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第十三章 恐怖の森

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 アンデッドはどの個体も皮膚はただれ、肉は腐り、骨がむき出しの見るも無残な姿を晒け出していた。
 ただ、やけに立派な剣や鎧を身に付けているのが、ミスマッチというか、やたら奇妙に見えた。

「こ、この人たち……」
 リナは震える声で言った。
「もしかして、元はロードラントの竜騎士……」

 え!? 
 と驚き、アンデットたちを見直す。

 確かにリナの言う通りだった。
 アンデッドが装備している武器防具は、見覚えのあるロードラント軍のものばかりだ。

「竜騎士ども、感謝するがよい」
 ローブの魔女が笑う。
「地獄に落ちた仲間と再会できて、さぞや嬉しかろう」

 この魔女――
 壊滅したロードランド軍の第一、二軍団の竜騎士の死体を回収し、アンデッドとして利用するため、あらかじめこの森の中に仕込んでおいたのか。

 かつての味方同士を戦わせる、まさに悪魔の所業。
 一刻も早くアリスをデュロワ城に、と焦る竜騎士団は、よりによって自らその罠に飛び込んでしまったのだ。

「地下の国からよみがえりし者どもよ! 彼奴きゃつらを皆殺しにしろ!」

 魔女が叫ぶと、一呼吸おいて、アンデッドたちは「グオオオオオオッ」と恐ろしい唸り声を発した。
 そして、一斉にうじゃうじゃ動き出し、竜騎士たちに襲いかかってきた。

 どうやら彼らは、魔女の命令を聞くだけの知能は残っているらしい。
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