言っちゃうだろうなと思う。
期限付きか...
確かにただ何となく過ごすよりも、ゴールを決めた方が充実するかもしれない。
何でもそうだよね。
締め切りの無い提出物は後回しにされていつか手が空いたらと忘れられていく。
私も期限決めようかな。
あと半年。
それまでは全力で生きてみよう。
こうして蘭の退屈な日常に少しだけ変化が訪れた。
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