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第七章 死闘

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 残っていた重症者数人の治癒を急いで終えた。
 アリスからもらった護身用のショートソードを腰に差し、いよいよ出発だ。

「ユウトさん、しっかりつかまって下さい。でないと振り落とされてしまいますよ」

 差し伸べられたリナの手につかまり、馬上に引き上げてもらう。
 馬には二人分のくらあぶみが付いている。

 リナのうしろに乗り、鞍にまたがり鐙に足をかけると、ぐらついていた体勢がかなり安定した。
 乗馬は初めてだけれど、これならいけそうだ。

「さあ、私の腰に手をまわしてください」

 ちょっとドキドキしながら、リナの腰に手を回しぎゅっと抱きしめる。
 しなやかな感触。
 そして、なんだかとても良い香り。

 ふと、脳裏に過去の記憶がよみがえった。
 この香りは昔どこかでかいだことがある。

 そうだ、思い出した!
 まだ幼いころ、現実世界の理奈と二人で寄り添い遊んだ時の香りだ。

 思えばあの頃は毎日が楽しかった。
 悩みなんてなにもなかった、永遠に戻ってこない幸せな時間。
 それがいったいどうしてこんな事に……。

 いやいや!
 と、頭をぶるぶる振る。

 なに感傷に浸っているんだ。
 我ながらきもい! きもすぎる!
 今、この状況で、そんな昔のこと思い出すなんてどうかしている。

「ユウトさんごめんなさい。ちょっと苦しい……」

「あ、す、すみません」

 慌てて手を緩める。 
 いつの間にか、リナの腰を強く抱きしめていたのだ。

 どうしたんだ?
 一度は死ぬ覚悟までしたのに、やっぱり本能的に恐怖を感じているのか?

 いや、そんなことはない!
 むしろ自分はどうなったっていい。
 ただリナを、そしてアリスを救えればそれで充分なんだ。



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