例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間

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【少し前 / 後悔故に】

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「サルフィです。宜しくお願いしますお嬢様!」

「あ”ぁ”?」

 おっと、公爵家子息らしからぬ反応をしてしまった。

「会えて嬉しいよ、サルフィ」

 このサルフィは一回目の時も僕の裸を見るまでずっと僕をお嬢様、と呼んでいた。

「お嬢様っ!ずっとお会いしたかったです!!」

 …サルフィを言い表すとしたら、純粋なアホである。
よく図書館の本とか本とか本を持たせた物だ。

「流石カロアス公爵の黒薔薇姫!美しく愛らしくとても眩しいです!」

「お前は僕が自然発光している様に見えるのか?」

 そして黒薔薇姫ってなんだ。一回目は黒百合姫だったぞ。何の違いがあるんだ。

「その位輝かしい神聖な存在だと言う事です!!」

 本邸から来る使用人は僕に怯える奴ばかりだが、サルフィは出会ってから殆ど僕に付きまとった。
お風呂は勿論着替えや食事…トイレだけは死守した。

「学園ではセバスさんに代わり、このサルフィが全てサポートさせていただきます!」

 学園にはある程度ルールがある。
その中の一つ、学園に従者は連れていけない。
だがこのルールは穴がある。
学園に所属している生徒が従者の真似事をするのはOK。また、護衛も学園に登録していればOK。

 大変穴だらけなルールである。

「坊っちゃま。何かありましたらこちらを…」

 僕の後ろに立って様子を見ていたセバスが渡したのは拷問用の鞭だった。

 拷問用の鞭である。

「…一応貰っておく。サルフィは下がれ」

 流石に子供を叩く事はないと思うが、一応貰っておこう。

「畏まりました!またお会いできる日を楽しみにしておりますお嬢様!」

 サルフィは紫色の瞳を輝かせて僕にお辞儀をし、下がっていった。

 サルフィは僕の悪名の大半を作った狂信者だ。
今はあまり近くに置かない方が良いだろう。

 僕は鞭を学園用のカバンに入れて窓の外を見る。

「そう言えば護衛…トバルトはどうした?」

「彼は坊っちゃまがおっしゃっていた人物を探しに行っております。
…坊っちゃま、なぜ彼にあの様な事を?」

「…(シナリオの)反応を知りたくてな」

「お気づきになられていたのですね」

(ん?何を??)

 僕は窓の外を眺めながら内心首を傾げる。

「流石坊っちゃまでございます。もう私が側に居なくても大丈夫ですね…。」

「ん?セバスは護衛として学園についてくるだろう?」

やる殺る事がありますので」

「…つまり?」

 僕は冷汗を流しながらセバスを見る。

(まさかとは思うが…)

(一回目に出てこなかったトバルトと純粋なアホで問題事しか起こさないサルフィだけとか…ないよな?)

 僕の人生の中でまだ平穏な方の学園生活はセバスによって平穏で快適な学園生活になるはずだ。

そんな事を考えている僕に気がついていないセバスは晴れやかな顔をして言った。

「学園について行くのはトバルトとサルフィだけです。
トバルトには学園で護衛の任務をこなしながら坊っちゃまの命令を遂行する様に言っております。」

「これぞ俗に言うブラック雇用」

 驚きのあまり勢いで言ってしまう。

「ぶらっく…?なんですか?」

「いや、まぁ…トバルトは大丈夫だろうか?倒れないか??」

 休憩時間確保できるかそれ??え、護衛って激務だよね??セバスも来た方が良いよね??ね??

「ははは!面白い事を言いますね!彼なら四肢を切り落として崖から蹴落としても死にはしませんよ!」

 どうしてトバルトはこんなにセバスに嫌われているんだ???

 僕はトバルトに心底同情した。







###

「こんにちは」

「こんにちは。今日はどうしましたか?」

 教会の簡易な白い服を着た教皇が俺の頭を撫でる。

「今日も祈りを捧げようと思って!」

「本当に良い子ですね。では、途中まで一緒に行きましょうか」

 俺は教皇の差し出す手に手を置き、笑いながら歩き出す。

(あ~面倒くせぇ。俺一人で行けるのによ~)

 そう思いながらも俺は作り笑顔を忘れない。
こんなのは前世で慣れているからな。

「では私は扉の前で待ってますね」

「ありがとう…その…お、お父さん」

 そう言うと教皇は嬉しそうな顔をした。

「ちゃんと待っててね!」

「わかりました」

 そうして教皇が見えなくなると俺は祭壇に近づいた。

 俺は笑顔を崩して睨む。

「宗川!テメェいつまで寝てるつもりだ!!いい加減起きろや!!」

 俺は祭壇の机を蹴りながら怒鳴る。
勿論お父さん(笑)にバレない様に防音結界を張っている。
周りから見れば俺はさぞ愛らしく祈りをあげている子供に見えるだろうよ!!

「このままだと学園に入学になるだろうが!ふざけるなよこの副会長のストーカー!
俺は副会長とキャッキャウフフな生活をしてたいんだよ!!」

 どんなに怒鳴っても宗川は反応しない。
前までは一方的にだが話せていたのに。

「どうなってんだ。起きたら異世界だし俺は平民になってるし!」

 宗川や副会長、そして俺がいるって事は他のメンバーもいるはず。
早く見つけ出して情報共有しなければいけない。

「でも俺平民じゃん!!貴族とどうやって接点作れば良いんだよ!」

 副会長がいるカロアス公爵家は厳重で今の俺には途中までしか侵入できなかった。

「やっぱり新月祭で他のメンバーを見つけるか」

 お父さん(笑)に頼めばなんとかなるか…?だが変に疑われるのは厄介だ。

「とにかく副会長が学園長に見つかる前に…」

 俺は祭壇の上にある、金色の十字架を見る。

「あークソッ!!…なんで皆して俺に言ってくれないんだよ!クソクソクソッ!!!

なんで…なんでだよ…俺達を殺す前に…教えて欲しかったよ…副会長」

 俺は泣きそうになりながらもあの頃を思い出す。
何度も何度も教えて欲しかった。相談して欲しかった。
頼って欲しかった。

『何でもないですよ』

 真っ青な顔をしながら言う副会長を思い出しては後悔する。

「今度こそ俺の嫁になってよ…副会長…」

 もうそんな顔をさせないから。幸せにするから。

「…だめだな。ここに来ると泣きやすくなる」

 俺は涙を拭い、結界を解いて扉へ向う。

「どこにいるんだよ、会長…」

 俺がボソッと会長を呼んだ時だった。

「こんにちは」

 その時、金色の髪を持つ子供に挨拶をされた。

 俺は突然挨拶されて驚き、心臓を抑えた。

(びっくりしたーーー!!)

「こ、こんにちは!…あれ?」

(何か見た事ある子供だな。どこだっけ…?)

 そのまま無表情で俺を通り過ぎる子供に俺は内心首を傾げる。

(どこだっけ…??)

「どうしました?」

「あ、お父さん!ねぇ、彼って誰?」

 俺はお父さん(笑)の裾を掴んで急かす。

「あぁ、彼は第一皇子のロイス殿下ですよ。彼も君と一緒で敬虔な子です」

(なら姿絵で見たのか?いやいや!俺平民だから姿絵とかほとんど見てないし!)

「誰なんだろう…?」

「?ロイス殿下ですよ?」

 俺の問に天然なお父さん(笑)は不思議そうに首を傾げた。

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