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僕たちは、そういう関係じゃない
僕たちは、そういう関係じゃない
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三度目に会ったのは、僕から誘った。
昼間の彼を見たくて、北千住に行こうと声をかけた。
これまで僕たちは、いつも夜だった。風呂に入り、セックスして、深夜の街を歩く。
体は知っているのに、昼の彼はまだ知らないままだった。
「北千住に食べたいタイ料理の店があるんだけど、一緒にどう?」
「僕、あまり買い物とか好きじゃないんだ」
「ご飯食べて、ちょっとだけ散歩。買い物はしない」
十分ほど間を置いて、彼から「いいよ」と返ってきた。
その日も、やっぱり雨だった。
細くて、静かで、存在感のない春の終わりの雨。
僕は北千住の駅に数分遅れて着いた。
彼は透明な傘をさし、素朴な服装で、眼鏡のレンズは湿気で白く曇っていた。
靴のまわりに、ほんの小さな水の輪。
店に向かう途中、豆乳を買いに立ち寄った。
信号待ちの間、僕は彼の手を取った。
彼は引かなかったけれど、手のひらは冷たくて、指は動かなかった。
まるで冷房のきいた部屋から出たばかりのような、感情のない手だった。
「手、つなぐの嫌い?」
「嫌いじゃないよ、ただ僕たちは、そういう関係じゃない。」
「どういう関係?」
彼は何も答えず、「この豆乳、美味しいね」とだけ言った。
店に着くと、彼はチャーハンと空心菜、レモンティーを注文し、僕はトムヤムラーメンとシーフードサラダを頼んだ。
彼はゆっくり食べながら、米の中の香草を一つずつ避けていた。
「やっぱりタイ料理、あまり食べないでしょ」
「辛いのが苦手。でも、ここのは美味しいね」
食後、彼は「帰ろう」とも言わなかったし、僕も「家、行く?」とも聞かなかった。
そのまま自然な流れで、近くのショッピングモールを歩いた。
その日はセールで、僕は服や香水やスキンケア用品をたくさん買った。
荷物は増え、歩くのが重たくなったけれど、彼は文句一つ言わず、僕の試着にも付き合ってくれた。
エスカレーターで振り返ると、彼は僕の一番重い袋を提げて、少し乱れた髪のまま、無表情で立っていた。
気づけば、モールは閉店の時間になっていた。
「家に行ってもいい?」と僕。
「うん」と彼は頷いた。
帰り道、言葉は少なかった。
互いに何も説明せず、ただ傘を差して、並んで歩いた。
堂々とした言葉の代わりに、彼はドンキの前で立ち止まり、「うち、飲み物ない」とだけ言った。
彼は水を買い、僕は酒を選んだ。
部屋に戻ると、彼は着替え、僕はバスルームに向かった。
洗面台には、新しい歯ブラシが一本、真っ直ぐに置かれていた。
水跡一つない鏡、几帳面な洗面所。
シャワーから出ると、彼はすでに上半身裸でベッドに座っていた。
胸筋ははっきりと硬く、下半身には半勃起の陰茎。
彼は何も聞かず、僕も何も言わず、そのまま身を預けた。
押し倒され、何も言葉を交わさずに挿入された。
無言のまま、目だけが交差していた。
僕が「撮ろう」と言うと、彼は頷き、スマホを取り上げた。
開かれた僕の尻の穴にフォーカスを当てながら、抽送を続ける。
彼の動きはいつも通り、ぶれずに一定で、深く、正確だった。
締めつけが強くなると、彼は少し力を加え、耳元で囁いた。
「今の君、僕が射精するのを待ってるよね」
僕は返事をせず、静かに締めた。
彼は果てた後、抜き出し、僕の尻から溢れ出す白濁をスマホで撮った。
「あとで見返す用に」
もう十一時近かった。
僕が服を着ると、彼は引き止めなかった。
「帰るね」
「気をつけて」
玄関を出る時、振り返ると彼はまだベッドに座り、スマホの画面を見ていた。
たぶん、さっき撮った映像だろう。
外は雨が止み、湿気だけが空気に残っていた。
駅まで歩く途中、僕もスマホを開き、動画を見た。
彼が僕を突いている姿も、僕が彼を受け入れている姿も、何も変わらない。
ただ、毎回、清潔に、感情もなく、体を使い終わったあと、自分で帰るだけ。
僕たちは、そういう関係じゃない。
でも、確かに、なんだかの関係はあるんだ。
昼間の彼を見たくて、北千住に行こうと声をかけた。
これまで僕たちは、いつも夜だった。風呂に入り、セックスして、深夜の街を歩く。
体は知っているのに、昼の彼はまだ知らないままだった。
「北千住に食べたいタイ料理の店があるんだけど、一緒にどう?」
「僕、あまり買い物とか好きじゃないんだ」
「ご飯食べて、ちょっとだけ散歩。買い物はしない」
十分ほど間を置いて、彼から「いいよ」と返ってきた。
その日も、やっぱり雨だった。
細くて、静かで、存在感のない春の終わりの雨。
僕は北千住の駅に数分遅れて着いた。
彼は透明な傘をさし、素朴な服装で、眼鏡のレンズは湿気で白く曇っていた。
靴のまわりに、ほんの小さな水の輪。
店に向かう途中、豆乳を買いに立ち寄った。
信号待ちの間、僕は彼の手を取った。
彼は引かなかったけれど、手のひらは冷たくて、指は動かなかった。
まるで冷房のきいた部屋から出たばかりのような、感情のない手だった。
「手、つなぐの嫌い?」
「嫌いじゃないよ、ただ僕たちは、そういう関係じゃない。」
「どういう関係?」
彼は何も答えず、「この豆乳、美味しいね」とだけ言った。
店に着くと、彼はチャーハンと空心菜、レモンティーを注文し、僕はトムヤムラーメンとシーフードサラダを頼んだ。
彼はゆっくり食べながら、米の中の香草を一つずつ避けていた。
「やっぱりタイ料理、あまり食べないでしょ」
「辛いのが苦手。でも、ここのは美味しいね」
食後、彼は「帰ろう」とも言わなかったし、僕も「家、行く?」とも聞かなかった。
そのまま自然な流れで、近くのショッピングモールを歩いた。
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荷物は増え、歩くのが重たくなったけれど、彼は文句一つ言わず、僕の試着にも付き合ってくれた。
エスカレーターで振り返ると、彼は僕の一番重い袋を提げて、少し乱れた髪のまま、無表情で立っていた。
気づけば、モールは閉店の時間になっていた。
「家に行ってもいい?」と僕。
「うん」と彼は頷いた。
帰り道、言葉は少なかった。
互いに何も説明せず、ただ傘を差して、並んで歩いた。
堂々とした言葉の代わりに、彼はドンキの前で立ち止まり、「うち、飲み物ない」とだけ言った。
彼は水を買い、僕は酒を選んだ。
部屋に戻ると、彼は着替え、僕はバスルームに向かった。
洗面台には、新しい歯ブラシが一本、真っ直ぐに置かれていた。
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彼は何も聞かず、僕も何も言わず、そのまま身を預けた。
押し倒され、何も言葉を交わさずに挿入された。
無言のまま、目だけが交差していた。
僕が「撮ろう」と言うと、彼は頷き、スマホを取り上げた。
開かれた僕の尻の穴にフォーカスを当てながら、抽送を続ける。
彼の動きはいつも通り、ぶれずに一定で、深く、正確だった。
締めつけが強くなると、彼は少し力を加え、耳元で囁いた。
「今の君、僕が射精するのを待ってるよね」
僕は返事をせず、静かに締めた。
彼は果てた後、抜き出し、僕の尻から溢れ出す白濁をスマホで撮った。
「あとで見返す用に」
もう十一時近かった。
僕が服を着ると、彼は引き止めなかった。
「帰るね」
「気をつけて」
玄関を出る時、振り返ると彼はまだベッドに座り、スマホの画面を見ていた。
たぶん、さっき撮った映像だろう。
外は雨が止み、湿気だけが空気に残っていた。
駅まで歩く途中、僕もスマホを開き、動画を見た。
彼が僕を突いている姿も、僕が彼を受け入れている姿も、何も変わらない。
ただ、毎回、清潔に、感情もなく、体を使い終わったあと、自分で帰るだけ。
僕たちは、そういう関係じゃない。
でも、確かに、なんだかの関係はあるんだ。
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