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留木原 夜という人間
【悪役ルイ・カロアスという役割】
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「ここどこ」
動けない。どこかに倒れている…?
体が痛い。血管が破裂しそうに痛い。
頭にも血が上りすぎているみたいに痛い。全身が痛い。
苦しい。肺が紐状のナニカに縛られている様に苦しい。
(きょうはだれもきてくれなかった…サビシイ。
ぼくがいらないコだからだ…カナシイ。
トウさんもカアさんもだれもぼくをアイシテくれない。)
「だれ」
僕の思考に入って来ないで。ただでさえ頭が痛いんだ。
(いたいのやだ。アイサレたい。カナシイサビシイカナシイサビシイ…)
「うる…せぇ」
頭に響く誰かの声が酷く目障りに感じた。
でも"それ"を追い出そうとしなかったのは、なぜか僕はその存在を悲しく感じたからだ。
(はやくきてロキ。サビシイよセバス。ぼくもそとでアソビタイ…トモダチがほしい)
友達…そうだ…鴨杉や会長達はどうなったんだ?
僕は…生きている…?
「ちいさい…?」
視界に映る小さな手は確かに動いていた。
そして視界も、正常に動いていた。
「だれ?」
手の先にある姿見鏡に映る小さな子供。
黒髪に黒い瞳…日本人?いや、西洋の血筋も入っている顔立ちだ。
「坊っちゃま…魔力反発ですね…ベットへ案内します」
誰かが僕を抱き抱え、布の上に置く。
気づけばあの変な存在は消えていた。
「だれ?」
僕が問いかけると誰かが頭を撫でた。
「セバスです。ルイ坊っちゃま専属の、執事です」
執事?それにセバス、という名はさっきの変な存在が言っていた。
「今日はリンゴのすり身を持って参りました。」
セバスという執事は僕が食べやすいように補助してくれる。
「ぼくの…名は…?」
本当に僕は死んだの?零に、殺されたの?
「ルイ・カロアス様でございます」
僕はその名に笑った。
(どうして殺したの零…)
一番信用していた。親友だと思っていた。
だけど、それは僕だけだった。
(嘘つき…)
僕以外にも会長や鴨杉や一般生徒…大勢を殺した…巻き込んだんだ…。
僕のせいだ。
(許さない…許せない…)
あの人に会えない。皆に会えない。裏切られたのが悲しい。
殺された恐怖が、忘れられない。
(僕が死んだから、父さん達は大変だろうな…)
学園長が死んでいたら大丈夫かな?
でもその前に絶対泣いているだろうな…。
「セバス。ぼくはいきたかったよ」
いつもみたいに会長達と笑って、あの人にドキドキして、父さん達と微笑み合う……生きたかったなぁ。
「坊っちゃまは死にませんよ」
セバスが微笑んで手を握ってくれる。
きっと彼は優しい人なのだろう。
「はは…ありがとう」
僕は面白くって笑ってしまう。
裏切られたばかりなのに、信じてしまう。
(でも、もう一度だけ…。)
信頼した人間がいる安堵を知っていた僕はセバスを信頼してしまった。
「化け物…」
セバスが小さな子供を抱え此方を睨む。
その子供はこの世界の主人公だった。
この世界での僕の役割を知った時には、もう遅かった。
空から降ってくる大量の血に生き残った人々の悲鳴や罵倒…。
「ぼくは…僕は悪役ルイ・カロアス。妬み嫉み…全員殺す!!!アハハハハハハハハハハハハ!!!」
全てを忘れるように、狂ったように、壊れるように、嗤う。
『大丈夫ですか、坊っちゃま?』
『ルイ!そっちはあぶないよ』
『夜は本当に馬鹿だな』
『貴方は私達の自慢の息子よ』
『副会長優しいー』
『夜、ありがとう』
それでも、忘れられない。
『きみ、まいごなの?』
優しくされた記憶が、僕を壊してくれない。
動けない。どこかに倒れている…?
体が痛い。血管が破裂しそうに痛い。
頭にも血が上りすぎているみたいに痛い。全身が痛い。
苦しい。肺が紐状のナニカに縛られている様に苦しい。
(きょうはだれもきてくれなかった…サビシイ。
ぼくがいらないコだからだ…カナシイ。
トウさんもカアさんもだれもぼくをアイシテくれない。)
「だれ」
僕の思考に入って来ないで。ただでさえ頭が痛いんだ。
(いたいのやだ。アイサレたい。カナシイサビシイカナシイサビシイ…)
「うる…せぇ」
頭に響く誰かの声が酷く目障りに感じた。
でも"それ"を追い出そうとしなかったのは、なぜか僕はその存在を悲しく感じたからだ。
(はやくきてロキ。サビシイよセバス。ぼくもそとでアソビタイ…トモダチがほしい)
友達…そうだ…鴨杉や会長達はどうなったんだ?
僕は…生きている…?
「ちいさい…?」
視界に映る小さな手は確かに動いていた。
そして視界も、正常に動いていた。
「だれ?」
手の先にある姿見鏡に映る小さな子供。
黒髪に黒い瞳…日本人?いや、西洋の血筋も入っている顔立ちだ。
「坊っちゃま…魔力反発ですね…ベットへ案内します」
誰かが僕を抱き抱え、布の上に置く。
気づけばあの変な存在は消えていた。
「だれ?」
僕が問いかけると誰かが頭を撫でた。
「セバスです。ルイ坊っちゃま専属の、執事です」
執事?それにセバス、という名はさっきの変な存在が言っていた。
「今日はリンゴのすり身を持って参りました。」
セバスという執事は僕が食べやすいように補助してくれる。
「ぼくの…名は…?」
本当に僕は死んだの?零に、殺されたの?
「ルイ・カロアス様でございます」
僕はその名に笑った。
(どうして殺したの零…)
一番信用していた。親友だと思っていた。
だけど、それは僕だけだった。
(嘘つき…)
僕以外にも会長や鴨杉や一般生徒…大勢を殺した…巻き込んだんだ…。
僕のせいだ。
(許さない…許せない…)
あの人に会えない。皆に会えない。裏切られたのが悲しい。
殺された恐怖が、忘れられない。
(僕が死んだから、父さん達は大変だろうな…)
学園長が死んでいたら大丈夫かな?
でもその前に絶対泣いているだろうな…。
「セバス。ぼくはいきたかったよ」
いつもみたいに会長達と笑って、あの人にドキドキして、父さん達と微笑み合う……生きたかったなぁ。
「坊っちゃまは死にませんよ」
セバスが微笑んで手を握ってくれる。
きっと彼は優しい人なのだろう。
「はは…ありがとう」
僕は面白くって笑ってしまう。
裏切られたばかりなのに、信じてしまう。
(でも、もう一度だけ…。)
信頼した人間がいる安堵を知っていた僕はセバスを信頼してしまった。
「化け物…」
セバスが小さな子供を抱え此方を睨む。
その子供はこの世界の主人公だった。
この世界での僕の役割を知った時には、もう遅かった。
空から降ってくる大量の血に生き残った人々の悲鳴や罵倒…。
「ぼくは…僕は悪役ルイ・カロアス。妬み嫉み…全員殺す!!!アハハハハハハハハハハハハ!!!」
全てを忘れるように、狂ったように、壊れるように、嗤う。
『大丈夫ですか、坊っちゃま?』
『ルイ!そっちはあぶないよ』
『夜は本当に馬鹿だな』
『貴方は私達の自慢の息子よ』
『副会長優しいー』
『夜、ありがとう』
それでも、忘れられない。
『きみ、まいごなの?』
優しくされた記憶が、僕を壊してくれない。
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