終明け

文字の大きさ
2 / 6

  【終末一日目】

しおりを挟む
 鼻を突き刺すような焦げ付いた臭いと炎の音で目が覚めた。周囲の光景を見て言葉を失う、そこには辺り一面瓦礫の山が築きあがり、様々な所から炎と煙が立ち上っている。結羽の家以外は全て崩れ落ちている。「昨日の声の主は誰なのか」、「そもそも私はどれだけ眠っていたのか」、それを確認する手立てもなく少し戸惑っていると、
「君が願ったんだよ、この世界を。」
 後ろから声を掛けられる、翼が片方しかない天使のような見た目をした少年が立っていた。その途端そこまで疑問に思っていたことが声となって溢れる。
「私が?たしかに望んでたけどなんで急に?世界中がこうなってるわけ?私以外の人はどうなったの?」
「別に急にってわけじゃないよ、僕にも準備が色々と必要だっただけさ。」
 片翼の天使は私の質問にたんたんと答えていく。
「今この地球上の都市や人の住んでいた所は等しくこんな感じだよ。」
「父さんや他の人は?」
「君の願い通り皆死んださ、いや消えたと言った方が正しいかな。消したのは僕だ、もちろん戻すことも出来るよ、戻すかい?」
 私は少し悩んだ、別に家族に思い入れが無かったわけじゃない。優しくしてくれた人もいたし、父さんとは母さんのことになると協力することもあった。それでも私は……。
「いいわ別に、戻さなくて。」
「君のそういう思い切りの良いところ嫌いじゃないな。そうだなー、じゃあこの質問はまた今度の機会にもう一度だけするよ。」
「今度の機会?」
「そう、君がもう一度元の生活を送りたい、そう思えた時に一度だけ今の質問をしてあげよう。僕は優しいからね。」
「なにそれ、どう見たって私のが年上でしょう?なんで上から目線なのよ。」
「さぁ、どうだかね。」
 天使がしらばっくれるように言う。
「そういえば、あなた名前なんて言うの?」
「僕の名前?僕はルイだよ。君はたしか結羽だったね。」
「なんで私の名前知ってるわけ?天使みたいな見た目してるくせしてストーカーなの?」
「ストーカーってわけじゃないよ、ただずっと前から君のことを知っている。ただそれだけの事さ。」
 また何かをはぐらかすような言い方に引っかかったけど気にしないことにした。
「あ、そうそう、君に聞きたいことがあったんだ。」
「聞きたいこと?」
「そう、君が何故こんな世界を望んだかってことを聞きたかったんだ。」
「そうね、たぶん今まで私がいた場所はどこも私の『いるべき』場所ではなかったからだと思う。私はどこへ行っても馴染めなくて、中学も結局辞めたし、それで逃げ込んだゲームの中でも私は嫌われた。だからずっとこんな世界滅べばいいのにって思ってたのかもしれないな。」
「『いるべき』場所、ね……。」
 少し重たい空気が流れる、私はその空気に耐えかねて、
「まぁこんなこと考えててもどうしようもないし!せっかく世界が終わったことだし自由に生きようかな!」
「思い切りの良さだけは本当に一丁前だね~。どこへ行くとか、何するとか決めてるの?まさかノープランとかじゃないよね?」
「そんなわけないじゃない、毎日世界が滅ぶこと考えてたのよ?やることくらい決まってるわ。」
「へ~どんなことしたいの?」
「まずはやりたいことを三つに絞ってノートにまとめることから始めようかな。」
「でももう見ての通り君の家以外でノートなんて探せる状況じゃないけど。」
「それもそうか…、どうしよう。」
「んー、あ、たしかこの近くに文房具屋さんがあった気がするんだけど、そこってまだある?」
 なぜルイが文房具屋があることを知っているのか、と少し気にはなったが、気にしないことにした。
「たしか移転したけどまだあったはず。ナイスアイデアルイ!」
「いや~それほどでもってなんでそれを真っ先に思いつかなかったのさ。君一応この街の住人だろう?」
「いやー長らく部屋から出てなかったものでして、お家の外がどうなってるかなんて知る必要もなかったといいますか。」
「引きこもりは良くないぞー運動しろ運動、ほらこれもノート見つけたら追加しときな、『適度な運動をする』ってね。」
「あーもう分かったわよ!運動ね運動!」
 そんなしょうもない会話をしていると文房具屋に着いていた。店の中を探すとメモ帳とシャープペンシルが見つかったのでそれを持っていくことにした。
「よし、これで第一目標クリアっと。」
「それで、やりたいこと三つって結局なんなの?さっき一つ増えたけど。」
「そうね、まず一つ目は学校で授業を受けること、だったんだけど無理っぽいな~私以外の人いなくなっちゃったわけだし。」
「その辺はたぶん僕がどうにか出来るよ、授業くらい僕がやってあげられるよ、気にしなくていいさ。」
「あんた何歳なのよ。」
「秘密、で次は?」
「二つ目は高いバイクに乗って高速道路を、いやハイウェイを疾走したい!」
「なんでまたそんな男子高校生みたいなことをやりたいことリストに?」
「いやだって楽しそうじゃん、でっかいバイクででっかい音出しながら広い高速を走り抜けるのって。」
「運転のうの字も知らない、自転車すら漕ぐの辛そうな引きこもりが一体何を言ってるんだ。」
「自転車くらい漕げるわ!とりあえずそれが二つ目!」
「じゃあ三つ目は?」
「三つ目は……、いややっぱりこれはやめておこうかな……。」
「なんでよ、気になるじゃんか。」
「いやでも私にそんな資格は……。」
「資格とかどうでもいいからとりあえず言ってみなって。」
「分かった!言えばいいんでしょ言えば!」
「…………。」
「…………。」
 少しの沈黙が流れる、
「私、父さんの会社見に行きたい。」
「どうして急に?お母さんいなくなってから仲悪かったんじゃないの?」
「うん、でもだからこそ、こんな状況になるまでなにもしてこなかったのをちょっと後悔してるってのが理由。」
「なるほどね、これで三つ、まぁあとは運動を足して……。」
「それは余計なお世話です!」
 そんな他愛もない話をして、やりたいことをメモ帳にまとめながらその日は終わった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

処理中です...