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第二章
7.正体不明の敵
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シオウを連れて、来た道を戻った。なぜキチク三賢人に会うかもしれない危険を冒してまで戻らばならないのか?
そう自分に問う。もちろん、戻らなければならない。そうしなければ、私が後悔するから・・・。
出会いは必然。ならば身近に起る事象や耳に入る話にも理由がある。自分には関係がないからとは言っていられない。前回とは違う。今は自分の意思で歩いている。流されてたまるかと思う自分がいる。
後悔したのだ。日本に戻れたけど、あの時こうしていればと後悔した。だから今度は後悔しない生き方をする。
30年前に滅ぼされたというドワーフの村。正体不明の何かと戦い、亡くなっていた戦士達の遺骸はその地にちゃんと葬られたと聞いた。
現地に向かう前に一応、ギルドで詳しい話を聞いてきたのだ。ついでに、同じように滅ぼされた獣人の村というのも本当なのか確認した。どうやら真実らしい。その村の場所も聞いた。だいぶ遠いが諦める程でもない。
だって、前は全国を回ったのだ。これ程の事がなんだ!そうやって自分を鼓舞する。
ドワーフの村を確認し終えたら、今度はそちらを確認しに行くつもりだ。
この、もやもや、ザワザワとする何かを突き止める為に。
人族以外の集落が襲われ村人が消えるという事例は、実際に30年周期で起っているらしい。
ギルドでは他の気になる話も聞いた。
冒険者には他種族もいるらしい。人族と関わりたくないという者が多い中、少数ではあるがいるのだそうだ。
会ってみたい。話をしてみたい。そう思った。
シオウはとても元気で、私と二人だけの時は自分で道を飛ぶようについて歩いた。さすが猫科、とても身軽で木から木に飛び移ったり、遊びながらついて来る。
こんなに小さな身体のどこにそんなパワーが隠れているのだろうと思わせる。ギルドで震えだした時は驚いたけど、元気になって良かった。
「あのね、シオウ、今からドワーフの村に行くよ。ポルフのオサーンが生きてるのかもういない人なのか、大切なのはそこじゃない。村がどうして滅んだのか知りたいんだよ。だから自分の目で確かめに行く」
「にゃーん」
ポルフのオサーンと出会った川も通り過ぎ、もう少し上流に歩くと確かに朽ちかけた橋があった。
「うーん、しゃーないな。橋を補強しよう」
私はポケットから例の種を取り出した。
「蔓さんお願い、橋が落ちない様に通りやすくして」
一粒の種から前のような太い蔓ではなく雲の糸のような細い蔓が伸び、朽ちて落ちそうな橋が色を塗り替える様に緑色に変わった。
そうして、シオウと二人で駆けって橋を抜ける。
向こう側に辿り着いて振り返ると全部が緑色だった橋は手前まで蔓が収縮して緑色が足元だけになっていた。
「蔓さんいい仕事するね。ビクともしなかった。サンキュー」
蔓さんは種に戻り、私のポケットに勝手に飛んで入った。うむ。進化しているな。
私の魔力をご褒美に分け与えると、とても喜び種がポケットの中で跳ねている。元気な種だ。
反対側に渡るとそこからジャングルだった。30年くらい人が入っていないのだから当然だろう。
だからポルフのオサーンがあの朽ちた橋を渡って川まで遊びに来たり、村から出入りしていると考えるのには無理がある。
もしかしたらなんて期待は持たない方が身の為だぞ。そう自分に言い聞かせた。
「除け、道を作れ、私を案内せよ」
偉そうな言葉で『緑の巫女姫』の魔力を開放した。
寄せていた雑草や樹木が割れて行き、細い小路がドワーフの村まで造られる。
私はズルズルと鼻をすすり、目を擦った。
「やだな、目から汗が・・・」
「にゃーん」
シオウが肩に乗り、私の顔に自分の顔を擦り付ける。
彼は私を慰めているのだ。
「うん、ありがとね」
そうして静かに二人でその地を訪れた。
ドワーフの村だった場所は、まるで前に訪れたエルフの村の様に枯れ果てていた。
その周辺だけぽっかりと干からびて乾いた土地がある。
「ポルフおじさん、釣り竿ありがとう。あれ、すごいイイ竿だったよ。言葉だけのお礼じゃあすまないから直接おれいをしにきたよ。受け取ってくれるかな・・・。でも、その前にこの地の記憶を少し見せてね」
私はしゃがんで地面に手を付けた。目を閉じて言葉にする。
「視せろ」
掌に気が集中する。するとまるでこの地全体が地鳴りの様な叫びをあげる音が何処からともなく鳴り響いた。
過去の映像が現れ、それが私の目の前で繰り広げられて行く・・・。
黒い騎馬に跨る黒い鎧の騎士達は、逃げ惑うドワーフを捕まえては魔法陣の中に放り込んでいた。
させまいと戦うドワーフの戦士達の戦いも虚しく一人、また一人と斃される。
最後まで戦った戦士も遂には切り捨てられ、地に倒れて骸となる。
「ハッ、ハッ、は・・・」
そこまでが限界だった。汗だくで地面に両手をついた。
何て恐ろしい、悪魔の様な所業だ。
「にゃーん、にゃおーん」
「大丈夫・・・大丈夫だよ。ちょっと休んで、そしたら・・・」
ちょっと体力も気力も消耗したので、地べたに座り込み、街で買っておいたほの甘い菓子をリュックから取り出した。
干し飯を揚げた物と炒った豆等を入れ、水あめを混ぜて薄く広げて固めた物を食べやすく適当に小さく砕いた菓子だ。
ボリボリと口に入れる。シオウも一緒にボリボリ食べた。お茶も飲む。シオウには水筒の蓋にお茶を入れて飲ませた。ほんのり甘い素朴な菓子だ。
「ああ、少しは気持ちが落ち着いたよ。もう大丈夫。ちゃんと出来る」
「にゃーん」
前に浄化でこの国を周った時、魔物とも戦ったし、自分でも多くの魔物を殺した。
最初はゲーゲー吐いたけど、七年経つ頃には吐かなくなった。だからと言って過去の映像でも人が殺されるのを見ても平気ではない。とても悲しかった。
最後まで戦って死んだのはポルフおじさんだったね・・・。
私の目標の一つに、この原因究明と、ポルフおじさんの無念を晴らすというのが新しく加わった。
「この地に、静かな眠りと浄化を・・・」
私の祈りが届きますように。
『緑の巫女姫』の浄化の力は∞
その後、三賢人が来た時には、もう、彼女の姿は無かった。
「スゲー逃げ足の速さだな」
「そうですね、この朽ちた橋の向こうにいっても、巫女姫はいらっしゃらないでしょう」
「・・・」
「浄化の力も大盤振る舞いじゃねえか」
「前は嫌々なさっていましたが、今は自主的に浄化の旅をされていらっしゃるようですね」
「・・・」
そう自分に問う。もちろん、戻らなければならない。そうしなければ、私が後悔するから・・・。
出会いは必然。ならば身近に起る事象や耳に入る話にも理由がある。自分には関係がないからとは言っていられない。前回とは違う。今は自分の意思で歩いている。流されてたまるかと思う自分がいる。
後悔したのだ。日本に戻れたけど、あの時こうしていればと後悔した。だから今度は後悔しない生き方をする。
30年前に滅ぼされたというドワーフの村。正体不明の何かと戦い、亡くなっていた戦士達の遺骸はその地にちゃんと葬られたと聞いた。
現地に向かう前に一応、ギルドで詳しい話を聞いてきたのだ。ついでに、同じように滅ぼされた獣人の村というのも本当なのか確認した。どうやら真実らしい。その村の場所も聞いた。だいぶ遠いが諦める程でもない。
だって、前は全国を回ったのだ。これ程の事がなんだ!そうやって自分を鼓舞する。
ドワーフの村を確認し終えたら、今度はそちらを確認しに行くつもりだ。
この、もやもや、ザワザワとする何かを突き止める為に。
人族以外の集落が襲われ村人が消えるという事例は、実際に30年周期で起っているらしい。
ギルドでは他の気になる話も聞いた。
冒険者には他種族もいるらしい。人族と関わりたくないという者が多い中、少数ではあるがいるのだそうだ。
会ってみたい。話をしてみたい。そう思った。
シオウはとても元気で、私と二人だけの時は自分で道を飛ぶようについて歩いた。さすが猫科、とても身軽で木から木に飛び移ったり、遊びながらついて来る。
こんなに小さな身体のどこにそんなパワーが隠れているのだろうと思わせる。ギルドで震えだした時は驚いたけど、元気になって良かった。
「あのね、シオウ、今からドワーフの村に行くよ。ポルフのオサーンが生きてるのかもういない人なのか、大切なのはそこじゃない。村がどうして滅んだのか知りたいんだよ。だから自分の目で確かめに行く」
「にゃーん」
ポルフのオサーンと出会った川も通り過ぎ、もう少し上流に歩くと確かに朽ちかけた橋があった。
「うーん、しゃーないな。橋を補強しよう」
私はポケットから例の種を取り出した。
「蔓さんお願い、橋が落ちない様に通りやすくして」
一粒の種から前のような太い蔓ではなく雲の糸のような細い蔓が伸び、朽ちて落ちそうな橋が色を塗り替える様に緑色に変わった。
そうして、シオウと二人で駆けって橋を抜ける。
向こう側に辿り着いて振り返ると全部が緑色だった橋は手前まで蔓が収縮して緑色が足元だけになっていた。
「蔓さんいい仕事するね。ビクともしなかった。サンキュー」
蔓さんは種に戻り、私のポケットに勝手に飛んで入った。うむ。進化しているな。
私の魔力をご褒美に分け与えると、とても喜び種がポケットの中で跳ねている。元気な種だ。
反対側に渡るとそこからジャングルだった。30年くらい人が入っていないのだから当然だろう。
だからポルフのオサーンがあの朽ちた橋を渡って川まで遊びに来たり、村から出入りしていると考えるのには無理がある。
もしかしたらなんて期待は持たない方が身の為だぞ。そう自分に言い聞かせた。
「除け、道を作れ、私を案内せよ」
偉そうな言葉で『緑の巫女姫』の魔力を開放した。
寄せていた雑草や樹木が割れて行き、細い小路がドワーフの村まで造られる。
私はズルズルと鼻をすすり、目を擦った。
「やだな、目から汗が・・・」
「にゃーん」
シオウが肩に乗り、私の顔に自分の顔を擦り付ける。
彼は私を慰めているのだ。
「うん、ありがとね」
そうして静かに二人でその地を訪れた。
ドワーフの村だった場所は、まるで前に訪れたエルフの村の様に枯れ果てていた。
その周辺だけぽっかりと干からびて乾いた土地がある。
「ポルフおじさん、釣り竿ありがとう。あれ、すごいイイ竿だったよ。言葉だけのお礼じゃあすまないから直接おれいをしにきたよ。受け取ってくれるかな・・・。でも、その前にこの地の記憶を少し見せてね」
私はしゃがんで地面に手を付けた。目を閉じて言葉にする。
「視せろ」
掌に気が集中する。するとまるでこの地全体が地鳴りの様な叫びをあげる音が何処からともなく鳴り響いた。
過去の映像が現れ、それが私の目の前で繰り広げられて行く・・・。
黒い騎馬に跨る黒い鎧の騎士達は、逃げ惑うドワーフを捕まえては魔法陣の中に放り込んでいた。
させまいと戦うドワーフの戦士達の戦いも虚しく一人、また一人と斃される。
最後まで戦った戦士も遂には切り捨てられ、地に倒れて骸となる。
「ハッ、ハッ、は・・・」
そこまでが限界だった。汗だくで地面に両手をついた。
何て恐ろしい、悪魔の様な所業だ。
「にゃーん、にゃおーん」
「大丈夫・・・大丈夫だよ。ちょっと休んで、そしたら・・・」
ちょっと体力も気力も消耗したので、地べたに座り込み、街で買っておいたほの甘い菓子をリュックから取り出した。
干し飯を揚げた物と炒った豆等を入れ、水あめを混ぜて薄く広げて固めた物を食べやすく適当に小さく砕いた菓子だ。
ボリボリと口に入れる。シオウも一緒にボリボリ食べた。お茶も飲む。シオウには水筒の蓋にお茶を入れて飲ませた。ほんのり甘い素朴な菓子だ。
「ああ、少しは気持ちが落ち着いたよ。もう大丈夫。ちゃんと出来る」
「にゃーん」
前に浄化でこの国を周った時、魔物とも戦ったし、自分でも多くの魔物を殺した。
最初はゲーゲー吐いたけど、七年経つ頃には吐かなくなった。だからと言って過去の映像でも人が殺されるのを見ても平気ではない。とても悲しかった。
最後まで戦って死んだのはポルフおじさんだったね・・・。
私の目標の一つに、この原因究明と、ポルフおじさんの無念を晴らすというのが新しく加わった。
「この地に、静かな眠りと浄化を・・・」
私の祈りが届きますように。
『緑の巫女姫』の浄化の力は∞
その後、三賢人が来た時には、もう、彼女の姿は無かった。
「スゲー逃げ足の速さだな」
「そうですね、この朽ちた橋の向こうにいっても、巫女姫はいらっしゃらないでしょう」
「・・・」
「浄化の力も大盤振る舞いじゃねえか」
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