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第3部 木蓮 チャクラとレインボーカラー
第3部 第4話 オレンジ色のつらさを笑いと感謝に変えた奴
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(前半のつづきから)
ケンちゃんは、少ししんみりしながら、チャンジャを口に運んだ。
「辛いという字は、つらいとも読むのね~♪」と、気分を変える為なのか、昔の流行歌の替え歌を口ずさみ、コーラを一口飲んだ。
そして、顔を上げて、先日比呂乃が酉の市で買った熊手の方に目を遣った。
「あのつらい経験の後で、俺は仲間に出逢ったんだよ。あんなにひどかった自分に、最後に与えられたものは、仲間の愛だったんだ。」
ケンちゃんが仲間思いであることを、しっかり見てきた比呂乃は、うんうんと肯き、思い出して、
「だから、あのス、ス、スイカ、ナ、ナ、仲間♪っていう名台詞が出てくるのよね。」
(第一部「鳴らせ!山の音楽家」参照)と、笑いながらからかうと、
ケンちゃんは、
「言うなよー。」と照れ臭そうに言って、二人はあの夜の思い出話で笑った。
その時、ふと、ドアのガラス窓の向こうにオレンジ色のスカーフが見えた気がした。
比呂乃は動じず、ケンちゃんに思いついたことを、話し出した。
「ねえ、オレンジ色は一番初めに、一人で頑張る時の色だよね。友達も親子ともども経験したって言ってたわ。」
「それ、わかるよ。俺も、リハビリ始めたあたりの時さ、すごい気になる色だった。
オレンジ色ってのがわかんなくなって、橙色の橙ってなんだっけ?とか、果物の名前が色の名前って珍しくないかとかグダグダ考えたことあるよ。」
「自分の力だけで、なんとか人生を切り開こうとして頑張ってるんだね。そう思うと健気な色ね。」
「乳離れして、母親からの自立をするよね。母親の温かさから少し離れるんだ。その時、その温かさの代わりを欲しがる気持ちが橙を求めるんだよね。」
「ケンちゃん、すごい。どうしてそんなことわかるの?」
「自分にとっては、温かいものが酒だったらしいんだ。だから、酒を断ったら、橙が気になりだしたみたいなんだ。」
「なるほどね。」
「リハビリってさ、機能を回復して再起することでさ。俺らの場合、昔の習慣を断つことでもあるんだ。」
「そうなんだ。断つのね。」
「そう、断つんだ。」
「日本語って韻に意味があるでしょ。」
「どういう?」
「『たつ』っていう韻だけで、いろんな意味の漢字があるけれど、、、。」
「タバコを断つ」
「家が建つ」
「3分経った!」
「クララが立った!」
「連絡を絶つ」
「いい日旅立ち♪きりがないわ。
でも、なんかね。共通のものが流れてる。」
「んー、んー。」
「終える言葉と、始まる言葉が混在してるけど、再起をイメージするわ。」
「本当だ。」
ケンちゃんは噛みしめるように、「たつ、たつ、たつ」と繰り返していた。
「今思ったけど、辰年の辰もそうよね。関係あるかな?帰りに弁天様に聞いてみようっと。」
「あと、断捨離でいえば、離すもそうよ。
離す、話す、放すこれは捨てるに近いわね。」
ケンちゃんは
「それこそわかるよ。仲間同士で過去のことや、今の悩みを話すと、すごい楽になる。」
「話せば楽になるものね。酒場はそういう場でもあるわ。」
「じゃあ捨てるって何だろな?」
「なんだろうね?
ねえ、捨てるのは執着かしら?」
「古い習慣とかエゴとか?」
「ね。」
真剣に話したから頭が痛くなってきたと言いたいのか、ケンちゃんは、わざとしかめっ面をこしらえて、こめかみをマッサージする。
オーケーと、比呂乃は明るい話題に変えた。
「じゃあねえ、何でも叶えられるとしたら、何を願うか話してみようよ。」
「何でも叶っちゃうの?
そうだなー、本音を言えば、やっぱり人並みに収入を得たい。それで、誰かパートナーと先の不安がない穏やかな暮らしがしてみたいな。時々仲間を呼んで食事したりさ。」
「いいわね。やっぱり仲間と働いていたい?」
「そうだな。俺は、やっぱり共同作業が好きだな。比呂ちゃんの夢は?」
「私は、笑って生きていたい。アーンド、平和でゆるし合える世の中であれば最高ね。」
「いいねえ。」
「ねえ。」
二人がほっこりしているところへ、花屋のご主人が顔を出した。店が始まる前に、ご主人の好きなトウモロコシのひげ茶のペットボトルとヤンニョムチキンを奥様にお渡ししておいたのだった。
「比呂ちゃん土産ありがと。
話変わるけど、さっき、通りでお巡りさんが不審者に声かけたら、一目散に逃げてったよ。小柄な女性だったけど、一応お知らせ。」
比呂乃はそれを聞いて、慌てふためいて走り出す貴和子の姿が想像できて、おかしくなって笑ってしまった。
花屋のご主人が聞いてきた。
「知り合いなの?」
「いいえ知り合いなんてものでは。」
比呂乃は誤魔化した。
花屋のご主人が帰った後、比呂乃はつぶやいた。
「知り合いなんてものではないわ。私の仲間よ💕」
人生はいろんな風に混ざり合う。
お互いの、その時々の境遇を抱えて。
出逢い、別れ、再会。
生身の私がこれかも感じるだろう感情、
喜び、楽しみ、悲しみ、怒り
憎しみ、闇、愛
すべてに意味がある。
この年になりやっと気づけた。
無限の光を受け、有り難い配慮で奇跡の星地球はずっと回ってきた。
今日ここに私があることにも意味がある。
感謝を捧げたい。
そして、叫びたい。
世の中捨てたもんじゃない。
人生ってまんざら捨てたもんじゃない。
今日一日をありがとう。
ケンちゃんは、少ししんみりしながら、チャンジャを口に運んだ。
「辛いという字は、つらいとも読むのね~♪」と、気分を変える為なのか、昔の流行歌の替え歌を口ずさみ、コーラを一口飲んだ。
そして、顔を上げて、先日比呂乃が酉の市で買った熊手の方に目を遣った。
「あのつらい経験の後で、俺は仲間に出逢ったんだよ。あんなにひどかった自分に、最後に与えられたものは、仲間の愛だったんだ。」
ケンちゃんが仲間思いであることを、しっかり見てきた比呂乃は、うんうんと肯き、思い出して、
「だから、あのス、ス、スイカ、ナ、ナ、仲間♪っていう名台詞が出てくるのよね。」
(第一部「鳴らせ!山の音楽家」参照)と、笑いながらからかうと、
ケンちゃんは、
「言うなよー。」と照れ臭そうに言って、二人はあの夜の思い出話で笑った。
その時、ふと、ドアのガラス窓の向こうにオレンジ色のスカーフが見えた気がした。
比呂乃は動じず、ケンちゃんに思いついたことを、話し出した。
「ねえ、オレンジ色は一番初めに、一人で頑張る時の色だよね。友達も親子ともども経験したって言ってたわ。」
「それ、わかるよ。俺も、リハビリ始めたあたりの時さ、すごい気になる色だった。
オレンジ色ってのがわかんなくなって、橙色の橙ってなんだっけ?とか、果物の名前が色の名前って珍しくないかとかグダグダ考えたことあるよ。」
「自分の力だけで、なんとか人生を切り開こうとして頑張ってるんだね。そう思うと健気な色ね。」
「乳離れして、母親からの自立をするよね。母親の温かさから少し離れるんだ。その時、その温かさの代わりを欲しがる気持ちが橙を求めるんだよね。」
「ケンちゃん、すごい。どうしてそんなことわかるの?」
「自分にとっては、温かいものが酒だったらしいんだ。だから、酒を断ったら、橙が気になりだしたみたいなんだ。」
「なるほどね。」
「リハビリってさ、機能を回復して再起することでさ。俺らの場合、昔の習慣を断つことでもあるんだ。」
「そうなんだ。断つのね。」
「そう、断つんだ。」
「日本語って韻に意味があるでしょ。」
「どういう?」
「『たつ』っていう韻だけで、いろんな意味の漢字があるけれど、、、。」
「タバコを断つ」
「家が建つ」
「3分経った!」
「クララが立った!」
「連絡を絶つ」
「いい日旅立ち♪きりがないわ。
でも、なんかね。共通のものが流れてる。」
「んー、んー。」
「終える言葉と、始まる言葉が混在してるけど、再起をイメージするわ。」
「本当だ。」
ケンちゃんは噛みしめるように、「たつ、たつ、たつ」と繰り返していた。
「今思ったけど、辰年の辰もそうよね。関係あるかな?帰りに弁天様に聞いてみようっと。」
「あと、断捨離でいえば、離すもそうよ。
離す、話す、放すこれは捨てるに近いわね。」
ケンちゃんは
「それこそわかるよ。仲間同士で過去のことや、今の悩みを話すと、すごい楽になる。」
「話せば楽になるものね。酒場はそういう場でもあるわ。」
「じゃあ捨てるって何だろな?」
「なんだろうね?
ねえ、捨てるのは執着かしら?」
「古い習慣とかエゴとか?」
「ね。」
真剣に話したから頭が痛くなってきたと言いたいのか、ケンちゃんは、わざとしかめっ面をこしらえて、こめかみをマッサージする。
オーケーと、比呂乃は明るい話題に変えた。
「じゃあねえ、何でも叶えられるとしたら、何を願うか話してみようよ。」
「何でも叶っちゃうの?
そうだなー、本音を言えば、やっぱり人並みに収入を得たい。それで、誰かパートナーと先の不安がない穏やかな暮らしがしてみたいな。時々仲間を呼んで食事したりさ。」
「いいわね。やっぱり仲間と働いていたい?」
「そうだな。俺は、やっぱり共同作業が好きだな。比呂ちゃんの夢は?」
「私は、笑って生きていたい。アーンド、平和でゆるし合える世の中であれば最高ね。」
「いいねえ。」
「ねえ。」
二人がほっこりしているところへ、花屋のご主人が顔を出した。店が始まる前に、ご主人の好きなトウモロコシのひげ茶のペットボトルとヤンニョムチキンを奥様にお渡ししておいたのだった。
「比呂ちゃん土産ありがと。
話変わるけど、さっき、通りでお巡りさんが不審者に声かけたら、一目散に逃げてったよ。小柄な女性だったけど、一応お知らせ。」
比呂乃はそれを聞いて、慌てふためいて走り出す貴和子の姿が想像できて、おかしくなって笑ってしまった。
花屋のご主人が聞いてきた。
「知り合いなの?」
「いいえ知り合いなんてものでは。」
比呂乃は誤魔化した。
花屋のご主人が帰った後、比呂乃はつぶやいた。
「知り合いなんてものではないわ。私の仲間よ💕」
人生はいろんな風に混ざり合う。
お互いの、その時々の境遇を抱えて。
出逢い、別れ、再会。
生身の私がこれかも感じるだろう感情、
喜び、楽しみ、悲しみ、怒り
憎しみ、闇、愛
すべてに意味がある。
この年になりやっと気づけた。
無限の光を受け、有り難い配慮で奇跡の星地球はずっと回ってきた。
今日ここに私があることにも意味がある。
感謝を捧げたい。
そして、叫びたい。
世の中捨てたもんじゃない。
人生ってまんざら捨てたもんじゃない。
今日一日をありがとう。
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