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第三章 異世界転移

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「おい、貴様ら!!」

 そこで、かすれ気味の怒鳴り声が僕たちの会話を遮った。
 兵士たちを見まわっている老騎士レーモンだ。

「さっきからうるさいぞ!! いい加減にせんか」

「おおっと」
 エリックが肩をすくめた。
「こりゃ、おしゃべりが過ぎたようだ。ま、戦いが終わったらまたいろいろ教えてやるよ」

「どうもありがとう」

「いいってことよ」
 エリックはウインクして前を向いた。

 ――にしても、この人、本当に単なる兵士なのか?

 エリックの目に宿る鋭い光を見て僕はそう思った。
 少なくとも、何か色々事情を抱えてそうな人ではある。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 それからしばらくの間、アリス護衛軍は何事もなく前へ進んだ。
 エリックの言う通り戦闘は当面なさそうだし、道のりはきわめて平和だった。

 ただ一つ、不思議なことがあった。 
 それは、歩いても歩いても、あまり疲れを感じないという点だ。

 現実世界では、なかばひきこもりのような生活をしていたのに、いったいどういう訳だろう。
 こっちの世界にきて、体力もそれなりに上昇したということなのだろうか。

 では、肝心の魔力の方は――?
 セリカはさっき、オンラインRPGの世界の同等の能力を僕は持っていると言っていたけど……。
 ぜひ試してみたいが、そもそも魔法なんてどうやって使えばいいのかわからないし。

 と、そんなことを取り留めもなく考えていると――

「前方に騎兵が一騎! こちらに向かってきます」
 誰かが突然叫んだ。

 アリスを護衛するロードラント軍全体に緊張が走る。


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