魔女ノ陰謀論

皐月

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序章に過ぎない出来事 2

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「へぇ、耐えるの。まだやる?」

視線の先には、必死の形相で強烈な眠気に抗う騎士団長がいる。
今回使った魔法は《悪夢ナイトメア》。強制的に眠りに落とし、三日三晩悪夢を見せ続ける魔法。どれくらいの悪夢かは私次第。強度によっては廃人にもできる魔法。

『今回は命までは取らない。でも次はない』

私を睨みつける目に、にっこりと嗤ってそう言ってやる。

「放っておいて頂戴ね、私たちのこと。それじゃ。」

私は手を伸ばすと《転移テレポート》で〈微睡みの森〉から放り出した。




私には姉がいた。たった一人の肉親だった。
《星涙の魔女》ステラ=オーネット。涙が星晶になる体質と、星晶を自由に操る魔法を持つ魔女。どこまでも優しくて、綺麗で、自慢の姉だった。二人で過ごした時間はどこをとっても楽しくて穏やかで幸せなものだった。

でも、奴らが来て、そんな日々は終わってしまった。

どこから聞きつけたのか奴らは私たちの前に現れた。その時不思議な事に結界は昨日しなかった。
高純度の星晶は貴重だ。そしてそれを扱う技術も。彼女はその需要を満たす体質と魔法を持っていた。
最初は納品だけだった。私たちはこの森を出る気はなかった。ただしばらくすると、奴らの欲が増した。

もっと星晶を。
その欲の果てに、彼女は連れていかれてしまった。

もちろん拒んだ。提供は森を出ないことが条件だったから。
でも、私が、人質として捕まってしまったから、姉はいかざるを得なかった。

数年後、解放された私が再会した姉は、既に遺体だった。

それからの記憶は多くない。
絶望のまま姉と森へ帰り、二人で多くの時を過ごした湖畔に棺を埋めた。周りには彼女の好きだった花をたくさん植えた。幼い頃、誕生日に姉からもらった星晶を除いた、手元にあるすべての彼女の涙を湖に沈めた。

悲しくて、苦しくて、連れて行った奴らも、人質となってしまった自分も全部憎くて。
姉はきっと望まないだろうが、復讐なんてせずに生きてほしいだろうが、私は左腕に呪印を入れ、姉の《目》を片方貰った。
これは戒めであり、お守りだ。

今でも姉の姿を夢に見る。青白い肌の瘦せた体に、無数の傷が付いて死んでいく様を。涙を。
この《目》が見た光景を、何度でも。


「そう、動き出したの。でもバレちゃってるじゃない。それともわざとかしら?」
そう独りごちた疑問は風にさらわれ、答えるものはいない。
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