54 / 67
中等部
【ルクイア•カロアス】
しおりを挟む
「ここは通せません」
「なぜ?私はカロアス公爵様からお嬢様のお世話を直々に頼めれているのですよ」
私は護衛の人間を鋭く睨み、制服に仕込んでいたナイフに手をかざそうとした。
「誰か、誰か来いッ!!早くっ!!」
そんな緊迫した空気が流れる中、若い男の声がして全員がその声に引きづられる。
私もその声を聞き、何かあったのだと部屋の中に強制的に入る。
「皇子!何かありましたか!」
「皇子!」
「カロアス公子無事ですか!!」
「お嬢様!!」
結局全員が一斉に入る形になってしまった。
「ッカロアス公子…」
お嬢様の護衛が息を飲んだ。
私も血の気が引いていくのを感じる。
生まれて初めて感じる、失うかもしれないという恐怖だった。
「トバルト。トランクにある緑色の箱を今すぐに出せ」
そう言うと私はお嬢様に近づき若い男からお嬢様を奪う。
「トバルト、命令だ!早くしろ!!」
「ッわかりました!」
お姫様抱っこをし若い男と護衛から一定の距離を保てる場所にお嬢様を横たわらせ、脈を測る。
「チッ」
私は最悪の事態につい舌を打ってしまう。
「お、おい、医者を呼ぶから待ってろ!」
「そうだ!その方は公爵子息様だぞ!何かあったらどうする!!」
(何かあったら…?待ってろ…?)
「これが終わったら全員殺す。だから大人しくそこで待ってろ。」
「ひぃ!」
「悪魔の目だッ!」
私は苛立ちの余りつい魔力を乱してしまった。
(落ち着け。大丈夫。まだ大丈夫だ)
私はお嬢様の制服胸元を丁寧に、迅速に外し、模様を確認する。
(濃度が高い。これなら魔石に変換する方が早いだろう)
私は呆然と下を見つめている皇子を確認し、次に護衛達を見る。
護衛は二人。
(受け皿には少し足りないかもしれませんね)
「皇子には眠って貰いますか」
私は小声で詠唱を始める。
「我の元へ現れ、虚ろな世界へ彼の者を誘い給へ、彼の者に深淵を与え給へ【コンストレイントスリープ】」
「る…い…」
皇子が眠ったのを確認し、私は護衛二人に近づく。
護衛達は私を恐れ、剣を構えた。
「皇子っ!」
「この悪魔が皇子に何かしたんだっ!!」
護衛達の剣を持つ手が震えている。
私はそれを嘲笑い、護衛達へ手を向ける。
(普通の人間としてお嬢様と生きていたかったが、今回だけ。お許し下さい…お嬢様)
「選定されし器、恵み溢れし命の力、我、禁忌を犯す者、汝盟約を交わし給へ【ᛘᛆᚵᛁᛍ ᛍᚱᛦᛋᛐᛆᛚ】」
「うわああああ!!」
「ひぃっ!」
次の瞬間、護衛達の姿は消え、黒い魔石だけが残っていた。
「うぅ…」
私はぐにゃりと歪む視界に耐えられなく、床に膝をついて蹲る。
「おじょうさま」
目からポタポタ垂れる血を拭い、乱れていた呼吸を整えて魔石の元へ向う。
私は手の平サイズの魔石を一つずつ飲み込み、魔力を体内に循環させる。
「お待たせしました!」
走って来たからか呼吸が乱れているトバルトが緑の箱を持って現れた。
私は険しい顔でその箱を受け取り、お嬢様の元へ向う。
「…それはなんですか?」
「お前が知る必要はない」
「人体に入れて大丈夫なんですか…?」
緑の箱から丁寧に取り出したのは、金色の液体が入った小さい注射器だ。
私はその注射器をお嬢様に打つ。
「うっ…」
「カロアス公子!!」
注射の効果はすぐに現れ、お嬢様は呻いた。
「こう…い…さ、ん」
「今はゆっくりとお休み下さい、お嬢様。
深海の闇夜に意識よ、身を委ね、汝に安らぎを【睡眠】」
私はお嬢様に睡眠魔法をかける。
「ろ…い…す」
お嬢様は安心した顔をして眠った。
私はその顔を見て安堵し、お嬢様の洋服を元の状態に戻す。
「貴方はお嬢様とそこの男を各部屋に送って下さい」
「わかりました」
私はお嬢様と男をトバルトへ預け、そのまま部屋に残る。
「ッ」
私は何度も咳き込み、血を吐く。
まるで心臓が焼かれて爛れた様な痛みに、私は口元をハンカチで抑えてただ耐えるしかない。
私は姿を保っていられず、元の姿に戻ってしまう。
「ねぇ…さ、ん」
ーー譲りのーー髪が嫌いだ。姉さんを贄にした赤い瞳が嫌いだ。
『クイアは私の自慢の弟よ』
(今度こそ、貴女を守ります)
記憶の中で優しく笑う姉を思い出し、私は泣いた。
「なぜ?私はカロアス公爵様からお嬢様のお世話を直々に頼めれているのですよ」
私は護衛の人間を鋭く睨み、制服に仕込んでいたナイフに手をかざそうとした。
「誰か、誰か来いッ!!早くっ!!」
そんな緊迫した空気が流れる中、若い男の声がして全員がその声に引きづられる。
私もその声を聞き、何かあったのだと部屋の中に強制的に入る。
「皇子!何かありましたか!」
「皇子!」
「カロアス公子無事ですか!!」
「お嬢様!!」
結局全員が一斉に入る形になってしまった。
「ッカロアス公子…」
お嬢様の護衛が息を飲んだ。
私も血の気が引いていくのを感じる。
生まれて初めて感じる、失うかもしれないという恐怖だった。
「トバルト。トランクにある緑色の箱を今すぐに出せ」
そう言うと私はお嬢様に近づき若い男からお嬢様を奪う。
「トバルト、命令だ!早くしろ!!」
「ッわかりました!」
お姫様抱っこをし若い男と護衛から一定の距離を保てる場所にお嬢様を横たわらせ、脈を測る。
「チッ」
私は最悪の事態につい舌を打ってしまう。
「お、おい、医者を呼ぶから待ってろ!」
「そうだ!その方は公爵子息様だぞ!何かあったらどうする!!」
(何かあったら…?待ってろ…?)
「これが終わったら全員殺す。だから大人しくそこで待ってろ。」
「ひぃ!」
「悪魔の目だッ!」
私は苛立ちの余りつい魔力を乱してしまった。
(落ち着け。大丈夫。まだ大丈夫だ)
私はお嬢様の制服胸元を丁寧に、迅速に外し、模様を確認する。
(濃度が高い。これなら魔石に変換する方が早いだろう)
私は呆然と下を見つめている皇子を確認し、次に護衛達を見る。
護衛は二人。
(受け皿には少し足りないかもしれませんね)
「皇子には眠って貰いますか」
私は小声で詠唱を始める。
「我の元へ現れ、虚ろな世界へ彼の者を誘い給へ、彼の者に深淵を与え給へ【コンストレイントスリープ】」
「る…い…」
皇子が眠ったのを確認し、私は護衛二人に近づく。
護衛達は私を恐れ、剣を構えた。
「皇子っ!」
「この悪魔が皇子に何かしたんだっ!!」
護衛達の剣を持つ手が震えている。
私はそれを嘲笑い、護衛達へ手を向ける。
(普通の人間としてお嬢様と生きていたかったが、今回だけ。お許し下さい…お嬢様)
「選定されし器、恵み溢れし命の力、我、禁忌を犯す者、汝盟約を交わし給へ【ᛘᛆᚵᛁᛍ ᛍᚱᛦᛋᛐᛆᛚ】」
「うわああああ!!」
「ひぃっ!」
次の瞬間、護衛達の姿は消え、黒い魔石だけが残っていた。
「うぅ…」
私はぐにゃりと歪む視界に耐えられなく、床に膝をついて蹲る。
「おじょうさま」
目からポタポタ垂れる血を拭い、乱れていた呼吸を整えて魔石の元へ向う。
私は手の平サイズの魔石を一つずつ飲み込み、魔力を体内に循環させる。
「お待たせしました!」
走って来たからか呼吸が乱れているトバルトが緑の箱を持って現れた。
私は険しい顔でその箱を受け取り、お嬢様の元へ向う。
「…それはなんですか?」
「お前が知る必要はない」
「人体に入れて大丈夫なんですか…?」
緑の箱から丁寧に取り出したのは、金色の液体が入った小さい注射器だ。
私はその注射器をお嬢様に打つ。
「うっ…」
「カロアス公子!!」
注射の効果はすぐに現れ、お嬢様は呻いた。
「こう…い…さ、ん」
「今はゆっくりとお休み下さい、お嬢様。
深海の闇夜に意識よ、身を委ね、汝に安らぎを【睡眠】」
私はお嬢様に睡眠魔法をかける。
「ろ…い…す」
お嬢様は安心した顔をして眠った。
私はその顔を見て安堵し、お嬢様の洋服を元の状態に戻す。
「貴方はお嬢様とそこの男を各部屋に送って下さい」
「わかりました」
私はお嬢様と男をトバルトへ預け、そのまま部屋に残る。
「ッ」
私は何度も咳き込み、血を吐く。
まるで心臓が焼かれて爛れた様な痛みに、私は口元をハンカチで抑えてただ耐えるしかない。
私は姿を保っていられず、元の姿に戻ってしまう。
「ねぇ…さ、ん」
ーー譲りのーー髪が嫌いだ。姉さんを贄にした赤い瞳が嫌いだ。
『クイアは私の自慢の弟よ』
(今度こそ、貴女を守ります)
記憶の中で優しく笑う姉を思い出し、私は泣いた。
2
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる